会社等の組織において、上の立場にある者が、部下の女性に対してセクハラを行った場合に生じうる刑事責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
事例
東京島港区にある専門商社で秘書として働く女性Vさんは、自分が担当する会社役員Aから、プライベートでの食事やパーティに誘われ、最初これを断ろうとしてところ、秘書職は期間契約であることを種に、「担当役員への貢献度が十分でなければ次回の契約満期日で雇用終了もあり得る」等と言われたため、Aのパワハラに屈して食事やパーティに同伴することが多くありました。
食事やパーティにおいて、AがVさんの肩や腰に手を回す等のセクハラをしていたことは不満ながらも我慢していたところ、ある食事会の後、無理矢理キスをされ胸を鷲掴みにされるという行為に及ぶにつれて、ついに我慢しきれなくなり、Aによるセクハラ・パワハラ発言を録音したデータ等を持って警視庁赤坂警察署に相談に行き、強制わいせつ罪の刑事告訴を行いました。
(フィクションです。)
部下等を不当に扱うこと、周囲の人を不愉快にする「ハラスメント」行為は、今のところ、単体として刑事上の責任を生ずるものではなく、あくまで既存の犯罪行為に該当する行為のみが刑事処罰の対象となります。
上記事案で言えば、被害者女性の同意が無いにもかかわらず無理矢理キスしたり、胸を触る行為等は、強制わいせつ罪が成立する可能性が極めて大きいと思われます。
強制わいせつ罪(刑法第176条)では、13歳以上の者に対して暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした場合、6月以上10年以下の懲役が科せられます。
強制わいせつ罪における「暴行」とは、正当な理由なしに、他人の意思に反してその身体等に有形力を行使することを言い、その力の大小強弱は問わず、被害者の意思に反してキスする行為や陰部等に手を触れるわいせつな行為は、その行為自体が「暴行」として強制わいせつ罪が成立することになります。
犯罪の被害者は、刑事告訴をすることが可能であり(刑訴訟第230条)、刑事告訴は、被害届の提出とは異なり、犯人の刑事処罰を求める意思表示が含まれることから、一般に、刑事告訴が提出された段階では、示談を申し出て話し合いがまとまるという可能性は低くなります。
ただし、刑事告訴は検察官を事件を起訴するまでは取り消すことが可能であるため、必ずしも示談の余地が残されていない訳ではありません。
示談金額だけでなく、様々な示談条件を提示して反省の情を示すとともに、二度と同様の行為が行われないよう誓約し、それに対する罰則を合意することで被害者の処罰感情を和らげることも期待できなくはありません。
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