東京都東村山市の同意殺人事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇同意殺人事件◇
東京都東村山市在住のAさんは,インターネットの掲示板でVさんによる「私を殺してほしい」という書き込みを見つけました。
Aさんは依頼に応えるようと思いVさんと連絡をとり,東京都東村山市内で落ち合いました。
そこでVさんは,自殺用の薬を自分で飲むのが怖くて出来ないのでAさんに飲ませてくれるように依頼したのです。
そしてAさんはそれに応え,Vさんに自殺用の薬を飲ませました。
しかし,怖くなったAさんは救急車を呼び,Vさんは一命を取り留めたのです。
Aさんは警視庁東村山警察署で同意殺人未遂罪の疑いで話を聞かれることになってしまいました。
(実際にあった事件を基にしたフィクションです)
◇同意殺人罪◇
刑法では,他人の命を奪う犯罪として殺人罪(199条)が規定されています。
他人の命を奪うという重大な行為ですので,殺人罪の法定刑は死刑または無期もしくは5年以上の懲役という非常に重いものになっています。
また,刑法202条では自殺関与罪・同意殺人罪として以下のように規定されています。
刑法202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ,又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は,6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。
殺人罪は被害者の同意なくして命を奪った場合に成立しますが,被害者の同意があってその人を殺害した場合には同意殺人罪が成立します。
被害者の同意に関しては,同意が社会的に相当な場合に限るとする見解が有力となっています。
◇自殺関与と同意殺人◇
自殺関与罪は自殺の教唆・幇助をした場合に成立します。
具体的な例では,自殺の方法を唆す,方法を教える,道具・場所などを提供する行為をいいます。
同意殺人罪は同意のある殺人ですので,「殺す行為」が必要です。
「殺す行為」とは,自然の死期に先立ち他人の生命を絶つことをいいます。
すなわち,行為者の何らかの行為によって直接,被害者の生命を絶つ必要があります。
そのため,自殺のために毒薬を提供することは直接,生命を絶つ行為ではないので自殺関与罪となりますが,自殺のために毒薬を飲ませる行為は直接生命を絶つ行為となるので同意殺人罪となります。
◇今回のケースでは◇
今回のケースでは,AさんがVさんに自殺用の薬を飲ませているので,Aさんの行為は同意殺人罪となると考えられます。
しかし,Aさんは救急車を呼び,Vさんは一命を取り留めていますから,Vさんを殺すという結果まで至っておらず,Aさんの行為は同意殺人未遂罪となるでしょう。
自殺関与罪・同意殺人罪の未遂は刑法203条で処罰規定が設けられていますので,未遂罪として処罰されることになります。
また,AさんとVさんはインターネットの掲示板の書き込みで知り合っただけであり,AさんとVさんの間には殺人を同意するような真摯な関係性がなかったとされる可能性もあります。
加えて,Vさんが実は本当は死ぬつもりはなく,誰かの注目を浴びるために書き込んだというような場合には,真の同意があったわけではないとして,Aさんの行為は殺人罪となってしまう可能性もあります。
同意殺人罪となるか殺人罪となるかは被害者の同意が存在したか,その同意が被害者の真意に基づく同意であったかが問題となります。
しかし,警察の取調べなどで被害者の真摯な同意があったという事を警察に認めてもらうように供述することは難しい場合もあります。
そのような場合には,事情を聞いた弁護士からどのように受け答えをすればよいか等のアドバイスを受けることが非常に重要です。
加えて,逮捕されてしまった場合には,弁護士は勾留請求がなされないように意見書やご家族の方の上申書などを検察官に提出するといった活動を通して釈放を求めていくことも考えられます。
今回のケースのような同意殺人未遂事件の場合,罪証隠滅のおそれが少なく,逃亡のおそれがないような場合には勾留されない可能性もあります。
そして,同意殺人罪は未遂であっても他人の命を奪おうとする重大な行為ですので,起訴されてしまう可能性も十分考えられます。
起訴されてしまった場合には,被害者への謝罪・弁償等の弁護活動により,執行猶予を求めていくことになるでしょう。
◇同意殺人事件に強い弁護士◇
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