警視庁向島警察署の放火事件

放火事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

◇事件◇

東京都墨田区に住む会社員Aさん(35歳)は、3年前に亡父から相続した一軒家(築60年)に妻と二人で暮らしていました。
築年数が古いことから建替えを考えていたAさんは、自分の家に放火して、火災保険金を騙し取ることを思いつき、アパートを借りて、しばらくの間は、そのアパートで生活することにしました。
そして引っ越しを終えて荷物を運び出した後に、和室の畳に灯油をまき、火のついたタバコをその近くに放置して、しばらくすると灯油に引火して火災が発生するように仕掛けをして家を出ました。
しかし、火災が発生した直後に、近所の住民が火災に気付いて消火したので、畳一枚を焼損するにとどまったのです。
(フィクションです)

◇放火の罪◇

放火及び失火の罪は、刑法第109条から第118条に規定されていますが、本日は、主に
①現住建造物等放火罪~刑法第108条~
②非現住建造物等放火罪~刑法第109条~
について解説します。

~刑法第108条(現住建造物等放火罪)~
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物(略)を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

~刑法第109条1項(他人所有の非現住建造物等放火罪)~
放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物(略)を焼損した者は、2年以上の有期懲役に処する。

~刑法第109条2項(自己所有の非現住建造物等放火罪)~
前項の物が自己の所有に係るときは、6月以上7年以下の懲役に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

◇現住建造物と非現住建造物◇

放火の罪における「現住」とは、「現に人が家屋に使用している」若しくは「現に人がいる」の何れかです。
今回の事件で、Aさんは、すでに引っ越しを終えて家を出た後に放火しているので、非現住建造物に当たると考えられます。

◇自己所有と他人所有◇

今回の事件でAさんは、3年前に亡父から相続した自宅に放火していますので、一見すると刑法第109条2項の適用を受けそうです。
しかし刑法第115条に「差押え等に係る自己の物にかかる特例」が定められています。
この条文によりますと、保険に付した物件に放火した場合には、他人の物を焼損した時と同じ、刑法第109条1項の適用を受ける旨が明記されています。
つまりAさんの行為に対しては、他人所有の非現住建造物等放火罪が適用されるのです。

◇放火の既遂?未遂?◇

Aさんは、家を出た後に発火するように仕掛けをして家を出ており、その後実際に畳に引火し火災が発生しています。
しかし家屋その物には延焼せずに、畳一枚を焼損するに止まったというのですから、これが「焼損」といえるかが問題となります。
放火の既遂時期については、火が媒介物を離れ目的物に燃え移り、目的物が独立して燃焼を継続し得る状態に達すれば焼損(既遂)になるとしています。
ところがAさんの事件では畳しか燃えていません。
取り外し自由な雨戸、板戸、畳等は建造物の一部ではないとされているので、建造物を焼損する目的でこれらの物を焼損したにとどまったときは、建造物そのものを焼損したことにはならないと解せれます。
つまりAさん行為は、他人所有の非現住建造物等放火未遂罪が適用されるのではないでしょうか。

◇未遂罪の刑の減軽◇

刑法第43条で、未遂罪の減軽等が規定されています。。

~刑法第43条~
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

前段は障害未遂、後段は中止未遂と呼ばれます。
また、障害未遂は任意的減軽(裁判官の裁量による減軽)であるのに対し、中止未遂は必要的減軽(裁判官の裁量の余地のない減軽)である点が異なります。
今回の事件は障害未遂となるので、他人所有の非現住建造物等放火罪で起訴されて有罪が確定した場合、その法定刑「2年以下の有期懲役」が減軽されるかどうかは、裁判官の裁量によって判断されます。

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