裁判員裁判

裁判員制度とは

裁判員制度とは、国民一般の方に裁判員として刑事裁判に参加してもらい、被告人の有罪・無罪あるいは有罪の場合には、どのような刑を科すかについて裁判官と一緒になって検討・判断する制度のことです。

一般の方が刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する国民の理解を増進し、裁判の正当性に対する国民の信頼を高めることを目的として、平成21年に導入されました。

裁判員対象事件

対象事件は、死刑、無期懲役、無期禁錮に当たる罪にかかる事件、法定合議事件(裁判官の合議体で審判すべきものと法律で決められている事件)の一部であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪にかかる事件です。

具体的には、殺人罪強盗致死傷罪傷害致死罪危険運転致死罪、現住建造物等放火罪身代金目的誘拐罪などの重大な犯罪が対象となっております。

ただし、裁判員その他の生命・身体・財産に危害が加えられる恐れがあるなど、裁判員が職務を遂行できない等の事情があるときは、裁判官のみの合議体で取り扱われる場合もあります。

合議体の構成

合議体の構成は、原則として裁判官3人、裁判員6人となっており、裁判官のうち1人が裁判長となります。

ただし、公判前整理手続きを通じ、争点・証拠の整理において事実に争いがなく、事件の内容に照らして適当と認めるときは、裁判所の決定によって、合議体の構成員を裁判官1人、裁判員4人とされる場合があります。

そして、裁判員が体調不良等により、欠けてしまう場合に備えて、必要であれば補充裁判員が置かれます。

裁判員の選任は、衆議院議員の選挙権を有する者の中から選ばれます。

禁固以上の刑に処せられた者や、国会議員・弁護士や検察官・裁判官などの法曹は裁判員にはなれません。

また、対象事件の被害者や不公平な判断をする恐れのある者もその事件の裁判員にはなれません。

なお、やむを得ない事由によって出頭が困難な者は、辞退の申立てをすることができます。

評議・評決

裁判員は、裁判官とともに、事実認定や法令の適用、刑の量定を行いますが、裁判員はあくまで一般の方ですから、裁判長から必要な説明が丁寧になされます。

充実した評議となるように、裁判長からは、裁判員の発言する機会を十分に設け、法律の解釈など専門的な知識が必要な部分については、しっかりとした説明がなされることになっています。

そして、裁判員と構成裁判官の判断は、評決による多数決で決められることになっています。

評決は、基本的に単純な多数決で行われますが、裁判官と裁判員の協同という要請上、裁判員のみの多数による評決では、被告人に不利益な判断はできません。

たとえば、裁判官3人が無罪であると判断し、裁判員のうち1人が無罪で残りの5人が有罪の票を投じた場合、無罪4人:有罪5人で、多数決では有罪となってしまいますが、裁判官が一人も有罪の判断をしていないので、有罪の判断を下すことはできないということです。

裁判員裁判と通常裁判(裁判官裁判)の違い

従来の裁判官のみによる裁判では、裁判官は、検察官や弁護人がそれぞれ関係のあると考えて提出した多数の証拠を読み込み、自ら緻密に分析・検討して、事案の真相解明に努めてきました。

しかし、裁判員裁判において、裁判員に同様の作業を求めることはできません。

裁判員裁判では、事案の真相解明や被告人の権利保護の要請を充たさなければならないことを前提にしつつ、裁判員がその内容を理解し、心証を形成し、意見を述べることができるようにするとともに、裁判員の負担をできる限り少なくしなければなりません。

そこで、裁判員対象事件では、裁判員にできる限り負担をかけないよう制度設計が工夫されています。

たとえば、裁判員裁判では、必ず公判前整理手続きが行われ、検察官・弁護人・裁判所の三者によって、あらかじめ争点の整理と証拠の整理が行われることとなっています。

公判前整理手続きでは、事前に弁護人、検察官、裁判官の三者で、争点や証拠を整理し、公判で集中的な審理を行うための綿密な準備が行われます。

これによって、公判を連日開廷し、集中的に審理が行えるようになるとともに、裁判員に分かりやすい計画的で充実した審理を行うことができるのです。

公判前整理手続きでは、証拠の採否決定まで行うことができるため、この段階で裁判員の関与しない手続きに関する判断は、終わらせておくことができます。

裁判員裁判における弁護士の重要性

裁判員裁判では、一般の方が裁判員となって、公判手続きに関わります。

しかし、一般の方にとって、裁判制度はなじみが薄いものですから、裁判員にこちらの主張を十分に納得してもらうため、通常の裁判よりも分かりやすく丁寧な説明を心掛ける必要があるといわれています。

また、判員裁判では、連日の集中審理が行われますので、そのために入念な事前準備が必要となります。

当事者である検察官および弁護人は、裁判員が審理の内容を十分に理解し、心証を形成することができるよう意識して、請求すべき証拠を厳選する必要があるのです。

弁護士としては、公判前整理手続きの中で、積極的に証拠の開示を求めるとともに、弁護側からの主張を立て、何処が争点となるのかをしっかりと把握したうえで、公判での訴訟活動に向けた準備を行う必要があります。

裁判員裁判では、集中した審理を行うために、公判までに膨大な資料を精査し、何が有利な証拠となるのかを見極めたうえで、しっかりとした主張構造を整える必要があります。

裁判員裁判において、充実した弁護を行うためには、高い弁護技術が求められます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部では、刑事事件・少年事件を専門に扱っており、数多くの刑事事件の経験を基に、裁判員裁判についてもお力になれるはずです。

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