・Aさんは、電車内で被害者Vさんのお尻を撫でまわしたとして、痴漢の容疑で警視庁渋谷警察署の警察官に逮捕されました…
・警視庁王子警察署から、息子が埼京線で痴漢をして逮捕されたと電話があった。何をしてよいかわからない…
痴漢をすると、どのような罪になるの? 痴漢事件はどのような刑罰が科されるの?
痴漢の容疑で逮捕・捜査された場合、
①各都道府県の迷惑防止条例違反、
②不同意わいせつ罪 に該当する可能性があります。
①各都道府県の迷惑防止条例違反の痴漢事件
▼駅や電車、バスなど「公共の場所」や「公共の乗物」で、衣服の上から又は直接に「人の身体に触れること」によって犯罪が成立します。例えば、衣服の上から胸を触った場合や、スカートの上からお尻を触った場合などです。
▼迷惑防止条例違反の場合の法定刑は、各都道府県の条例によって規定されています。
東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県の各迷惑防止条例では、
通常の場合、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされています。
常習の場合、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とされています。
②不同意わいせつ罪(刑法176条)にあたる痴漢事件
▼不同意わいせつ罪は、
ⅰ次の各号に該当する行為や,それらに類する行為によって,ⅱわいせつな行為について同意する意思を全うすることができない状態にさせて,わいせつな行為をすることを言います。
- 1号 暴行,脅迫を用いること
- 2号 心身の障害を生じさせること
- 3号 アルコールもしくは薬物を摂取させること,その状態を利用すること
- 4号 睡眠その他の意識が明瞭ではない状態にさせること,その状態を利用すること
- 5号 性交等に対して同意しない意思を示すいとま(時間的余裕)がないこと
- 6号 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ,驚愕させること
- 7号 虐待に起因する心理的反応を生じさせること
- 8号 経済的,社会的関係の地位に基づく影響があること
また,上記の1~8号に該当しない場合であっても,行為がわいせつなものではないと勘違いさせたり,行為の相手を別人物と勘違いさせたり,そのような勘違いの状況を利用してわいせつ行為をした場合も同様に不同意わいせつ罪が成立します。
更に、被害者が16歳未満の場合には、被害者の同意があったとしてもわいせつな行為をした場合にも,不同意わいせつ罪が成立します。
16歳未満の男女はより保護する必要性が高いため、手段や被害者の同意の有無を問題にしないで、犯罪が成立します。
「わいせつな行為」とは、姦淫以外の性的羞恥心を害する行為をいいます。
不同意わいせつ罪にあたる痴漢事件は、無理やり下着の中に手を入れ、性器を触るなどのわいせつな行為をした場合などです。
令和5年の改正前までは,多くの痴漢事件においては「暴行又は脅迫」があったとまでは言えない事案がほとんどでしたが,改正によって明確な「暴行又は脅迫」がなかったとしても不同意わいせつ罪が成立する場合があります。
▼不同意わいせつ罪の法定刑は、「6月以上10年未満の懲役」です。
不同意わいせつ罪には、罰金刑がありません。そのため、起訴されると正式裁判となります。
▼不同意わいせつ罪は、平成29年7月13日の改正刑法の施行により親告罪(告訴がなければ検察官が公訴を提起できない犯罪)ではなくなりました。そのため,施行前の強制わいせつ事件について,告訴がなくても検察官は公訴を提起できるようになっています。
犯罪の被害にあったものの声をあげられないという被害者への配慮から,親告罪ではなくなりましたが,告訴がない事件も全て検察官が起訴するようになるわけではありません。弁護士を通じて被害者に謝罪や被害弁償を行うことによって、当事者間で事件を解決することができれば、起訴される可能性を下げることができます。
③不同意わいせつ致傷罪(刑法181条)
▼不同意わいせつをした際に、被害者に怪我をさせてしまった場合に成立します。
判例には、傷害結果が全治1週間程度の軽度のものであっても、不同意わいせつ致傷(旧:強制わいせつ致傷)罪が成立したものがあります。ただし、下級審の裁判例では、不同意わいせつ(旧:強制わいせつ)罪の暴行に伴うごく軽微な擦り傷などについて、本罪の成立を否定したものもあります。
▼不同意わいせつ致傷罪の法定刑は、「無期又は3年以上の懲役」です。
不同意わいせつ致傷罪は重大な犯罪ですので、親告罪ではありません。そのため、被害者の告訴がなくても起訴されます。また、検察官に起訴され、刑事裁判になると、裁判員裁判となります。
~痴漢・不同意わいせつ事件における弁護活動~
1 すぐに弁護士に相談
痴漢・不同意わいせつ事件の疑いで逮捕された場合、本人が痴漢の事実を認めないときには身柄拘束が長期化します。逮捕と勾留の身柄拘束は、最長23日に及びます。痴漢・不同意わいせつ事件で逮捕された場合には、すぐに弁護士に相談してください。
身柄拘束が長期間に及ぶと、学校や会社に出勤できません。また痴漢・不同意わいせつ事件を知られてしまう可能性も高まります。社会復帰後の妨げにもなりかねませんので、早期に釈放されるよう弁護活動を行います。
2 弁護士から捜査機関や裁判所への働きかけ
痴漢・不同意わいせつ事件の容疑がかけられ捜査されている場合に、弁護士を依頼することで、逮捕を避けられる可能性があります。弁護士は、被疑者の身元がしっかりしていることや証拠隠滅などを行うおそれがないこと等をしっかりと説明します。そして、逮捕しないで在宅事件として捜査してもらうよう働きかけます。
もし痴漢・不同意わいせつ事件で逮捕されてしまった場合でも、逮捕に引き続く勾留を阻止するなどの身柄の早期解放に向けた弁護活動を行います。
3 被害者への謝罪や被害弁償・示談をする
被疑者本人やご家族が、痴漢・不同意わいせつ事件の被害者の方に合うことは困難な場合が多いです。しかし、被疑者に刑事弁護人がつくことによって、被害者が弁護士であれば会ってくれることもあります。弁護人が、被疑者から被害者へ謝罪を伝えることや被害弁償を行うことによって、示談を行うこともできます。
痴漢・不同意わいせつ事件で、示談が成立すれば、当事者間で事件は解決していることになりますので、不起訴処分を受けることも不可能ではありません。
不起訴処分になると、裁判になりません。また前科が付くこともありません。
4 刑事事件に強い弁護士が一緒に再発防止策を考える
痴漢・不同意わいせつ事件の経験豊富な弁護士は、痴漢・不同意わいせつ事件に効果的な再発防止策やご本人のカウンセリング等をご提案し、不起訴処分やより緩やかな処罰を求める弁護活動を行っていくことができます。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部の弁護士にお任せ下さい。
痴漢・不同意わいせつ事件は、迅速に適切な行動をとることによって、不起訴処分を得ることもできる可能性があります。
痴漢・不同意わいせつ事件で逮捕・勾留されたら、すぐに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部までお問い合わせください。