示談によって刑事処分が軽減された東京都内の事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇示談◇
「示談(じだん)」という言葉を耳にした方も多いかと思います。
刑事手続きにおける示談とは、簡単に言うと、被害者等に対して、謝罪、賠償し、その内容を示談書という書面によって明らかにすることです。
一般的な刑事事件における示談書には
①事件の内容
②賠償金の支払いの有無
③被害者、被疑者側双方に科せられる今後の条件
④被害者の処罰意思
が記載されています。
この示談書の内容で、刑事処分に直結するのは「④被害者の処罰意思」です。
「加害者の処罰を望みません。」とか「加害者に寛大な処分をお願いします。」といったような加害者を許す内容の被害者の処罰意思があれば、その後の刑事処分が期待できますが、そうでない場合は、刑事処分の軽減が約束できない場合もあります。
このように被害者と示談をすれば絶対的に刑事処分が軽減されるわけではありませんが、被害者が存在する刑事事件については、示談によって刑事処分が軽減される可能性が高くなりますので、刑事弁護活動において被害者等との示談交渉は非常に重要な役割となることには間違いありません。
◇示談が有効的な刑事事件◇
示談の最低限の条件として被害者が存在する事件です。
薬物事件や、道路交通法違反事件(ひき逃げ等は除く)、銃刀法違反事件のような禁制品を所持していたような事件などは、示談をする相手が存在しないので、当然、示談はできません。
示談が有効的なのは、窃盗罪や横領罪、詐欺罪等の財産犯事件、暴行や傷害等の暴力事件、痴漢や、盗撮、強制わいせつ罪等の性犯罪事件等の、被害者が存在する事件です。
公然わいせつ事件に関しては、社会的法益である性秩序を保護法益としている法律なので、実質的な被害者である目撃者は、法的には参考人として扱われており被害者が存在しませんが、参考人であっても示談をすることによって刑事処分が減軽される可能性があります。
◇示談の流れ◇
示談は被害者や、その家族と締結するのが一般的です。
すでにそういった方の連絡先等が判明している場合は、スムーズに示談交渉をスタートすることができますが、ほとんどの刑事事件では被害者の氏名や住所はおろか、電話番号等も分かりません。
そこで弁護士は、警察や検察等の捜査機関に対して被害者等の連絡先の開示を求めることから活動をスタートします。
事件の当事者に対して開示される可能性が非常に低い、被害者の個人情報であっても、弁護士に対してであれば開示が許されるケースがほとんどですので、被害者との示談を望んでおられる方は、まず弁護士に依頼するようにしましょう。
示談交渉の相手方の連絡先が開示されれば交渉を開始しますが、この交渉においては、賠償金の金額から、今後の条件に至るまで、スムーズに事件を解決させるだけでなく、お互いに不安を残さないかたちで事件を解決することを目的に、示談の条件を話し合います。
当然、示談条件は被害者側だけでなく、加害者側の条件を加えることも可能です。
そして双方が納得できる示談内容がまとまれば、示談を締結することとなります。
一般的に刑事事件における示談では、同じ示談書を2通作成し、被害者側と加害者側の双方が署名等した示談書を、それぞれが保管するようになります。
◇示談によって刑事処分が軽減された事例◇
~痴漢事件~
Aさんは電車内において、女子高生に対する痴漢事件を起こして警察に逮捕、勾留されていましたが、勾留期間中に被害者の父親と示談したことによって、勾留が取り消されて早期に釈放されると共に、不起訴処分となって刑事処分を免れることができました。
~窃盗事件~
Aさんは、職場の更衣室において、同僚のロッカーから現金を盗む窃盗事件に起こしました。会社の調査によってAさんの犯行が判明したのですが、警察に被害届が提出されるまでに被害者に対して被害弁償するとともに、弁護士が示談を締結したことによって、被害者は警察に被害届を提出することなく、刑事事件化を免れることができました。
~飲酒運転によるひき逃げ事件~
Aさんは、お酒を飲んで車を運転してしまい、その際に歩行者と接触する人身事故を起こしました。Aさんは飲酒運転の発覚をおそれて事故現場から逃走しましたが、事故から30分後に、警察に逮捕されてしまいました。Aさんが逮捕されて、1週間ほどで示談を締結することができ、ひき逃げ事件に関しては不起訴となりました。