【お客様の声】特殊詐欺事件で保護観察処分
◆事件概要◆
依頼者(当時高校生の男性)は、スーパーの近くに友人と遊びに行っていたところ、その帰りに警察官に捕まって警察署まで連行されて逮捕されてしまいました。
容疑は息子の部下を装って老人から200万円をだまし取ろうとした特殊詐欺事件の共犯者ということでした。ただ、依頼者はこのような話は全く聞いていませんでした(以下「A事件」といいます)。
その後、依頼者が、A事件の1週間ほど前に、暴力団関係者と思しき者に脅されて、老人の家に行って封筒を受け取り、封筒内に入っていたキャッシュカードを使ってATМでお金を引き出すという、特殊詐欺の受け子と出し子をしていたことが判明しました(罪名としては詐欺と窃盗になりますが、以下まとめて「B事件」といいます。)。
依頼者は定期試験直前だったうえ、大学入試に向けて準備をしていました。
◆事件経過と弁護活動◆
<厳しい特殊詐欺事件>
特殊詐欺事件での受け子や出し子といった末端関与者は、はっきりと犯行の内容を告げられたうえで加担しているとは限りません。
中には、知人からちょっと付き合って欲しいなどだけ言われて何も知らされずに事件に巻き込まれてしまうことも少なくありません。
このような事件では故意の有無が問題となりますが、警察官や検察官の取り調べも過酷になりがちですし、近年の裁判例では故意があったと判断されやすい傾向にあります。
また、特殊詐欺事件は、近年重大な社会問題となっていることもあって、初犯の場合でも少年院に送られる可能性が高くなっています。
<苛烈な取り調べを乗り越えて不送致>
依頼者はB事件に関わっていたことから、A事件についても分かってついて行ったのだろうと警察官から強硬に詰問され、一度は警察官の言うとおりに弁解録取を取られてしまいました。
しかし、弁護士から自分の当時の認識について正直に話すべきだと励まされ、その後の取り調べでは自分は何も知らされていなかったと正直に話すことができました。
警察官の取調べはその後も執拗さを増し、夜遅くに複数人で囲んで長時間行うこともありました。
しかし、弁護士が頻繁に接見して依頼者を励まし、また検察官に取調べに対して抗議することで、依頼者は警察官の執拗な取り調べを乗り切ることができました。
また、弁護士が当時依頼者が友人と遊んでいた現場を見分したところ、そこはスーパーからもよく見えるような場所でした。
「詐欺の手伝いをすることを知らされていれば、そのような場所で遊んでいられないのではないか。」弁護士が依頼者にそのように話すと、依頼者も自分の当時の認識に自信が持てました。
依頼者は自信をもって検察官の取り調べに向かうことができました。
その結果、検察官もA事件では依頼者に故意があったとするのは困難ではないかと判断し、A事件は家裁送致されませんでした。
<一度は少年院送致になりかけるも、試験観察から保護観察へ>
B事件については依頼者も脅されていたとはいえ実行したのは間違いなかったので、被害者の方と示談して被害を弁償しました。
しかし、少年事件では成人の事件のように被害を弁償しさえすれば十分ではありません。
少年の抱える状況を保護者ら家族がしっかりと理解して支えていけるか、学校や仕事などの健全な成長のための環境の調整ができているかどうかが、保護観察か少年院送致かを分ける重要な分水嶺となります。
警察官や検察官の取り調べへの対応と並行して、弁護士は依頼者の通う高校の校長先生と面談し、何とか学校に残れないか直談判しました。
その結果、夏期休暇期間に代理登校すれば欠席扱いにはしないとのご配慮をいただきました。
その他にも、ご家族と依頼者の抱える状況を共有し、依頼者の社会復帰の環境を調整しました。
調査官も当初は少年院送致が相当だとの意見を出していましたが、弁護士が調査官と面談し、試験観察の余地があるとの意見を付け加えてもらうことができ、審判では何とか試験観察を勝ち取れました。
試験観察は通常2,3カ月かかるところ4カ月と少し長くなりましたが、最後の審判では無事保護観察となりました。
依頼者は無事学校生活に戻ることができ、その後大学を受験して合格し、進学することができました。