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【事例解説②】児童福祉法違反事件における示談の重要性は?

2024-03-17

【事例解説②】児童福祉法違反事件における示談の重要性は?

児童福祉法違反 示談

前回に引き続き、示談福祉法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
今回は児童福祉法違反事件における示談の重要性について見ていきましょう。

【事例】

前回同様、児童相談所に勤務しているAさんが10代のVさんと性的な接触を持ってしまったという事例(参照記事)を基に、児童福祉法違反の事例での示談について解説します。

【児童福祉法違反事件における示談の必要性】

「児童に淫行をさせる行為」に対しては、児童福祉法違反のなかで最も重い10年以下の懲役又は300万円以下の罰金もしくはその両方という刑罰が定められています。

児童福祉法違反を犯してしまうと、仮に前科がないという方の場合であったとしても、正式裁判で起訴されてしまったり、場合によっては実刑判決を受けてしまうということがあります。
罪を認めて争わないという事件の場合、具体的な処分(起訴される/されない、の判断や実刑になる/執行猶予で出られる、の判断)がどのようになるかという点は大きな分かれ道です。
児童福祉法違反の事案でも、示談ができているかどうかという点は処分にある程度の影響を及ぼす要素であるといえます。

刑の重さが争点となって争われた事件として令和4年1月31日に福岡地方裁判所で判決が言い渡された事例があります。
この事例は、デイサービス事業を営んでいた被告人が、そこに通っていた当時18歳未満の児童と性交をしたとして児童福祉法違反として起訴された事案です。
この裁判では事実関係は争われず、専ら刑の重さが争点となりました。

検察官は裁判の中で、2年6か月の実刑判決を求めていましたが、裁判所は、「反省していること、私選で弁護士をつけて示談の申し出をしていること、一度断られていても示談の話し合いは継続するつもりであること」を考慮して、5年間の執行猶予付きの判決を言い渡しました。
示談としてまとまった、というところまでいかなくても、示談をしようとしたという態度が非常によく評価された判決であるといえます。

【示談を行う上での注意点】

既にここまでで、児童福祉法違反の事例においても示談交渉をしたり示談を締結すること自体が非常に重要であることは理解いただけたかと思います。
刑事事件の処分においては非常に大きな意味を持つ示談ですが、いくつか注意すべき点もあります。

①誰と示談するのか

示談も、私人同士が話し合いの結果、生じた事件や紛争を合意の下で解決するという契約行為です。そのため、事件の当事者が未成年の場合、その親権者法定代理人と示談しなければなりません。
当人同士で示談をしたとしても意味がない可能性があります。

②どのように示談金を定めるのか

児童福祉法違反は、法律の建前としては児童の健全な育成が害された」という犯罪になります。
一方、示談とは、究極的に言うと、示談金を支払うことによって当事者で解決する、というものです。
ここで、児童福祉法違反の事例の場合、「示談金をどのように設定するのか」という点で大きな争いが生まれることがあります。
というのも、殴られた(=治療費)、物を盗まれた(=物の価格)といった事例のように、被害の結果を金銭で評価することが難しいのです。

また、児童福祉法違反の事例は、あくまで児童の同意に基づいた性交等を前提とします。
仮に同意がないとなれば、不同意わいせつ罪であるとか、不同意性交等罪という別の犯罪になります。

同意の下でした行為について「慰謝料」を考えることになるわけですから、明確な基準もなく、示談交渉では示談金の設定が非常に困難になります。

③どのような示談書の記載にするのか

示談金の問題をクリアしたとして、示談書にどのような記載をするかが次の問題となります。
ただお金を払ってごめんなさいをした、というだけでは、示談が刑事裁判に与える影響は限定的です。
示談ができた結果や被害者の処罰意思が和らいだことについて、的確に記載しなければいけません。

④公務員の方の場合

この点は、普段から児童に関わる方固有の問題になりますが、示談書において、事件のことをどの程度記載するのかという点も悩ましいポイントです。
教職の方や公務員の方の場合、刑事事件とは別で資格や公務員としての地位について懲戒等の処分が下される可能性もあり、示談書の記載もその資料となることがあるためです。

このあたりは事件の内容に応じた非常にセンシティブな問題でもあるため、弁護士とよくご相談いただくのが良いでしょう。

以上のような示談の注意点に気を配りつつ、「加害者ー被害者」という関係の中で、より有利に示談交渉を進めていく、というのは一般の方にとってはほぼ不可能であると思われます。
児童福祉法違反の示談交渉については、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

示談交渉のために必要となる、

  • 被害者情報の取得
  • 被害者との交渉
  • 示談書の作成
  • 捜査機関や裁判所への提出、処分軽減のための主張

は、一連の流れで行うのが最も効果的です。
示談交渉についてはなるべく早い段階から弁護士に相談、依頼して対応してもらうのが良いでしょう。
東京支部(新宿駅最寄り)でのご相談は弊所フリーダイヤル(0120−631−881)にて受け付けています。

【事務所紹介】

今回は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部児童福祉法違反事件における示談の重要性について解説致しました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。
児童福祉法違反事件でご家族が警察に逮捕されてしまった方や、児童福祉法違反事件で相手から慰謝料を請求されている等、ご不安なことがある方やご心配なことがある方は、まずは弊所までご連絡ください。

逮捕され身柄が拘束されている場合には、最短当日に弁護士を警察署まで派遣する「初回接見サービス」(有料)をご提供しています。
新宿警察署までの初回接見は33、000円(令和6年1月1日時点、東京支部の場合)で行っています。

ご相談・ご予約に関するお問い合わせは、24時間365日受付中の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までご連絡ください。

【事例解説①】児童福祉法違反とはどのような犯罪?逮捕される可能性は?裁判になった場合はどうなる?

2024-03-13

【事例解説①】児童福祉法違反とはどのような犯罪?逮捕される可能性は?裁判になった場合はどうなる?

児童福祉法 とは

今回は、児童福祉法違反について、事例をもとに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

【事例】

Aさんは東京都内の児童相談所で一時保護された児童の面接などを行う児童相談所の職員として働いていました。

ある時、Aさんは、受け持った10代の児童であるVさんから好意を持たれ、抱きつかれたり体を触られたりすることがありました。
Aさんも、やや不適切な行為であることを感じつつも、好意を持たれることに悪い気がしなかったこともあり、あまり注意せずにいました。

Vさんの行為を受けて、Aさんからも身体接触するようになり、ついには施設内の個室でキスをしたり、VさんにAさんの陰部を触らせ、口淫するということにまで至りました。

Vさんが施設を出所したあと、家族にAさんとのことを話した結果、Vさんの家族が児童相談所に対して「不適切な性的接触があった、児童福祉法違反として警視庁麻布警察署に被害届を出す」と言われてしまいました。

Aさんは自身の行為について不安に思い、弁護士に相談することにしました。

警視庁麻布警察署児童福祉法違反事件については、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部の弁護士にご相談ください。
東京支部(新宿駅最寄り)でのご相談は、フリーダイヤル(0120−631−881)にて24時間365日受け付けています。

【児童福祉法違反とは】

Aさんのように、18歳未満の未成年の人に対して一定の影響力がある人が、その未成年と性交等の淫行をする行為は、児童福祉法に違反する可能性があります。

児童福祉法は次のような規定を定めています。

  • 児童福祉法第34条
    何人も次に掲げる行為をしてはならない。
     児童に淫行をさせる行為

「させる」とあると、未成年に対して第三者と行為をさせる(強いる)というようにも見えますが、自分との行為をさせることも児童福祉法の違反になります。

上記の事例で言うと、AさんがVさんに対して「Aさんと淫行」させた、といえれば児童福祉法の違反になります。

児童福祉法の違反に対しては10年以下の懲役または300万円以下の罰金もしくはその両方が科せられる可能性があります。

児童福祉法の淫行をさせる行為については最高裁判所の裁判例も複数あり、「どのような場合に児童福祉法の違反になるのか」という点について論点も複雑になっています。

法律上は「させた」と言えるのかどうかが争われることが多くあり、後述のような無罪の判決が言い渡された事例もあります。
児童相談所の職員や学校の教員、保育施設の職員、警察官など、日常的に児童(18歳未満の未成年)と関わる職務にある人によるわいせつ行為に対して、適用されることが多い法律です。

近年、刑法の規定が大幅に改正され、不同意わいせつ罪不同意性交等罪という規定もできました。
これまで、強制わいせつ罪や強制性交等罪(旧強姦罪)と言われていたものが、更に名称が変わり、処罰範囲も広がりました。
その中でも特に大きな改正が、性交同意年齢が引き上げられた、というものです。

これまで、13歳」とされていた同意可能年齢が「16歳」にまで引き上げられたのです。
そのため、16歳未満との性交やわいせつ行為は、たとえ同意があったとしても犯罪になる可能性が広がったということです。

これを、青少年健全育成条例との兼ね合いも絡めてみると、同意があった場合の未成年との性交に対する処罰は、次のような図になります。

18歳未満との性交13歳未満13歳以上16歳未満16歳以上18歳未満
改正前強制性交等児童福祉法違反or条例違反児童福祉法違反or条例違反
改正後不同意性交等不同意性交等不同意性交等or児童福祉法違反
or条例違反
改正後の変化変わりなし実刑可能性↑実刑可能性↑

上記の表の通り、16歳未満の未成年との性交に関しては初犯でも実刑の可能性が高い不同意性交等罪が成立することになるため、相当重くなったと言えます。

また、従来は児童福祉法か条例違反が成立するのみであった16歳から18歳の間の未成年との性交に対しても、不同意性交等が成立する可能性がある規定にもなっています。

児童福祉法違反というのは、暴行や窃盗などと違って、あまり耳馴染みのない犯罪かもしれません。
また、実際の事件の中でも、適用例は少ない法律です。

ただ、刑法が改正されたあとでも、児童相談所の職員や学校の教員、保育施設の職員、警察官など、日常的に児童(18歳未満の未成年)と関わる職務にある人に対しては、依然として適用されるケースが多くあるようです。

児童福祉法違反の事例では、職務上関わる未成年の人が被害者となる犯罪であるため、加害者が被害者に対して不当な働きかけをすることが疑われやすいといえます。

上記のAさんのような事例では、AさんがVさんに対して「あのときのことは秘密だよ/誰にも言ってはいけないよ」と言えば、Vさんは親や警察に対しても被害申告することをためらわれるとみなされるのです。
そのため、警察に被害申告があった場合には、逮捕されることが多い事案であると言えます。

【児童福祉法違反の成立が否定された事例】

前述の通り、児童福祉法は単純な文言ゆえに解釈が複雑であり、近年でも児童福祉法が成立しないという判断が出された事例があります。

ここでは福岡地方裁判所が令和2年6月22日に言い渡した判決の事例を紹介します。

この事案も、児童相談所の職員が施設で担当した18歳未満の児童と口淫をしたという事件で、「口淫をした」ということ自体は争われませんでしたが、「させた」と言えるか、児童福祉法の違反と言えるのかどうかが争われました。
裁判所は具体的な事実関係を認定して、「本件の場合には児童福祉法が成立すると言えるほどの影響力はなく、児童が真に自分の意思に基づいて行動した可能性もあるのだから、児童に口淫をさせた、とまで評価できない」として、児童福祉法が成立するという検察官の主張を退けました。
なお、口淫をしたこと自体は間違いがなかったため、青少年健全育成条例の限度では有罪の判決が言い渡されています。

【児童福祉法違反により有罪判決となった場合】

一方、児童福祉法違反の成立を争わず、有罪の判決を前提として刑の重さを争った場合にはどの程度になるのでしょうか。

いくつかの裁判例でも判断が分かれていて、初犯であっても1〜2年程度の実刑判決を言い渡しているもの、ギリギリの執行猶予を付しているものが見られます。
これは不同意性交等罪ができる前の裁判例ですから、今後の動向としてはより刑罰としては重くなる(同じような事案で執行猶予が付きにくくなる)とも考えられます。

刑罰を決める要素としては、どのような行為を、どれくらいの期間にわたって繰り返していたのか、児童との関係はどのようなものか、といった点をベースとして捉え、示談ができているかどうか再犯の可能性はあるのか家族が監督を引き受けているかといった点を考慮して最終的は刑の重さが決まります。

【児童福祉法違反事件を起こしたら弁護士へ】

児童福祉法は条文の解釈が複雑であるということもあり、適用される場面が流動的に変化している事件類型です。
しかし、適用される事件では逮捕されやすく、初犯であっても実刑になる可能性が高い類型であるとも言えます。

今回は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が児童福祉法違反の裁判、量刑事例について解説致しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に扱う法律事務所です。

児童福祉法違反でご家族が警察に逮捕されてしまった方や、ご不安・ご心配なことがある方は、まずは弊所までご連絡ください。

逮捕され身柄が拘束されている場合には、最短当日に弁護士を警察署まで派遣する「初回接見サービス」(有料)をご提供しています。
警視庁麻布警察署までの初回接見は36,080円(※令和6年1月1日時点、東京支部の場合)で行っています。

ご相談・ご予約に関するお問い合わせは、24時間365日受付中の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までご相談ください。

【事例解説】不正競争防止法とは?元勤務先のデータを保管しておくと営業秘密の侵害に該当して罪に問われる?

2024-03-12

【事例解説】不正競争防止法とは?元勤務先のデータを保管しておくと営業秘密の侵害に該当する?

不正競争防止法 とは

不正競争防止法という法律をしっかりと理解できているという方は少ないかもしれません。
ただ、この不正競争防止法は、多くの人にとって意図せずに違反して罪に問われてしまう可能性がある法律なんです。

そこで、今回は不正競争防止法について、事例をもとに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

【事例】

東京都中央区に住んでいるAさん(30代男性)は、とある製造業に勤めていましたが、キャリアアップのために同業他社へ転職することにしました。
その際、Aさんは勤めていた会社で調べた論文などのデータを一式、インターネット上のクラウドサーバーにアップロードして、何かあったときの参考にしようと思って保管していました。

転職後、Aさんが勤務を開始してしばらく経った頃、自宅に警視庁中央警察署の警察官が「不正競争防止法違反の疑いがある」と、捜索差し押さえ令状を持ってやってきました。
突然のことで動揺してしまったAさんですが、転職先で元勤務先のデータを勝手に使うなどの情報ろう行為をしていたわけではありませんでした。

不安に思ったAさんは、弁護士に相談することにしました。
(※この事例は全てフィクションです。)

【不正競争防止法違反とは】

不正競争防止法とは、企業間の公正な競争を確保し、産業の発展を目指すという目的のもとで作られた法律です。
難しく感じるかもしれませんが、ざっくりと言ってしまうと、他人の商品をパクったり、情報を漏洩したり、データを改ざんしたりするような不公正な競争行為はやめようね、正々堂々と企業間競争をしようねという法律です。

不正競争防止法では、不正競争行為」として禁止されている行為の類型がいくつかあり、そのうちの一つに、営業秘密の侵害があります。
いわゆる、産業スパイ行為を禁止するものです。

元々、「情報」というものは目に見えず、法律上も保護が難しいものでした。
しかし、情報化社会が進み、目に見える財産と同じくらい「情報」が重要視されるようになり、その保護の必要性も高まっていったことから、営業秘密の侵害が法律でも規制されているのです。
営業秘密の侵害に対しては、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、もしくはその両方が課せられる可能性があります。

Aさんの行為が不正競争防止法の営業秘密の侵害に該当してしまうとなると、それだけの懲役刑罰金刑に課せられるリスクが生じることになってしまうのです。
警察からの取り調べを受けるようになったということは、これらのリスクと隣り合わせの状態になったということです。

特に不正競争防止法の営業秘密の侵害が疑われる事案は単なる喧嘩や万引きの事案などとは異なり、特別刑法犯としてしっかりと専門知識のある弁護士の助言を受けながら対応すべき事件になります。
営業秘密の侵害の事案では、警察への取り調べももちろんですが、合わせて民事事件のことも考えた動きをしなければなりません。

営業秘密の侵害に関連した訴訟では、数百万円単位の損害賠償請求を受けるということも珍しくありません。
大企業感の営業秘密の侵害であれば、数億円以上の裁判になるのです。
ソフトバンク、楽天モバイル間では1000億円もの損害賠償を巡る裁判になっています。
(※参照記事:『楽天モバイルと楽天モバイル元社員に対する訴訟を提起 1,000億円規模の損害賠償請求権を主張』)
ここまで大きな裁判は稀ですが、いまや営業秘密はそれだけ大きな価値を有している会社の財産とも言えるのです。

【営業秘密の侵害とはなにか?】

ここで、営業秘密ってどこまでの情報なんだ?」と思われる方もいるかもしれません。

不正競争防止法では、営業秘密について、次のように規定されています。

  • 不正競争防止法第2条(定義)
    (※第1~5項省略)
    6 この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。
    (※第7~11項省略)

営業秘密に当たる情報かどうかは、秘密管理性、②有用性、③非公然性という要素をすべて満たすものを指すとされています。

①秘密管理性

秘密管理性というのは、当該情報を事業主が「秘密にしたい」という意思を持って管理している状況であるかどうかという点で判断されます。
例えば、資料に「社外秘」と書かれていたり、会社内の金庫付きのロッカーに保管されていたり(鍵は管理職のみが保持ないし持ち出すときには決裁が必要になるなど)という状況であれば、「会社にとっての秘密なのだな」と誰からもわかる状態です。
このような状況であれば、秘密管理性があると言えます。

逆に、会社の受付に資料として掲示されているものや、社内で誰でも見られる棚に置かれているというのであれば、秘密管理性を満たさない場合があります。

②有用性

有用性というのは、その情報が事業にとって意味のあるかどうかという点です。
秘密に管理している情報なのであれば、おおよそ事業にとって意味のある情報ですから、有用性があると言えます。
有用性がない情報というのは、従業員の私生活上の情報であるとか、会社の不祥事などの情報(有害物質を工場で垂れ流しているという情報など)については、事業に関連しない、秘密として保護するに値しない情報であるため、有用性がない情報であると言えます。

③非公然性

非公然性とは、世の中で知られていないということです。
例えば、自然化学の世界における法則や、数学の計算公式など、学術的に広く知れ渡っている情報は公然の情報であると言えます。
また、ニュース、雑誌、インターネットなどの情報媒体に載っている場合にも、非公然性を満たさない情報であると言えます。

これらの要素(①~③)が全て満たされた情報営業秘密に該当するものであり、営業秘密をコピーしたり、社外に持ち出したり、第三者に提供したり、売買したり、利用させたりした場合には、営業秘密の侵害が成立することになってしまうのです。

Aさんのケースで具体的に考えてみましょう。
Aさんは、論文などのデータをインターネットクラウド上にアップロードしたということでした。
これらを、例えば自宅のPCでダウンロードしていたとなれば、情報の複製があったとなります。
そこで、そのデータが営業秘密に該当するかどうかが問題になります。

メーカーにとっても化学や物理学の論文は、事業への応用可能なものもあるでしょうから、有用性がある情報でしょう。
この情報が、社内で秘密に管理されていたものなのか、会社が作成して未公表の論文なのか、学術誌などにも掲載されているような論文なのかに応じて、営業秘密に該当するかどうかの判断が別れてくるでしょう。

【元勤め先との示談は?】

営業秘密の侵害が高額な損害賠償訴訟にまで発展するおそれがあるとなると、示談交渉をどうしたら良いかわからないという方もいらっしゃるでしょう。
ですが、前述のように、「そもそも営業秘密の侵害が成立しているのかどうか」をよく検討しなければならない場合があります。

よく見られる対応として、「元勤務先からデータの持ち出しを指摘されたので、慌てて消してしまい、会社からの請求に全て応じた」というものがあります。
必ずしも間違いであるとは言い切れないのですが、持ち出したデータによっては「営業秘密の侵害」が成立しないという場合もあり得るのです。

不正競争防止法の違反だと言われたり、警察が自宅に捜索差し押さえ令状を持ってやってきた、ということから、安易に判断をして事態を悪化させてしまうという方も、中にはいらっしゃいます。
刑事事件において示談は非常に重要ですが、事件の内容を正確に吟味したうえで行わなければなりません。
相手の言うままに示談に応じようとしたところ、とんでもない金額の損害賠償請求を受けてしまうという事案もあります。
不正競争防止法違反の事件で相手方と対応をするときにも、早めに弁護士にご相談・ご依頼ください。

不正競争防止法違反によって取調べを受けている、元勤務先から営業秘密の侵害をしたと疑われているという方は、刑事事件に特化した専門の法律事務所である弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

警視庁中央警察署の不正競争防止法違反事件の事件については、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部の弁護士が対応いたします。
東京支部(新宿駅最寄り)でのご相談・ご依頼についてのお問い合わせは、弊所フリーダイヤル(0120−631−881)にて24時間365日受付中です。

【事例解説】交際相手とのトラブルが刑事事件に発展!?交際後は逮捕されやすくなるって本当?

2024-03-10

【事例解説】交際相手とのトラブルが刑事事件に発展!?交際後は逮捕されやすくなるって本当?

交際トラブル 弁護士

交際中の相手と些細なことから喧嘩になってしまうことは少なくありません。
ですが、交際相手とのトラブルが思わぬ形で刑事事件に発展することもあります。

今回は、交際相手との間で起きやすいトラブルや弁護士を介入するメリット、逮捕される可能性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

【事例】

東京都豊島区に住んでいるAさん(20代男性)は、交際していたBさん(10代女性)と同棲していました。
ある日、AさんはBさんが他の男性と二人きりで外出していたことを咎めて喧嘩になってしまい、掴み合いの喧嘩になってしまいました。
その時、AさんはBさんに怪我を負わせてしまいましたが、仲直りをして交際を続けました。
しかし、その後も喧嘩が絶えず、半年後、AさんとBさんは交際関係を解消し、同棲も解消することになりました。

別れて半年ほど経った頃、Bさんの友達を名乗る人物から、Aさんのインスタグラムに「BへのDVについて慰謝料100万円を払え、1週間以内に払わないと警察に被害届を出す」というDMが届きました。
Aさんはどうしたらよいかわからなくなり、弁護士に相談することにしました。
(※この事例は全てフィクションです。)

【交際期間中のトラブルについて】

交際期間中のトラブルは、好き同士で付き合っている間は問題になりにくいものの、別れたあとに再燃するというケースが時折見受けられます。
交際期間中のトラブルとして上記のケースのようなDV・喧嘩に限らず、金銭関係を巡ったトラブル性暴力別れたあとのストーカー事案など、枚挙に暇がありません。

そしてそのほとんどが、「その時は和解をした」という状況なのです。
しかし、破局後に相手の対応が180度変わってしまうということも珍しくありません。

たとえ交際期間中であったとしても、故意に相手に怪我をさせてしまった場合には傷害罪が成立します。
傷害罪に対しては、15年以下の懲役または50万円以下の罰金という刑罰が定められています。
交際期間中の喧嘩から派生した傷害事件で、罰金の前科が課されるというケースも珍しくはありません。

交際期間中の事件とはいえ、被害届が出されることを回避するために、早期の示談交渉が重要です。
顔見知り以上の間柄で、弁護士を介さないで示談交渉することは基本的におすすめできません。

何かしらの「加害者ー被害者」という関係性になってしまっている以上、たとえ知人であっても、むしろ、知人以上の関係性であるからこそ、感情的な対立が全面に出てしまい、示談に向けた建設的な話し合いができないという場合が多くあります。
感情的な対立が慰謝料の金額にも大きく影響するため、仮に軽微な事件であっても数十万円100万円といった慰謝料の請求になってしまう場合があるのです。

円満な示談による解決を望むのであれば、間に弁護士を介した形で、かつ書面上も後腐れがないような形で示談をまとめあげなければなりません。
弊所では、刑事事件化する前の示談交渉も得意とする刑事事件を専門に扱う弁護士が対応します。

【交際後は逮捕される可能性が上がる!?】

また、元交際相手という事案では注意しなければならないポイントがあります。
それは、逮捕される可能性が他の事案よりも高いという点です。
傷害事件というと様々なものがあり、お酒に酔っ払って居酒屋で喧嘩したというものやタイマンを張って怪我をさせたというもの、路上で口論になって相手を殴ったというものなど、色々な場面があります。

その中でも、顔見知り同士、知り合い同士の事案というのは、逮捕される可能性が他の事案よりも高いのです。
その理由は、当人同士でトラブルの蒸し返しが起きやすいので、逮捕する必要が高い、と見られてしまうからです。

元交際相手、それも同棲していた間柄とまでなると、お互いの連絡先や現在の住所を知っているというケースもあるでしょう。
場合によっては、親同士も連絡先を交換している場合もあります。

これが警察署に事件として持っていかれてしまった場合、警察官としては「加害者が被害者に対して更に危害を加えるかもしれない、そうでなくとも不当な働きかけや脅しをするかもしれない」と見ることがあり、逮捕に踏み切られてしまうのです。
被害届が出されて逮捕されるという最悪の事態を避けるためにも、事件化する前の対応や事件化したときのことを踏まえた初期の対応が非常に重要です。

【元交際相手とのトラブルはどうしたらいい?】

交際期間中のこととはいえ、刑事事件に該当するような事件については警察に被害届を出される前の対応が重要です。
初期の対応を当人同士でやってしまい、より悪化しきった状態でやっと弁護士に相談するという方もいますが、最悪の事態を避けたいと思うのであれば、できる限り早く弁護士に相談することをおすすめします。
被害届の提出を避けるための早期の示談交渉を行いましょう。

また、刑事事件化してしまった場合には逮捕されるリスクがあるため、弁護士を介した交渉を進めておくことで逮捕リスクの低減を目指すことができます。
さらには弁護士が警察に直接働きかけることで逮捕を回避できるという場合もあります。

交際相手とトラブルになってしまった、傷害事件で相手に慰謝料を請求されているという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

東京23区内の事件については、あいち刑事事件総合法律事務所東京支部でご相談できます。
豊島区を管轄している池袋警察署や目白警察署管内の刑事事件について、東京支部(新宿駅最寄り)でのご相談はフリーダイヤル(0120−631−881)にて24時間365日受け付けています。

【報道事例】マッチングアプリで知り合った女性に結婚をほのめかし多額の現金騙し取り|詐欺罪について解説

2024-03-05

【報道事例】マッチングアプリで知り合った女性に結婚をほのめかし多額の現金騙し取り|詐欺罪について解説

マッチングアプリ 詐欺罪

今回は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が、マッチングアプリを使った詐欺事件の事例をもとに、詐欺罪について解説致します。

【事例】

マッチングアプリで知り合った女性に結婚をほのめかしたうえで現金をだまし取ったとして、外資系の保険会社の元社員が警視庁に逮捕されました。

逮捕されたのは、東京都中央区在住の男性A(32)です。
警視庁によりますと、令和2年8月ごろ、マッチングアプリで知り合い交際していた女性V(30代)に対し、結婚後の税金対策として債権を購入してほしいなどとうそを言って、700万円をだまし取ったとして詐欺の疑いが持たれています。

(中略)

調べに対し、Aは容疑を認め「株の運用に充てていた。ほかにも女性医師など10人くらいから1億円をだまし取った」と供述しているということです。(以下略)
(※3/1に『NHK NEWSWEB』で配信された「結婚ほのめかし現金詐取か 外資系保険会社の元社員 逮捕」記事の一部を変更して引用しています。)

【詐欺罪とは?】

今回、Aは詐欺罪の疑いで逮捕されています。
詐欺罪については、刑法第246条1項で以下のように規定されています。

  • 刑法第246条1項 (詐欺)
    人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

詐欺罪の成立要件は以下のようになります。

①「人を欺いて」(欺罔行為
②相手方の錯誤
③錯誤に基づいて「財物を交付させた」(処分行為
④財物の移転

①の欺罔行為とは、他人に対して、財物・財産上の利益を処分させるような錯誤に陥らせる行為を意味
します。
②の錯誤とは、嘘を真実だと思うなど、事実の認識に誤りがある状態のことを意味します。
③の処分行為とは、錯誤に基づく財物又は財産上の利益の処分(交付)行為を意味します。
④の財物の移転とは、財物が加害者や第三者の手に渡ることを意味します。

今回の事例で考えると、AはVに対して「結婚後の税金対策として債権を購入してほしい」と嘘を言って700万円をだまし取ったと報道されています。

嘘をついて相手を騙す行為欺罔行為に該当し、VがAの言葉を信じたのであればVに錯誤があると考えられます。
そして、Vは錯誤に基づいて700万円(財物)を交付しているので財物の処分行為に該当し、700万円がAの手に渡っているため財物の移転があったということになります。

つまり、今回のAの行為は詐欺罪に該当する可能性が高いということです。

【詐欺事件で逮捕されたら弁護士に相談】

詐欺罪の罰則は10年以下の懲役刑のみです。
罰金刑が規定されていないため、詐欺罪で起訴されると公判請求となり、刑事裁判が開かれることになります。

詐欺事件においては、被害者側に謝罪をし、示談金を支払うことで示談を成立させることが事件の処分に際して大変有効です。
当事者間で刑事事件の解決ができているという事実は、警察や検察での処遇、裁判になった際の量刑などに大きく影響します。

ただ、当事者間での解決といっても、単純に加害者と被害者の本人同士で示談の交渉を行ってもあまり良い方向に進むことはないでしょう。
そのため、第三者である弁護士に間に入ってもらって、示談成立を目指す手段が有効です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺罪などの刑事事件・少年事件を数多く扱う法律事務所です。

刑事事件を起こしてしまった方、警察から取調べを受けている、呼び出しを受けている方は,弊所へお越しいただいての初回無料相談をご利用いただけます。
また、ご家族がすでに逮捕されているという方へは、お申込み後、最短当日中に弁護士が接見をして、今後の対応についてのアドバイスや状況を確認する初回接見サービス(有料)がございます。

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【報道事例】交通事故を起こして知人に身代わり出頭をさせた男性を逮捕|身代わり出頭で問われる罪は?

2024-03-02

【報道事例】交通事故を起こして知人に身代わり出頭をさせた男性を逮捕|身代わり出頭で問われる罪は?

身代わり出頭 罪

今回は、交通事故を起こして知人に身代わり出頭をさせたとして男性らが逮捕された事例をもとに、身代わり出頭で問われる罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

【事例】

無免許で運転中にトラックに衝突し、その後、逃走した男が“身代わり出頭”を知人にそそのかしたとして、警視庁に逮捕されました。

男性A(28)は去年8月、無免許で運転中に品川区の交差点でトラックに衝突して運転手Vにけがをさせ、立ち去った上で、無免許運転の発覚を免れるため知人の男性B(26)にAの代わりに名乗り出るようそそのかした疑いが持たれています。

警視庁によりますと、その後、現場に「私が運転していました」とBが現れましたが、防犯カメラの捜査から逃走した容疑者ではないと発覚。
警視庁は事件のいきさつを調べています。
(※2/29に『Yahoo!JAPANニュース』で配信された「無免許運転でトラックに衝突し逃走…知人に“身代わり出頭”を依頼か 28歳の男ら3人を逮捕 東京・品川区」記事の一部を変更して引用しています。)

【身代わり出頭で問われる罪は?】

今回、Aは自身が無免許運転の発覚を免れるためにBに身代わり出頭するようにそそのかしたと報道されています。

「身代わり出頭」とは、その名の通り、事件・事故を起こした本人に代わって警察に自首する行為を指します。
身代わり出頭は、刑法第103条で規定されている犯人隠避罪に問われる可能性が高いです。

  • 刑法第103条(犯人隠匿等)
    罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を隠匿し、又は隠避させた者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

隠匿とは逃走中の犯人が隠れる場所を提供することを指し、隠避とは隠匿以外の逃走を助ける一切の行為を指します。

今回の事件で考えると、まず、Aは無免許で運転中に人身事故を起こしています。
無免許運転は道路交通法違反人身事故は過失運転致傷罪に問われる可能性が高く、どちらも罰金と懲役刑が罰則で規定されています。
つまり、Aは「罰金以上の刑に当たる罪を犯した者」に該当するということです。

Bは、Aの身代わり出頭をしているため、Aの逃走を助ける行為をしたとして犯人隠避罪に問われる可能性が高いです。

また、AはBに対して身代わり出頭をするようにそそのかしたとされています。
人に犯罪行為を行わせるように仕向けることは「教唆と言い、教唆については刑法第61条で以下のように規定されています。

  • 刑法第61条(教唆)
    人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
    (第2項省略)

AはBを教唆して、Bに犯人隠避罪を実行させているため、Aは教唆犯となりBと同じ刑罰が科せられる可能性があります。
もちろん、Aは無免許運転による人身事故(ひき逃げ)を起こしているため、道路交通法違反や過失運転致傷罪などの罪に問われる可能性があります。

【身代わり出頭した・させた場合は弁護士に相談】

身代わり出頭をしたり、身代わり出頭をさせた場合は、犯人隠避罪犯人隠避教唆罪に問われる可能性があります。
自身の犯行であることが発覚することを免れるために別の人に身代わり出頭を依頼してしまった、知人のために自らの意思で身代わり出頭をしてしまったという方は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談することで、今後どうなるかの流れや見通しについて詳しく説明を受ける事ができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、様々な刑事事件の弁護活動を担当した実績を多く持つ、刑事事件に特化した専門の法律事務所です。
初回法律相談は無料でご案内していますので、ご相談・ご予約に関するお問い合わせは、弊所フリーダイヤル(0120-631-881)にてお待ちしております。

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【報道事例】元勤務先の美容室に侵入して現金などを盗んだとして男性を現行犯逮捕|男性に問われる罪は?

2024-02-28

【報道事例】元勤務先の美容室に侵入して現金などを盗んだとして男性を現行犯逮捕|男性に問われる罪は?

美容室 侵入盗

今回は、東京都中野区にある美容室に男性が侵入して現金などを盗んだとして現行犯逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

【事例】

勤務していた美容室に侵入し、脱色剤や現金を盗んだ疑いで、美容師の男性が現行犯逮捕されました。

美容師の男性A(31)は、26日未明、東京都中野区にある美容室に侵入し、店で使う脱色剤や現金2万5000円などを盗んだところを、張り込み中の警察官に現行犯逮捕されました。

Aは1月までこの店で働いていて、従業員しか知らない場所に保管されていた合鍵を使って侵入していた模様です。
警察からの取調べに対し、Aは「独立して美容室を開業したが、貯金がなかった」などと容疑を認めているとのことです。

この店では、これまでにも売上金がなくなることがあり、警視庁は余罪を調べています。
(※2/27に『Yahoo!JAPANニュース』で配信された「「独立して開業も貯金なかった」元勤務先美容室に侵入、脱色剤や現金盗む 31歳美容師の男を現行犯逮捕 東京・中野」記事の一部を変更して引用しています。)

【Aに問われる罪は?】

今回のAの行為は、建造物侵入罪窃盗罪に問われる可能性があります。
建造物侵入罪と窃盗罪について、それぞれ見ていきましょう。

【建造物侵入罪】

建造物侵入罪については、刑法第130条で以下のように規定されています。

  • 刑法第130条(住居侵入等)
    正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

今回、Aが侵入した美容室は条文の建造物」に該当します。
この美容室にAは金品を盗む目的で侵入しているため、これは「正当な理由」とは言えません。
つまり、Aは正当な理由なく建造物に侵入しているため、建造物侵入罪に問われる可能性があります。

【窃盗罪】

窃盗罪については、刑法第235条で以下のように規定されています。

  • 刑法第235条(窃盗)
    他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

Aが今回盗んだとされる脱色剤や現金は、Aの占有下にない「他人の財物です。
他人の財物を、所有者(被害店舗)の意思に反して自己(A)の占有下に移動させているため窃取」に該当します。
つまり、Aは他人の財物を窃取しているため、窃盗罪に問われる可能性があるということです。

【侵入盗事件を起こしたら弁護士へ】

今回のAのように、人の住居や建造物などに侵入して金品を盗む窃盗の手口は侵入盗と呼ばれます。
侵入盗事件を起こした場合、逮捕される可能性が非常に高く、逮捕後も勾留されて最大20日間身柄が拘束されてしまうおそれがあります。

長期的な身柄拘束を受けると、会社に事件が発覚して解雇されてしまったり、収入が途絶えて家族が生活できなくなってしまったりといった影響が及ぶかもしれません。

ご家族が逮捕されたけど少しでも早く釈放してほしいという場合は、弁護士に刑事弁護活動を依頼することが重要なポイントです。
とくに、早期釈放に関しては逮捕後72時間のスピーディな対応が非常に大切になってきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、様々な刑事事件の弁護活動を担当した実績を多く持つ、刑事事件に特化した専門の法律事務所です。
ご家族が逮捕されてしまった場合、ご依頼から最短当日中に弁護士が接見に向かう初回接見サービス(有料)をご案内いたします。

弁護士が直接ご本人から事実関係などを聞いた上で、現在おかれている状況や今後の見通しについて詳しく説明を受ける事ができます。
ご相談・ご予約に関するお問い合わせは、弊所フリーダイヤル(0120-631-881)にて24時間365日受付中です。

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【報道事例】テロ予告メールを受けた東京都内のテーマパークが臨時休業|犯人に問われる可能性がある罪は?

2024-02-25

【報道事例】テロ予告メールを受けた東京都内のテーマパークが臨時休業|犯人に問われる可能性がある罪は?

テロ予告 威力業務妨害罪

今回は、東京都多摩市内にあるテーマパークにテロ予告メールが届いて臨時休業になった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

【事例】

24日朝、東京都多摩市にあるサンリオピューロランドにテロ予告メールが届きました。
臨時休館の対応がとられていて、警視庁が危険物などの捜索を行っています。

警視庁などによりますと24日朝、多摩市落合にあるサンリオピューロランドにテロ予告メールが届きました。
メールには、敷地内に危険物を設置した」などといった内容が書かれていたということで、サンリオピューロランドは、来場客のほか出演者や現場スタッフの安全確保のため、24日は臨時休館になりました。

警視庁は威力業務妨害の疑いも視野に、24日朝からサンリオピューロランドの中に危険物などが設置されていないかどうか調べています。
(※2/24に『Yahoo!JAPANニュース』で配信された「サンリオピューロランドにテロ予告 危険物など捜索で臨時休館 東京・多摩市」記事を引用しています。)

【犯人に問われる可能性がある罪】

今回の事例の犯人が行った行為は、威力業務妨害罪に問われる可能性が高いです。
威力業務妨害罪については、刑法第234条で以下のように規定されています。

  • 刑法第234条(威力業務妨害)
    威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

条文に記載されている「前条」とは、刑法第233条の信用毀損罪・偽計業務妨害罪を指しています。

  • 刑法第233条(信用毀損及び業務妨害)
    虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

つまり、威力業務妨害罪が成立した場合も、刑法第233条と同じ刑罰で処分を受けるという意味になっています。

威力業務妨害罪は、威力」を用いて「人の業務」を「妨害」したときに成立します。

「威力」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力を示すことを指します。
殴る蹴るといった暴行はもちろん、脅迫や集団で怒号するような行為も「威力」に該当します。
今回の事例のようなテロ予告メールは、敷地内に危険物を設置したというメールを受け取った人々の意思を制圧するに足りる勢力であると客観的にも評価できるため、「威力」に該当すると考えられます。

「業務」とは、大判大正10年10月24日の判例で職業その他の社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務と解釈されています。
テロ予告メールが届いたテーマパークでは、多数の従業員が継続して勤務しているため、「業務」に該当すると考えられます。

「妨害」とは、その行為によって本来遂行するべき業務に支障をきたしたり、支障をきたす危険性を与えることを指します。
テロ予告メールが届いた場合、テーマパーク内の従業員は安全確保を行うために客を避難させたり警察に通報したりといった対応をする必要が出てくるため、本来の業務を妨害されていることになります。

以上のことから、今回の事例のようなテロ予告メールは「威力を用いて人の業務を妨害した」と考えられるため、威力業務妨害罪に問われる可能性が高いということになります。

【威力業務妨害事件を起こしたら弁護士へ】

威力業務妨害罪で起訴されて有罪になった場合、3年以下の懲役50万円以下の罰金で処罰を受けることになります。
起訴を免れて不起訴を獲得するためには、被害者との示談を成立させることが重要なポイントになります。
ただ、当事者間での示談交渉はスムーズに進まないことが多く、かえって別のトラブルに発展しかねません。

なので、威力業務妨害事件を起こして被害者と示談をしたい場合は、弁護士に刑事弁護活動を依頼することをおすすめします。
弁護士が代理人として被害者との示談交渉を行うので、当事者間よりも示談が成立する可能性がグッと高まります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、様々な刑事事件で弁護活動を担当し、被害者と示談を成立させた実績を多く持つ、刑事事件に特化した専門の法律事務所です。
ご相談・ご予約に関するお問い合わせは、弊所フリーダイヤル(0120-631-881)にて24時間365日受付中です。

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【事例解説】出版社が掲載する記事に名誉棄損罪は成立する?名誉棄損罪が成立する要件とは?

2024-02-22

【事例解説】出版社が掲載する記事に名誉棄損罪は成立する?名誉棄損罪が成立する要件とは?

出版社 名誉棄損罪

芸能人のスクープや政治家の汚職などを報道する出版社に対して、名誉棄損を理由に損害賠償をする事例では、どのような点がポイントになるのでしょうか。

今回は、名誉毀損罪がどのようにして成立するのか、争点になりそうな部分を中心に、弁護士法人あいち刑事総合法律事務所東京支部が解説します。

【事例】

出版社Xが発売した週刊誌の記事に、男性Vが女性に対して性的暴行を加えたとする内容が掲載されました。
この内容が事実無根であると激怒したVは、Xに対し、名誉毀損に基づく損害賠償請求及び訂正記事による名誉回復請求を求める訴訟を提起しました。

それに対しXは、「一連の報道には十分に自身を持っている」などとしています。
XのVに対する行為は名誉棄損罪が成立するのでしょうか?
(※この事例はフィクションです。)

【名誉毀損罪とは】

今回の事例では、VはXに対して名誉毀損による損害賠償請求や名誉回復請求をする、と訴えています。
本件行為が名誉棄損にあたり、損害賠償請求や名誉回復請求が認められた場合、Xは刑法で規定された名誉棄損罪に問われる可能性もあります。

名誉毀損罪については、刑法230条1項で以下のように規定されていて、その特例として230条の2が規定されています。

  • 刑法第230条(名誉棄損)
    公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。
  • 刑法第230条の2(公共の利害に関する場合の特例)
    前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
    2 前項の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
    (第3項省略)

名誉棄損罪は、公然と事実を摘示して人の名誉を棄損する」ことで成立します。
「公然と事実を摘示する」とは、不特定多数の人に人の社会的評価を低下させるような事実を伝えることを言います。

刑法第230条の2では、「公共の利害に関する事実であり、かつその目的が専ら公益を図ることにあった」場合に「真実の存否を判断する、とされています。
この「公共の利害~を図ることにあった」という要件ですが、2項に「公訴に至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす」とあるように、犯罪行為に関する事実であれば、公共の利害に関する事実であるとみなすことが出来ます。

【名誉毀損罪に関して相談したいときは弁護士へ】

名誉毀損罪は、事実の認定や取材の十分性の認定などにおいて、内容が難しくなる事件が多く、弁護士による適切なサポートが不可欠です。
名誉毀損罪による刑事事件を起こしてしまった場合は、早い段階で弁護士に相談してアドバイスやサポートをしてもらうことをおすすめします。

早期に弁護士に相談しておくことで、今後の取調べ対応の具体的なアドバイスや今後の見通しについて説明を受けることができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、名誉棄損事件はもちろん、様々な事件の弁護活動を担当した実績を持つ、刑事事件・少年事件に精通した法律事務所です。

東京都内で名誉棄損に関する事件を含め刑事事件を起こしてしまったという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部までご相談ください。
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【事例解説】試乗車を長時間乗り回すと詐欺罪が成立する?単独試乗は占有の移転が認められる?

2024-02-19

【事例解説】試乗車を長時間乗り回すと詐欺罪が成立する?単独試乗は占有の移転が認められる?

詐欺罪 試乗

男性が試乗車を10時間ほど乗り回した後、自宅の近くに乗り捨てたとして、後日詐欺罪逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

【参考事件】

会社員であるAさんは、ある有名海外メーカーの新車に乗ってみたいと思いましたが、あいにくそれを購入するほどのお金はなく、試乗するふりをしてそのまま長時間乗ってしまおう」と考え、その海外メーカーを取り扱うお店に赴きました。

そして、「試乗をする」と店員にうそをいって、新車をディーラーから借りた男性は、途中自分でガソリンを入れながら、約10時間その新車で様々な場所を走り、自宅近くにその車を乗り捨てました
後日、Aさんは詐欺罪の疑いで逮捕されました。
(※この事例は全てフィクションです。)

【詐欺罪とは】

今回、Aさんは詐欺罪の疑いで逮捕されています。
詐欺罪については、刑法246条にその規定があります。

  • 刑法第246条(詐欺)
    人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
     前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪が成立するための要件(満たさなくてはならない事項)は、①「欺罔行為があること」②「相手が錯誤に陥ったこと」③「錯誤にもとづいて相手が交付行為をしたこと」④「財物の占有が移転したこと」である、と解されています。

①の「欺罔行為」とは取引に関する重要な事実について嘘をつくなどして相手を騙すこと、②の「錯誤」とは思い違いのことです。

【試乗しただけで詐欺罪が成立する?】

それでは、本件で上記の要件があてはまるか、見てみましょう。

まず、Aさんは車を返還するつもりもないのに、「試乗をする」と店員に言って車を返還する意思があるように装っているから、欺罔行為にあたります(①)。
そして、店員は「Aさんが試乗をする(車を返還する)」と思っているので、錯誤に陥っているといえます(②)。

ここで、③の要件について、本件では店員はうそを信じてAさんに車を貸していますから、「錯誤にもとづいた交付行為」があったと考えられます。

そして、④の要件に関して、本件では車は店員からAさんに移転した」と言えるのでしょうか。
あくまで試乗という形式で店員は車を貸し出していますから、一見、まだ店員に占有(物に対する事実上の支配)があるようにも見えます。

しかし、試乗車を乗り逃げした事案で裁判例は、添乗員がいない単独試乗の場合は、ガソリンを補充でき長距離移動が可能になること、また他の車両に紛れて発見が困難になることなどから、「単独試乗をさせた時点で、意思に基づく占有移転が肯定される」としており(東京地八王子判平成3年8月28日)、財物の移転の要件を肯定し詐欺罪の成立を認めています。
よって、本件でも④の要件を充足し、詐欺罪が成立すると考えられます。

【この行為は詐欺罪?そんな時は弁護士へ】

今回のように、詐欺罪が成立するかどうか、判断をするのが難しい事件を起こしてしまったという場合は、早期に法律事務所へ相談することをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺事件はもちろん、様々な刑事事件の弁護活動を行っている刑事事件に特化した専門の法律事務所です。
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