盗撮事件で現行犯逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
Aさんは東京都新宿区にある職場に向かう電車内で、女性のスカートの中を盗撮しようと、デジタルカメラを起動し、女性のスカートの中に差し入れました。
盗撮されていることに気付いた女性は、Aさんからデジタルカメラを取り上げて、Aさんの腕を掴んで電車を降りました。(現行犯逮捕)そして、Aさんと共に駅員室に向かったのです。
その後、通報により到着した警視庁新宿警察署の警察官によって警察署に連行されたAさんは、東京都の迷惑防止条例違反(盗撮)で取調べを受けています。
(フィクションです)
◇盗撮行為に適用される法律(条例)◇
~迷惑防止条例(正式名称:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)~
迷惑防止条例は、各都道府県ごとに制定されており、Aさんの盗撮行為は、東京都の迷惑防止条例が適用されます。
東京都の迷惑防止条例では、公共の場所、公共の乗物、公衆場所、公衆浴場、公衆が使用することができる更衣室、公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所での盗撮行為を禁止しています。
駅や公園の公衆トイレでの盗撮がこれに当たります。
東京都内の盗撮行為で起訴されて有罪が確定すれば「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科せられます。
昨年の7月には上記に加えて
・上記以外の住居、便所、浴場、更衣室
例:学校や会社のトイレや更衣室
・不特定又は多数の人が、入れ替わる立ち替わり利用する場所・乗物
例:カラオケボックスの個室やタクシーの車内
での盗撮も規制対象となりました。
これに違反した場合も、有罪が確定すれば「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科せられます。
現在スマートフォンのカメラなど盗撮手段の小型化、高性能化が進んでおり、それに伴い盗撮の規制も強化される傾向にあります。
~軽犯罪法~
公共の場所やそれに準ずる場所以外で盗撮を行った場合、軽犯罪法に抵触する可能性があります。
軽犯罪法では、正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣室、便所その他人が通常衣服をつけないで いるような場所をひそかにのぞき見ることを禁止しています。
具体的には個人の家を盗撮すること等がこれに当たります。
違反した場合、迷惑防止条例とは違い「拘留・科料」と軽微な罰則が規定されています。
・拘留:1日以上30日未満の身柄拘束
・科料:1,000円以上10,000円未満の罰金刑
今回の電車内での盗撮行為は、「公共の乗物」で行われたものですので、(東京都)迷惑防止条例違反に当たります。
◇逮捕後の流れ◇
逮捕された場合の流れを見ていきます。
逮捕から48時間以内に警察から検察へと身柄が渡され、検察はさらに24時間以内に、裁判所に対し勾留の請求をするか否かを判断します。
検察官が勾留請求をしない、又は裁判所が勾留請求を却下した場合、被疑者はすぐに釈放されます。
しかし、勾留請求が認められた場合、最大20日間身柄を拘束されます。
逮捕時から計23日間も拘束されてしまえば、会社等に今まで通り勤務することは難しくなります。
一方、不起訴処分の場合、身柄の拘束も短期間に抑えられ、前科もつきません。
盗撮事件の初犯の場合ですと、被害者との間で示談が成立した場合は不起訴処分になるのが一般的です。