新宿区の電動キックボードで人身事故,逮捕される?
電動キックボードで人身事故を起こした場合の問題点について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説します。
事例
新宿区内の会社に勤めているYさん(20歳代・男性)は,最近通勤のために電動キックボードを使い始めました。
ある日の通勤途中,Yさんは電動キックボードを運転していた際,スマートフォンの通知が鳴ったので脇見をしたところ,歩行者と接触して相手を転倒させてしまいました。
怖くなったYさんはその場から逃げてしまいましたが,しばらくたって自分が逮捕されるのではないかと不安になってきました。
≪事例は全てフィクションです。≫
・電動キックボードは「車両」になる?
2022年3月4日の報道によると,道路交通法の改正案が閣議決定されたということです。
まだ正式に国会で決まったわけではありませんが,閣議決定された内容によると,電動キックボードについては「特定小型原動機付自転車」と呼ばれることになり,扱いとしては「速度制限のある自転車」といった形になりそうです。
現在の道路交通法では,(電動)自転車も原動機付自転車(一般的に,原付バイクと呼ばれているもの)も,「車両」として扱われて様々な規制を受けてますから,今後電動キックボードについても道路交通法に従った運転が求められます。
・電動キックボードでの事故はどうなる?
Yさんの事例のように,電動キックボードでの人身事故は,今後どんな犯罪になるのでしょうか。
・・過失運転致傷罪になる?
一つ考えられるのは,過失運転致傷罪になる可能性があります。
現在,自動車やバイクの人身事故については,「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」によって犯罪になります。この法律では,「運転上必要な注意を怠り,人を死傷させた」場合,つまり過失(:わきみ,よそ見,居眠りと言った不注意)によって人身事故を起こした場合には,この法律によって処罰されることになります。
単純な過失運転致傷罪であれば7年以下の懲役又は禁錮若しくは100万円以下の罰金が科せられることになります。
今後,法改正によって,電動キックボードについても,自動車や(原付)バイクと同じように扱うべきだということになれば,同じように人身事故について過失運転致傷罪が適用されることになる可能性があります。
この点については今後の法改正次第になります。
・・過失致傷罪になる可能性大!
法改正があるまでは,(重)過失致傷罪として扱われることになるでしょう。
過失致傷罪の場合には50万円の罰金,より重大な不注意の場合には5年以下の懲役又は禁錮若しくは100万円以下の罰金が科せられます。
現在の法律でも,自転車の運転中に起きた人身事故については過失致傷罪や重過失致傷罪として扱われています。電動キックボードでの人身事故についても,当面は自転車と同じように扱われるでしょう。
・・ひき逃げになることもある
現時点ではまだ,電動キックボードは「車両等」という扱いはされていませんが,改正された道路交通法の内容によっては,「特定小型原動機付自転車」も「車両等」に含まれることになる可能性があります。
「車両等」に含まれると,電動キックボードの運転中に事故を起こしてしまった場合には,自動車やバイクの事故と同様に,報告義務や救護義務が課せられます。
人身事故であれ物損事故であれ,事故を起こしてしまった場合には最寄りの警察官へ通報する義務がありますし,警察官が現場に到着するまではその場で待っていなければいけません。事故によって怪我をした人がいる場合には,救護をしなければなりません。
これらの報告義務や救護義務を怠ってその場から立ち去ってしまうと,「ひき逃げ」や「当て逃げ」として扱われることになります。
・電動キックボードのひき逃げ事故で逮捕される?
法整備がなされて,電動キックボードが自動車やバイクと同様の車両として扱われるようになると,今後ひき逃げ事故として扱われる事例も出てくるでしょう。
ひき逃げ事件に対しては,「実際に事故の現場から逃げている」という事情から,逮捕されやすい事件です。ひき逃げが成立するのは,①事故を起こしてしまったかもしれないという認識がありながら,②果たすべき義務を果たさなかった,という場合です。
特に①事故を起こした,という認識があったかどうかという点は,実際に裁判でも問題になることが多い論点です。電動キックボードは自動車と比べれば外装がない分,「事故を起こしたかどうか分からない」という事案は少ないようにも思われますが,今後裁判でも争点になるかもしれません。
ひき逃げ事件を起こしてしまったという場合には早急に刑事事件に強い弁護士に相談の上で適切な対応を取りましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所では,車やバイクでの人身事故は勿論のこと,自転車や電動キックボードなどで人身事故を起こした場合についても無料相談を受けることができます。
東京都新宿区にて,電動キックボードで人身事故を起こしてしまった場合,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御相談ください。