児童虐待・保護責任者遺棄事件

・病院で子供が栄養失調と診断され、育児放棄を疑われて通報されてしまった…

・13歳の娘に母親が買春をさせたとして、警視庁調布警察署に逮捕・勾留された…

 

1 児童虐待・育児放棄

児童虐待や育児放棄をした場合、①児童福祉法違反、②児童虐待防止法違反、③保護責任者遺棄罪、として警察に捜査・逮捕される可能性があります。

児童虐待・育児放棄は、児童虐待防止法により、以下の4つに分類し、定義されています。

身体的虐待―児童の身体に外傷を生じ、または生じる恐れのある暴行を加えること

性的虐待―児童にわいせつな行為をすること、又は児童をしてわいせつな行為をさせること

ネグレクト―児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による虐待行為と同様の行為の放置、その他の保護者としての看護を著しく怠ること

心理的虐待―児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと

 

2 児童福祉法違反、児童虐待防止法違反、保護責任者遺棄罪の刑罰・法定刑

罪名 刑罰・法定刑
児童に淫行をさせる罪
(児童福祉法違反)
10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、又はこれらの併科
監護者わいせつ罪
(刑法179条1項)
6月以上10年以下の懲役
監護者性交等罪
(刑法179条2項)
5年以上の有期懲役
接触禁止命令違反
(児童虐待防止法違反)
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
保護責任者遺棄罪
(刑法218条)
3月以上5年以下の懲役
保護責任者遺棄致傷罪
(刑法219条)
3月以上15年以下の懲役
保護責任者遺棄致死罪 3年以上の有期懲役

 

3 児童福祉法違反

児童福祉法は、「児童に淫行をさせる行為」(児童福祉法34条1項6号)を禁止し、違反した場合の罰則(10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、又は懲役と罰金の併科)を定めています(児童福祉法60条1項)。

また、児童に淫行をさせる恐れのある者に、それを知りながら児童を引き渡した場合には、3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は懲役と罰金の双方が科せられます。

ここで「児童」とは、18歳に満たない者(=18歳以上の者は対象ではありません)をいいます(児童福祉法4条1項)。

児童に事実上の影響力を及ぼして淫行をするように働きかけた結果、児童が淫行をするに至った場合を処罰の対象としているため、犯人は実親等の保護者に限られるわけではありません。

もっとも、実親等の保護者は、子供に与える影響力が強いのが通常と考えられるため、子供に淫行を行わせた場合には、児童福祉法によって処罰される可能性が高いといえます。

 

4 監護者わいせつ罪,監護者性交等罪

18歳未満の者(性別に拠りません)を「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」わいせつな行為(例:胸を触る,陰部を触る等)を行った場合,もしくは性交等(性交のみならず肛門性交や口腔性交も含む)を行った場合には,監護者わいせつ罪(6月以上10年以下の懲役)ないし監護者性交等(5年以上の有期懲役)として処罰されることになります。

これは平成29年の刑法改正によって新たに新設された条文です。18歳未満の者は,一般的に未熟であって生活全般にわたって保護,監督してくれる者に物質的にも精神的にも依存していることが多く,その依存を逆手にとってわいせつ行為や性交等を行うことは強制わいせつや強制性交等と同様に性的自由を害するものである,との考えから新設されたものです。このような条文成立の経緯があるので,たとえ被害者がわいせつ行為や性交等に同意していたとしても犯罪は成立することになります。

監護者わいせつや監護者性交等といえるかどうかでは「監護する者」であるか,「影響力があることに乗じて」いるのかが問題となります。

「監護する者」にあたるかどうかは,親権者のみならず,現に18歳未満の者を保護,監督しているかどうかを実質的に判断します。例えば衣食住のお世話をしているかどうか,同居しているか,しつけをしているか,役所や学校などの手続きを行っているかどうか等といった視点から判断することになります。学校や塾の先生といった関係のみでは「監護する者」にあたりにくくなりますが,連れ子であるとか親戚の子供の世話をしている等と言った場合には「監護する者」に当たる可能性があります。

「影響力があることに乗じて」いるのかどうかも,わいせつ行為や性交するに至った18歳未満の者の判断過程や普段の監督状況等から判断していくことになります。

 

5 児童虐待防止法違反

虐待した親権者などが、施設等の入所措置が取られている児童に対して、つきまとい等の接触を禁止する命令が出されている場合、これに違反してつきまとい等を行うと、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます(児童虐待防止法12条の4第1項、17条)。

児童虐待防止法では、児童の虐待を禁じるとともに、児童虐待を早期に発見するための対応施策や通告制度、立ち入り調査、虐待を受けた児童の保護及び自立支援などについて規定を設けていますが、禁止行為の罰則については、上記の刑罰規定が設けられているのみです。

 

6 保護責任者遺棄罪(刑法218条)

老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役が科されます。

保護責任者遺棄罪とは、親等の保護責任者が被保護者である子供に対する遺棄及び生存に必要な保護をしない行為を処罰するものです。

遺棄とは、保護を要する子供を保護のない状態に置くことにより、その生命・身体を危険にさらすことを言います。

要保護者を場所的に移動させる行為(移置)だけではなく、置き去りのように危険な場所に放置する行為も含みます。

生存に必要な保護をしない行為(不保護)というのは、行為者と要保護者の場所的離隔を伴うことなく、要保護者の生存に必要な保護をしないことを意味します。

 

7 保護責任者遺棄致死傷罪(刑法219条)

保護責任者遺棄によって、人を死傷させたときは、傷害の罪と比較して重い刑により処断されます。

傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金、傷害致死罪は、3年以上の有期懲役となっていますから、遺棄や不保護による結果が、傷害に止まるときは、3月以上15年以下の懲役となり、死亡した場合には、3年以上の有期懲役となります。

本罪が成立するためには、保護責任者遺棄行為についての故意があれば足り、結果としての傷害や死亡についての認識は必要ではありません。

初めから、傷害や死亡という結果を生じさせるつもりで行った場合には、単に傷害罪や傷害致死罪、殺人罪などに問われることになります。

 

児童虐待事件・育児放棄事件における弁護活動

1 不起訴処分・無罪の主張

虐待の事実がないにもかかわらず、児童虐待の容疑をかけられてしまうことがあります。

子供が事故で怪我してしまったのに、保護責任者遺棄致傷罪に問われ逮捕されたような場合、保護者の方にとっては、子供が怪我をしたショックに加え、刑事訴追を受けなければならないのかという2重のショックを受けることになります。

子供にとっても保護者が逮捕・勾留されるというのは、強い動揺や悪影響を与えかねません。

このような場合には、日常的に虐待の事実がなかったことや当時どのような生活状態であったかなどをできる限り客観的な資料とともに示し、遺棄や不保護に当たる行為の存在がなかったことを十分に主張し、検察官や裁判官を説得することにより、不起訴処分や無罪の獲得を目指します。

 

2 情状弁護

児童虐待・育児放棄は、それを行ってしまった保護者にも過去に虐待を受けていたケースが多いと言われています。

このようなケースでは、自分が虐待をしてしまっていることに気付いていない場合や、やりたくないのについ手が出てしまうといった問題を抱えている場合があります。

そのような場合には、専門医によるカウンセリングや、治療により、二度と児童虐待・育児放棄を起こさせないように環境を整えることも重要です。

また、虐待を行ったからといって、子供が保護者を厳しく罰して欲しいと願う事態はそう多くはありません。

大切なのは、二度と虐待を繰り返さず、子供としっかりと向き合い、健全な育成と生活環境の未来が望めるということです。

弁護士は、児童虐待・育児放棄の再発を防止する環境を調整し、本人の反省を促し、寛大な処分となるように裁判所や捜査機関に十分な働きかけを行います。

 

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部では、児童虐待・育児放棄事件の経験豊富な弁護士による最善のアドバイスを受けることができます。

刑事事件・少年事件を専門に取り扱う弁護士が、直接「無料相談」を行います。

被疑者が逮捕された事件の場合、最短当日に弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供しています

 

お問い合わせ

ページの上部へ戻る