逃走罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
警視庁池袋警察署に、殺人未遂罪で逮捕、勾留中の男性Aさん(41歳)は、勾留8日目に、検事調べのため、東京地方検察庁に護送されていました。
護送は、捜査車両に運転手の警察官と、介護の警察官2名の合計3名の警察官によって行われたのですが、警察署を出発した直後に、交通事故に巻き込まれてしまいました。
運転手の警察官と、介護の警察官の一人が車外に出てため、Aさんは、車内に残った警察官の隙をみて、この警察官を殴りつけました。
そして、手錠を着けたまま車外に飛び出して逃走したのです。
Aさんは、人ごみに紛れて逃走しようと必死に走りましたが、数百メートル走ったところで、追いかけてきた警察官によって捕まってしまいました。
※注意 この事件はフィクションです。※
警察に逮捕、勾留されたからといって、釈放されるまでずっと留置場に閉じ込められるわけではありません。
取調べは、警察署内にある取調室で行われますし、検察官の取調べのために検察庁に護送されることもあります。また、事件現場や関係先まで警察官を案内するために警察署から出ることもあります。
警察署から出ることは「護送」と言われ、護送は、一般的に捜査車両か、護送専用のバスで行われます。
昨年、警察署の留置場から逃走し犯人は、逃走途中に窃盗を繰り返しながら数か月間にわたって逃走を続けましたが、今回の事件のように護送の途中で逃走すれば、何の罪になるのでしょうか?
◇加重逃走罪◇
刑務所に服役中の受刑者や、警察署の留置場や拘置所に勾留中の被疑者、被告人等が、拘禁場若しくは拘束の器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は二人以上通謀して逃走すれば、刑法第98条に定められている「加重逃走罪」となります。
加重逃走罪で起訴されて有罪が確定すれば3月以上5年以下の懲役が科せられます。
昨年、警察署の留置場から逃走した犯人も、加重逃走罪で逮捕されているようです。
警察署の留置場から逃走した実際に起こった事件では、留置場の接見室に設置されたアクリル板を破壊して逃走していたので、加重逃走罪における「拘禁場の破壊」に該当するでしょうが、今回の事件では、介護の警察官に暴行して逃走しているので、まさに加重逃走罪における「暴行」に当たるでしょう。
ちなみに、逃走のためにした暴行行為に関しては、加重逃走罪に吸収されるので、別に暴行罪に問われることはありません。
しかし、逃走のためにした暴行によって、警察官が怪我した場合は、加重逃走罪は、傷害罪との観念的競合になり、その法定刑は、観念的競合の科刑方法に従って、重い罪の法定刑によって処断されることとなるのです。(つまり傷害罪)
◇既遂か未遂か◇
今回の事件でAさんは、護送されていた捜査車両から脱出していますが、その後、数百メートル走ったところで警察官に捕まっています。
逃走しきれていないので、加重逃走未遂罪ではないか?と思われるでしょう。
まず、加重逃走罪の着手時期は、逃走の手段である暴行行為を開始した時期です。
そして既遂(犯罪が成立する)時期は、拘禁状態から脱した時です。
今回の事件ですと、護送に使用されていた捜査車両から逃げ出した時点で、加重逃走罪が既遂に達したと考えられるので、Aさんの行為は加重逃走罪の既遂になるでしょう。
昨年は、刑務所から受刑者が逃走したり、警察署の留置場から被告人が脱走する逃走事件が相次ぎました。その影響か、警察署の留置場や、拘置所の管理体制が見直されて非常に厳しくなっていると言います。
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初回法律相談:無料
警視庁池袋警察署までの初回接見費用:35,000円