無免許運転事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
85歳になるAさんの父親は、八王子市内で独り暮らしをしています。
先日、東京池袋で発生した高齢運転手による自動車の暴走事件の報道を見たAさんは、高齢の父親に対して、最寄りの警視庁南大沢警察署に運転免許証を返納するように勧めていました。
そしてAさんの父親は、Aさんの申し出に従って約2週間前に運転免許証を返納しました。
それまでAさんの父親が使用していた車は、中古車販売店に下取りに出す予定で、その手続きをしています。
しかし、そんな最中の大雨の日、Aさんの父親は、車を運転して近所のスーパーまで行ってしまい、その帰り道で単独の物損事故を起こしてしまいました。
Aさんの父親は、目撃者の通報で駆け付けた警視庁南大沢警察署の警察官によって無免許運転で検挙されてしまったのです。(フィクションです)
◇無免許運転◇
みなさんもご存知のように、自動車を運転するには公安委員会の発行する自動車運転免許証が必ず必要で、免許証の取得を受けずに自動車を運転すれば無免許運転となります。
無免許運転は、道路交通法第64条1項に「何人も、84条1項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(中略)、自動車又は原動機付自転車(以下、自動車等)を運転してはならない」と規定されています。
罰則は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。(同法117条の2の2第1号)
◇無免許運転の種類◇
一言で「無免許運転」と言っても、その種類は以下の通り、大きく分類すると5種類あります。
①純無免許運転・・・いかなる運転免許も受けないで自動車等を運転すること
②取消無免許運転・・・運転免許が取り消された後に自動車等を運転すること
③停止中無免許運転・・・運転免許の効力が停止されている間に自動車等を運転すること
④免許外運転・・・特定の種類の自動車等を運転することができる運転免許を受けているが、その運転免許で運転することができる種類の自動車以外の種類の自動車等を運転すること
⑤失効免許運転・・・免許を受けた者が、その運転免許証の有効期間の更新をしないため失効しているのに自動車等を運転すること
◇無免許運転で検挙されると◇
まずみなさんが知りたいのが逮捕、勾留される可能性でしょう。
無免許運転は、刑事事件の中で交通事件という種類に分類されますが、ほとんどの交通事件(交通事故等)は、故意犯ではなく、過失犯です。
しかし無免許運転は、ほとんどの場合が故意犯ですので、そういった意味では悪質性があると捉えられます。
そのため逮捕されるリスクがありますが、無免許運転だけで警察に検挙された場合は、身元引受人がいて(逃走のおそれがない)、証拠隠滅のおそれがなければ、例え逮捕されたとしても、逮捕の当日か、その翌日には釈放される場合がほとんどです。
その大きな理由の一つは、勾留してまで取調べ等の捜査をすることがないからです。
無免許運転で逮捕された後に勾留される事件の例としては、無免許運転の期間が長期間に及んでいる場合や、運転していた車を人から借りている等共犯者がいる場合、無免許運転によって他人を死傷させる交通事故を起こした場合等です。
◇無免許運転の刑事弁護活動◇
まず逮捕、勾留によって身体拘束を受けている段階では、早期釈放に向けた弁護活動を行うことになります。
勾留を請求する検察官や、勾留を決定する裁判官に対して
①証拠隠滅のおそれがない
②逃走するおそれがない
ことを主張して、早期釈放を目指すのです。
そして、身体解放後は減軽を求める活動となります。
無免許運転は、被害者の存在しない刑事事件ですので、示談等の被害者対応活動を行うことができません。
そのため、再発防止と更生に向けた弁護活動を行うようになります。
所有する車を処分したり、車を運転しないよう家族に監視監督してもらうことを約束することで刑事処分の減軽を望むことができるでしょう。