性犯罪事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
~事件~
Aさんは東京都武蔵野市のカラオケ店でアルバイトをしています。
1週間ほど前に、カラオケ店に訪れた女性のお客さんが泥酔して廊下で倒れていたので、トイレまで連れて行きました。
そしてトイレの中で、この女性の胸を触る等してわいせつな行為をしてしまいました。
トイレの中に、女性のお客さんの友達が入ってきたので、Aさんは逃げるようにしてアルバイト業務に戻りましたが、この友達に犯行の様子を目撃されていたらしく、後日、お店に苦情の電話が入りました。
Aさんは店長から事情を聞かれて、トイレに連れて行ったことは認めたものの、わいせつな行為については否認をしています。
(フィクションです)
【準強制わいせつ】
準強制わいせつ罪とは、人の心神喪失・抗拒不能に乗じ、または心神喪失・抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。
「準」という言葉から、通常の強制わいせつ罪よりも軽い犯罪と考えられることがありますが、犯行の態様で適用される法律が違うだけで、法定刑は強制わいせつ罪と同じです。
Aさんの事件を検討すると、廊下に倒れるほど酔払っていたことを考えると、被害者は心神喪失状態に陥っていたと判断されるでしょう。
その被害者をトイレに連れ込んで、わいせつな行為に及べば、準強制わいせつ罪が成立する可能性は極めて高いと言えるでしょう。
過去に準強制わいせつ罪が認められた事件としては、夜行バスの中で寝ていた女性に対してわいせつな行為を行った事件や、整骨院で施行中に、患者の服の中に手を入れた事件などがあります。
【準強制わいせつの刑事罰】
準強制わいせつ罪で起訴されて有罪が確定すれば「6か月以上10年以下の懲役」が科せられることになります。
初犯で被害者と示談が成立している場合には、不起訴処分となる可能性もありますが、そうでなければ起訴される可能性が高い事件です。
起訴された場合、執行猶予付の判決も十分に考えられますが、再犯の場合や、犯行が悪質な場合には、実刑判決が言い渡される可能性が高く、事件の内容によっては長期の実刑もあり得ます。
以前、準強制わいせつ罪は親告罪という犯罪で、被害者等からの告訴がなければ検察官が起訴できない犯罪でしたが、刑法改正により非親告罪となったため、絶対に起訴されないということは無くなりました。
それでも、被害者から被害届又は告訴がされたかどうかは、検察官が起訴するかどうかを決めるうえで重要な要素となっています。
【準強制わいせつの弁護活動】
準強制わいせつ罪は非親告罪ですので、被害者の告訴がなくても検察官は起訴できます。
それでも、被害者が告訴しているかどうかは、検察官が起訴するかどうかを決めるうえで重要な要素となっています。
そのため、準強制わいせつ罪の弁護活動は、被害者との示談が効果的となります。
被害者が告訴する前に示談を締結することができれば、当然、告訴を回避することができるので刑事事件化すらされない場合もあります。
また警察等の捜査当局に告訴された後であっても、示談をすることによって、被害者が告訴を取り下げれば、起訴を回避することができます。
Aさんの事件の場合ですと、被害者がカラオケ店に苦情を申し立てたことまで発覚していますが、警察に被害を届け出ているか否かは不明です。
何れにしても、刑事罰を避けたいのであれば、被害者への謝罪と、弁償が有効的でしょう。
早期に、弁護士を通じて被害者に謝罪することによって、被害者感情を抑えることができ示談できる可能性があるので、この様な事件でお困りの方は、一刻も早く刑事事件に強い弁護士にご相談ください。