あおり運転と威力業務妨害罪②

あおり運転と威力業務妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

~事件~

1週間前に、会社員のAさんは東京墨田区内で車を運転中に、前方を走行していた運送会社の軽トラックが低速で走行することに腹が立ち、この軽トラックを追い越して軽トラックの前に車を停止させました。
そして軽トラックの運転手に文句を言ってやろうと車を降りて、運転手に対して「トロトロ運転するな!邪魔じゃ!」と怒鳴ったのです。
その後Aさんは車に乗り込んでその場を走り去りましたが、今朝、警視庁向島警察署の警察官から電話があり「急ブレーキをかけたことで、軽トラックを急停止して荷崩れを起こし、配送しようとしていた荷物が壊れた。」と言われ、出頭命令を受けました。
Aさんは、軽トラックの運転手を注意するために車を止めただけであって、自分の行為が刑事罰の対象になることに納得ができず、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。(フィクションです)

◇威力業務妨害罪~刑法第234条~◇

威力を用いて人の業務を妨害すれば、威力業務妨害罪が適用されます。
威力業務妨害罪は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の罰則が定められています。
威力とは
威力業務妨害罪でいう「威力」とは、人の意思を制圧する勢力を意味し、暴行や脅迫がその典型です。
威力に該当するかどうかは、それが客観的にみて人の自由意思を制圧するに足るものであるかどうかによって判断されますが、現実に、被害者が自由意思を制圧されたことまでは必要とされていません。
業務とは
また威力業務妨害罪で保護されている「業務」とは、営利目的、経済的なものである必要はなく、社会生活上の地位に基づき継続して行う事務の事です。
故意
威力業務妨害罪は故意犯ですので、法律的には、成立に業務を妨害する故意が必要だとされています。
どのような業務を妨害するのかまでの具体的な認識がないにしても、自分の行為(威力)が何らかの業務を妨害している程度は認識していなければ、威力業務妨害罪の成立は難しいでしょう。
ただこれまでに威力業務妨害罪の成立を認めた事件を検討すると、威力とされる暴行や脅迫の行為に対する認識(故意)が認められれば、業務妨害罪が成立している事件もありますので、威力業務妨害罪の故意について疑問のある方は、刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。

◇Aさんの事件を検討◇

まずAさんが、軽トラックの前に割り込んで急ブレーキをかけ、軽トラックを急停止させた行為については、あおり運転として暴行罪が適用される可能性が非常に強いでしょう。
特に、最近はあおり運転に対する警察等の捜査当局は厳しい対処をしているため、例え、軽トラックの運転手を注意するためにした行為だとAさんが主張したとしても、その行為によって軽トラックの運転手や周囲の交通に危険が及んでいた場合は、あおり運転とみなされるでしょう。
そして、このAさんのあおり運転(暴行行為)によって、軽トラックが急停止し、配送中の荷物が壊れています。
「Aさんのあおり運転(暴行)」⇒「軽トラックが急ブレーキ」⇒「荷物が損壊」⇒「業務が妨害された」と、この構図を見ればそれぞれの結果に因果関係が認められるため、Aさんの行為に威力業務妨害罪が適用される可能性は十分に考えられるでしょう。
しかし、Aさんに、軽トラックの運転手の業務を妨害する意思があったのかと問われれば、疑問が残ります。
Aさんが、軽トラックを停止させて長時間その場にとどめおいた場合だと、自らの行為が業務を妨害したと認めざるを得ませんが、今回の事件で、急停止させたことによって荷物が破損することまで認識するのは難しいのではないでしょうか。
もしAさんが、この結果を予測できなかったと認められた場合は、威力業務妨害罪の適用は難しいと考えられます。

ちなみに、タクシーの前に急に割り込むあおり運転によって、タクシーに乗車していた高齢の女性が軽傷を負った事件では、あおり運転の運転手が威力業務妨害罪で警察に逮捕されています。
あおり運転に対して、威力業務妨害罪が適用されるのは極めて稀なケースではありますが、警察等の捜査当局が、少しでも厳しい罰則を科せることができる法律を適用してあおり運転の取締りを行っている現状を考慮すれば、今後も、あおり運転にあらゆる法律が適用される可能性があります。
東京都墨田区の刑事事件でお困りの方、あおり運転による威力業務妨害罪の適用に疑問がある方は、刑事事件に強いと評判の、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部にご相談ください。
初回法律相談:無料

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