Archive for the ‘刑事事件’ Category
業務上横領事件で不起訴
業務上横領事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
東京都日野市に住むAさんは、新聞販売店にアルバイト配達員として勤務していました。同販売店で集金を担当していた従業員Bが長期休暇を取ったため、店長から、「今月分だけ、Bさんに代わってAさんが集金して欲しい。」と依頼され、配達先を回って新聞代金の集金を行いました。
しかし、Aさんはそのころサラ金から多額の借金を抱えており、その返済に困っていたことから、自身が集金した現金をその返済に充てようと考え、集金した現金を持ち逃げして通常逮捕されました。
後日、Aさんは弁護士の元を訪れて、なんとか不起訴で穏便に済ませられないか相談することにしました。(フィクションです。)
◇業務上横領罪について◇
業務上横領罪は、他人の物を業務上占有する者がその占有物を横領することによって成立する犯罪です。
ここでいう業務とは、社会生活上の地位に基づいて反復又は継続して行われる事務をいい、本務たる事務、兼務たる事務、他人に代わって事実上行う事務及び慣例上本来の事務に付随して行う事務等のすべてを含むと解されています。
◇事例検討◇
事例の場合、Aさんは新聞販売店にアルバイト配達員として雇われ、主に配達業務に従事していたのであるから、集金業務はAさんにとって、本来の仕事ではありませんでした。
しかし店長から依頼を受け、臨時とはいえ集金担当のBさんに代わって集金事務を自らの仕事として行ったのですから、前述の業務に関する意義に照らすと、明らかに業務性が認められることになるでしょう。
Aさんは、新聞販売店にアルバイト配達員として勤務している者であって、たまたま、集金を担当している従業員Bが長期休暇を取ることになったので、店長に依頼されて臨時に集金を行ったもので、事例の場合、Aさんが単なる占有補助者として集金した現金を持っていた、つまり、現金に対する占有を有していないのではないかと考えることができます。
この点について、高裁判例は、見習社員として採用され、決まった仕事も与えられずに不特定の仕事に従事していた者が、上司から集金の代行を命ぜられて集金を行い、その現金を持ち逃げしたという事案について、
「被告人が正式社員でなく見習社員に過ぎなかったとしても又集金そのものが自己本来の職務でなかったとしても正当権限者からその者の職務の代行を命ぜられたものである以上…右代行によって集金した金員を横領した場合業務上横領を構成する」
と業務上横領罪の成立を認めています。
この判例は業務の意義について判示したもので、占有がどこに存在するのか直接判示したものではありませんが、上記の事案について業務上横領の成立を認めている以上、見習社員であったとしても、上司から集金の代行を命ぜられて集金を行っている場合には、その集金によって得た現金に対しての占有を有するとしています。
すなわち、占有補助者(アルバイト配達員Aさん)については、物に対する業務上の占有が常にないわけではなく、事例の場合のように、店員が店長に命ぜられて集金先から集金するような場合には、主たる占有者(店長)から独立して集金代金を事実上保管する立場にあるので、当該現金について独立の占有を有し、Aさんは業務上横領罪の刑責を負うことになるでしょう。
◇不起訴について◇
刑事事件には裁判のイメージがつきまといがちですが、実際のところ裁判に至る事件というのは全体の1割もありません。
略式起訴を合わせても起訴率は全体の3割強にとどまっており、それと家庭裁判所送致を除く全体の6割強が不起訴で終了しているというのが現状です。
検察官により不起訴処分が下された場合、その日を以って事件は終了し、よほどのことがない限り起訴などにより事件が蒸し返されることはありません。
ですので、もし不起訴の知らせを受けたら、もはやその事件に関して捜査や刑罰がなされることはないと考えてよいでしょう。
不起訴には様々な理由がありますが、代表的なものとして①起訴猶予、②嫌疑不十分、③嫌疑なしの3つが挙げられます。
まず「起訴猶予」とは、被疑者の事情、事件の内容、事件後の出来事などの様々な事情を考慮して行われる不起訴処分です。
後述のとおり、実務上最も多い不起訴の理由が起訴猶予であり、たとえば被害者と示談を締結した際などに行われるが多くあります。
次に「嫌疑不十分」とは、その名のとおり犯罪の疑いが十分でない場合に行われる不起訴処分です。
裁判で有罪を立証できるほど証拠が揃っていない場合に行われると考えられます。
最後に「嫌疑なし」とは、その名のとおり犯罪の嫌疑がない場合に行われる不起訴処分です。
例えば、捜査を行った結果別の者が犯人であると判明した場合などがこれに当たります。
不起訴の理由の中で群を抜いて多いのは起訴猶予で、その割合は起訴などを含む全事件の5割強に及びます。
仮に罪を犯してしまったのが明らかであっても、示談などその後の弁護活動次第では不起訴となる可能性は充分に考えられます。
弁護士に相談した際には、ぜひ不起訴の可能性がないか聞いてみるとよいでしょう。
東京都日野市で業務上横領罪に関する相談を含め刑事事件に強い弁護士をお探しの方、ご家族、ご友人が逮捕された方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部にご相談ください。
初回法律相談:無料
警視庁日野警察署までの初回接見費用:35,400円
様々な薬物犯罪(大麻の輸入)②
薬物事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
Aさんは東京都板橋区で、貿易業を営んでいます。
5年ほど前から商品の仕入れでヨーロッパに出張した際に、そこで初めてマリファナを使用しました。
マリファナを使用した時の快感を忘れらないAさんは、その後、海外に出張するたびにマリファナを使用するようになり、3年前からは、海外で購入したマリファナを、手荷物に隠して日本に持ち込んで、日本で密売を始めました。
インターネットの掲示板で希望者を募って、事前に代金を銀行口座に振り込んでもらい、指定されば住所にマリファナを郵送する手口でマリファナの密売をしていたAさんは、マリファナの密売でこれまで500万円ほどの利益を得ています。
海外で購入したマリファナを、海外から直接郵送することもあれば、一度、日本に持ち帰って郵送することもありました。
これまで、警察に内偵捜査されていることを知らなかったAさんは、海外から密輸入した1キロもの大麻を自宅に隠し持っており、3日前に、捜査員に踏み込まれて逮捕されてしまいました。
現在、Aさんは、半年ほど前に、東京都内の男性に大麻を密売した容疑で、逮捕、勾留されていますが、今後のことが不安で、薬物事件に強いと評判の弁護士に相談しました。
(フィクションです)
~麻薬特例法~
◇麻薬特例法とは◇
麻薬特例法とは「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」の略称です。
この法律は、薬物犯罪による薬物犯罪収益等をはく奪すること等により、規制薬物に係る不正行為が行われる主要な要因を国際的な協力の下に排除することの重要性にかんがみ、並びに規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図り、及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、薬物犯罪を規制する法律に定めるもののほか、これらの法律その他の関係法律の特例その他必要な事項を定めるものです。
◇麻薬特例法で規制されている薬物◇
麻薬特例法で規制されている薬物とは、麻薬及び向精神薬取締法で規定されている麻薬及び向精神薬、大麻取締法に規定されている大麻、あへん法に規定されているあへん及びけしがら並びに覚せい剤取締法に規定されている覚せい剤です。
麻薬特例法でいう「薬物犯罪」とは、業として行う密輸入等の罪、規制薬物としての物品の輸入等の罪、あおり又は唆しの罪等です。
◇大麻の密輸入◇
昨日、解説したように、営利の目的で大麻を外国から密輸入すれば、大麻取締法でいう、営利の目的の大麻輸入罪に抵触します。
しかし、この行為を反復継続することによって、麻薬特例法でいうところの「業として行う大麻の輸入」となる可能性が高いです。
『大麻取締法でいう「営利の目的」』=『麻薬特例法でいう「業として」』
ではありませんが、営利目的の大麻輸入事件の犯人が、麻薬特例法違反で起訴された事件があるほど、営利目的の大麻輸入と、業として行う大麻輸入は非常に近いものです。
そして、ここで大きく違うのはその罰則です。
麻薬特例法が適用された場合、その法定刑は「無期又は5年以上の懲役及び1000万円以下の罰金」が適用されます。
裁判員裁判の対象事件となる非常に厳しい法律違反です。
東京都板橋区の薬物事件でお困りの方、ご家族、ご友人が大麻の輸入事件で逮捕されてしまった方は、様々な薬物事件を専門に扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部にご相談ください。
初回法律相談:無料
警視庁板橋警察署までの初回接見費用:36,200円
様々な薬物犯罪(大麻の輸入)①
薬物事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
Aさんは東京都板橋区で、貿易業を営んでいます。
5年ほど前から商品の仕入れでヨーロッパに出張した際に、そこで初めてマリファナを使用しました。
マリファナを使用した時の快感を忘れらないAさんは、その後、海外に出張するたびにマリファナを使用するようになり、3年前からは、海外で購入したマリファナを、手荷物に隠して日本に持ち込んで、日本で密売を始めました。
インターネットの掲示板で希望者を募って、事前に代金を銀行口座に振り込んでもらい、指定されば住所にマリファナを郵送する手口でマリファナの密売をしていたAさんは、マリファナの密売でこれまで500万円ほどの利益を得ています。
海外で購入したマリファナを、海外から直接郵送することもあれば、一度、日本に持ち帰って郵送することもありました。
これまで、麻薬取締局によって内偵捜査されていることを知らなかったAさんは、海外から密輸入した1キロもの大麻を自宅に隠し持っており、3日前に、捜査員に踏み込まれて逮捕されてしまいました。
現在、Aさんは、半年ほど前に、東京都内の男性に大麻を密売した容疑で、逮捕、勾留されていますが、今後のことが不安で、薬物事件に強いと評判の弁護士を選任しました。
(フィクションです)
~マリファナとは~
「マリファナ」とは大麻のことです。
大麻には、マリファナの他に「ガンジャ」や「草」等と言った呼び名があります。
~大麻取締法~
大麻を規制している法律が大麻取締法です。
大麻取締法では、大麻の所持、譲渡、譲受、栽培、輸出入を禁止しており、その目的は、大きく「非営利目的」と「営利目的」に別れます。
Aさんの行為を検討します。
①大麻を使用する行為
大麻取締法は、覚せい剤取締法とは違い、使用に対する罰則規定がありません。そのためAさんが大麻を使用した行為は罰せられません。
②手荷物に隠して日本に大麻を持ち込む行為
大麻取締法で禁止されている大麻の輸入に当たります。
Aさんは最初、自分で使用する目的で日本に持ち込んでいたようですが、これは非営利目的の大麻輸入となり、罰則規定は「7年以下の懲役」です。(大麻取締法第24条第1項)
その後Aさんは、密売する目的で大麻を日本に持ち込んでいたようですが、これは営利目的の大麻輸入となります。
罰則規定は上記の非営利目的の輸入よりも厳しく「10年以下の懲役又は情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金」です。(大麻取締法第24条第2項)
③大麻を密売する行為
Aさんは、大麻を有償で譲渡して利益を得ています。
これは営利目的の大麻(有償)譲渡となります。
営利の目的で大麻を譲渡すれば「7年以下の懲役又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金」です。(大麻取締法第24条の2第2項)
④大麻を所持していた行為
密輸入した大麻を自宅に隠し持っていた行為は、大麻の所持罪になります。
Aさんの場合、1キロもの大麻が発見されているので、これだけの量を自己使用消費するとは考え難く、営利目的の所持罪となるでしょう。
営利目的の所持罪は、営利目的の大麻(有償)譲渡罪と同じ「7年以下の懲役又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金」が規定されています。(大麻取締法第24条の2第2項)
~関税法違反~
大麻を密輸入する行為は、大麻取締法だけでなく、税関法で定められている、輸出入が禁止されている物品の密輸入に当たります。
関税法第69条の11で、輸入してはならない貨物として大麻が規定されています。
そして同法第109条で、大麻を輸入した場合の罰則規定を「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれらの併科」と定めています。
◇明日は、麻薬特例法について解説します。◇
東京都板橋区の薬物事件でお困りの方、ご家族、ご友人が大麻の輸入事件で逮捕されてしまった方は、様々な薬物事件を専門に扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部にご相談ください。
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警視庁板橋警察署までの初回接見費用:36,200円
少年による詐欺事件
少年による詐欺事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
東大和市に住むAさんは、現在高校1年生です。
Aさんは、友達と遊ぶお金が必要でしたから、ネット上で給料のよいアルバイトを探していました。
Aさんが見つけたアルバイトは、日給1万円で、拘束時間3時間、荷物の受け渡しをするだけという非常に簡単なアルバイトでした。
Aさんとしては、非常にいいバイトを見つけたという思いもありましたが、反面、あまりにも時給がよすぎることから、何かよくないことをするのではないかという思いもありました。しかし、最終的には時給のよさにひかれ、そのアルバイトに応募することにしました。
Aさんが応募すると、指示のメールがあり、スーツを着て駅に行くように言われました。スーツを持っていなかったAさんは、父親のスーツを持ち出し、それを着た上で、待ち合わせ場所の駅に向かいました。
駅で待っていると、見知らぬ男が封筒を渡してきて、男からその封筒を別の駅のコインロッカーに入れ、鍵をその駅にいる別の男に渡すよう言われ、併せて1万円と交通費を渡されました。
その瞬間、複数の警察官が現れ、Aさんは逮捕されてしまいました。(フィクションです)
~Aさんの行為~
今回の事例は、いわゆる特殊詐欺でよくみられる光景です。
特殊詐欺は、組織の上部の人間が誰か分からないようにするため、直接お金を受け取った人物から何人かの人物を間に挟んで、お金が組織に入るような仕組みになっています。
そのため、最初にお金を受け取った人間から、リレーのバトンのようにお金が何人かの手に渡るという形になっています。Aさんのように間にいる人は、自分が何を運んでいるのかということは十分に知らされず、訳も分からないまま逮捕されるということになります。
それでは、Aさんに詐欺罪が成立するのでしょうか。
Aさんには、明確に特殊詐欺に関わっていたという認識はありません。しかし、Aさん自身、時給があまりにもよく、何かよくないことをするのではないかという思いを持っていました。また、スーツを着て荷物を受け取るというのは、特殊詐欺の手口として典型的なものです。このような事情からすれば、詐欺だと気づけたのではないかという風に言われてしまうこともあります。
この点について、最近最高裁判所が以下のような判断を示しました。
「被告人は、Aの依頼を受けて、自宅に配達される荷物を名宛人になりすまして受け取り、直ちに回収役に渡す仕事を複数回繰り返し、多額の報酬を受領している。以上の事実だけでも、Aが依頼した仕事が、詐欺等の犯罪に基づいて送付された荷物を受け取るものであることを十分に想起させるものであり、被告人は自己の行為が詐欺に当たる可能性を認識していたことを強く推認させる。」(最判平成30年12月14日)。
このような裁判所の判断からすれば、Aさんのような場合でも、詐欺だと知りながらアルバイトをしていたと判断される可能性が十分にあります。
◇特殊詐欺の少年事件◇
高い時給に誘われ、少年が特殊詐欺に関与してしまうということが多発しています。また、上記に上げたような裁判所の流れもあり、詐欺とは知らなかったという弁解が認められにくくもなっています。
このような状況で、詐欺に関与してしまった少年にはどのような処分があり得るのでしょうか。
少年の事件が警察で取り扱われた場合には、基本的には全件家庭裁判所に事件が送致され、少年は家庭裁判所での審判を受けることとなります。
そして、少年に言い渡される処分は①検察官送致②少年院送致・児童自立支援施設送致③保護観察④不処分というものになります。
今回のようなAさんの場合には、事情にもよりますが、保護観察で済むことも考えられますが、少年院送致となる可能性も十分にあり得るところです。
少年が特殊詐欺に関与してしまった場合には、最終的な収容処分を回避するため、少年本人の反省を促すことや、被害者の方にお金を返金するなどといったことが必要となります。
東大和市で、少年による詐欺事件に強い弁護士をお探しの方、未成年のお子様が警察に逮捕されてしまった方は、少年事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部にご相談ください。
初回法律相談:無料
警視庁東大和警察署までの初回接見費用:37,300円
刑の言い渡し
刑の言い渡しについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
刑事裁判では、有罪判決の場合には、裁判所から刑が言い渡されますが、刑の重さを決めることを量刑と呼んでいます。刑の重さについては刑法等で定められていて、その範囲内で刑の重さが決められることになります。
例えば、詐欺罪では「10年以下の懲役」と定められています。
このように刑には幅が広く定められていることが通常です。
その範囲内でどのくらいの量刑にするのかは裁判官の判断に任せられているのです。
刑事裁判における量刑は、被告人の性格や経歴、被害の大きさ、犯行の動機、目的などすべての事情を考慮して決定されることになります。今日は、量刑について解説します。
◇犯行そのものに対する量刑の事情◇
~動機・計画性~
例えば、窃盗罪で、空腹を満たすために食料を盗んだ場合と、転売し換金目的で盗んだ場合では動機が違います。
また、事前に十分な計画や入念な準備をして行った犯行と相手方の行動に触発されて突発的に行った犯行とは異なりますので、量刑が違ってくるでしょう。
~犯行の手段、方法、態様~
例えば、傷害罪でいうと、どのような手段や方法による暴行であったか(例えば、拳で殴りつけたのか、バットなどの凶器で殴ったのか等)、また、態様として、単発の暴行や執拗な暴行であったか等が考慮されます。
さらに、共犯か単独なのか、共犯の場合は、主犯格なのか、ただ、従属的に従ったまでのことかが問題となります。
身体に対する犯罪を例に挙げましたが、財産やその他に対する犯罪でも犯行の手段、方法、態様にそれぞれ違いがあり悪質であればあるほど量刑が重くなることが考えられます。
~結果の大小・程度・数量、被害弁償~
被害が大きいほど量刑も重くなる方向に働きます。
例えば、窃盗罪では、盗まれたものが現金1万円か数千万円の貴金属かなど被害金額が大きくなればなるほど刑が重くなる方向に働きますし、傷害罪では、怪我が全治2週間か全治6か月かなど怪我の程度が重いほど刑が重くなる方向に働きます。
また、犯行によって失われた被害や損害がどの程度回復したかも重要な判断基準となります。
◇被告人の性格や職業◇
被告人の性格からみて取れる反社会性や常習性、粗暴性などは、量刑事情に影響を及ぼします。
また、被告人の年齢や経済状態、定職に就いているかどうかなども量刑に影響します。
たとえば年齢が若ければ、更生の見込みがあるという点で有利に作用することもあります。
◇前科・前歴◇
比較的軽微な犯行(例えば被害額が数百円の万引き)であっても、それが繰り返されると、量刑が重くなっていくものです。
また、同種の前科前歴があれば、再犯のおそれありということで、情状が悪くなります。
前科に関しては、刑の言い渡しが失効した後も量刑事情としては考慮されることとなっています。
◇余罪◇
起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、処罰する趣旨で量刑の資料とすることは許されないと考えられています。
余罪を処罰するための量刑の資料としてならない理由は、余罪はいまだ厳格な裁判手続を経ておらず、裁判に耐えうるだけの十分な証拠の裏付けがない場合もあるからです。
ただし、被告人の性格、経歴等を推し量るための資料として使用することはできると考えられています。
◇反省と自白◇
反省は更正の可能性を判断する事情の一つであると位置付けられるのでしょう。
反省は内心のことであるからよく分からないと思われてしまうので、反省していることを推測させる客観的事情と併せて主張すべきなのでしょう。
みなさんは、警察官による取調中に、取調室で自白をしたら刑がかなり軽くなると思ってしまうでしょう。しかしながら、それは端的に間違いです。黙秘権は憲法上の権利です。
否認や黙秘をすること自体は、検察官に対する対立当事者として正当な防御活動です。
しかし、証拠上、明白な事実に対して、不合理な否認・不合理な黙秘を続けた場合には、否認をしたことや黙秘をしたこと自体ではなく、その公判廷での態度からみて取れる反省のなさや再犯のおそれを量刑上不利に考慮されることはあります。
弁護士と相談してどのような供述態度を示すべきか総合的な判断をするべきでしょう。
東京で量刑に関する相談を含め刑事事件に強い弁護士をお探しの方、ご家族、ご友人が逮捕された方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部にご相談ください。
初回法律相談:無料
銀行口座の不正開設
銀行口座の不正開設について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
東京都武蔵野市に住むAさんは,お金に困っていたことから,いわゆる闇金にお金を借りることにしました。
闇金に借りた金額は,30万円とそれほど大きい金額ではなかったのですが,利子が非常に高かったこともあり,最終的には支払いが滞るようになりました。
そのような状況で,Aさんは,闇金の担当者から「今の状況では,いつまでたっても返済できないだろう。銀行で口座を開設してきて,それを郵送してくれたら借金をチャラにしてやる」と言われました。
この話に乗るしかないと考えたAさんは,最寄りのB銀行に行き,A名義で口座を開設し,通帳とキャッシュカードの交付を受けました。
そして,通帳とキャッシュカードを指定された住所に送ると,それから借金の返済の催促がなくなりました。
しばらくすると,警視庁武蔵野警察署からAさんのところに連絡があり,「あなたの口座の件で話が聞きたいから一度警察に来てくれ」と言われてしまいました。
(フィクションです)
◇Aさんに成立する犯罪◇
Aさんは,最初から自分で口座を使用するつもりがなく,第三者に譲渡するつもりであったにもかかわらず,そのようなことを言わずに銀行口座を開設しています。
キャッシュカードや,通帳の説明文をよく読むと記載がある場合もあるのですが,銀行などでは,銀行の許可がない口座の譲渡等を禁止しています。
そのため,もしAさんが本当のことを銀行の窓口職員に話していれば,銀行の職員は口座開設の手続きを進めなかったということができます。
このような場合には,人をだまして通帳やキャッシュカードを取得したと言えますから,刑法にある詐欺罪が成立することになります。
今回のような事例と異なり,もともとは自分で使用するつもりで口座を開設し,その後Aさんと同じように口座の郵送を求められ,それに応じて郵送したような場合には,犯罪による収益の移転防止に関する法律(通称犯収法)違反の罪が成立する可能性が高くなります。
◇口座譲渡の取調べ対応◇
先ほど述べた通り,最初に口座を開設した時点でどのような意図があったかによって成立する罪名が異なる可能性があります。また,詐欺罪には罰金刑が無いのに対し,犯収法には罰金刑の定めがあります。
罰金刑がある場合には,略式手続が選択される可能性があります。略式手続とは,罰金刑の前科が必ず付きますが,一般的に想像されるような裁判ではなく,書類のみが裁判官の所へ運ばれ,裁判所から略式命令という書類が郵送され,後日検察庁に罰金を納付しに行くというような,簡単な手続のことをいいます。
口座譲渡は,ほとんどの場合犯罪になることが否定できません。ただし,どのような罪名で処理されるかは,最終的な処分に大きな影響を与える可能性があります。そして,先ほど述べた通り,罪名選択のポイントは,口座開設の際の意図ですから,警察や検察といった捜査機関に対して,開設当時の認識等をしっかりと主張していくことが必要になります。
◇口座譲渡の弁護活動◇
口座譲渡をしてしまう方の中には,Aさんと同じように闇金などに手を出して,自らも違法な金利等によって苦しんでおられる方もおられます。
検察官が起訴するかどうかを判断する際には,犯罪の動機など,一切の事情を考慮した上で決定されます。
そのため,検察官に対し,今回の事件の動機や,原因,自らの責任の程度など,最終的に処分を決めるにあたって,自分に有利な事情をしっかりと主張できれば,事案の性質によっては,起訴猶予になる可能性も十分感がられます。
東京都武蔵野市の刑事事件でお困りの方、銀行口座の不正開設で警察の捜査を受けている方は、刑事事件を専門に扱っている「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部」にご相談ください。
初回法律相談:無料
セクハラと刑事事件
セクハラについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
~事件~
東京都葛飾区の不動産会社に勤めるAさんは、会社で営業部長の職にあります。
Aさんには、10名の部下がいますが、その中でも昨年4月に新卒で採用した女性社員のことを気に入って親しくしていました。
この女性社員も、Aさんに対して非常に親しく話しかけてくることから、Aさんは、女性社員と相思相愛だと思い込んでいました。
最初は、指導する際に軽く身体に触れる程度でしたが、徐々にAさんの行動はエスカレートしていき、先週行われた営業部の新年会では、酒に酔った勢いも手伝って、女性社員にキスをしたり、スカートの中に手を入れてしまいました。
その翌日、女性社員は欠勤し、Aさんのもとには「セクハラで訴えます。」と女性社員からのメールが届きました。
Aさんは、女性社員への一連の行為がセクハラに当たり会社から何らかの処分がくだることは覚悟していますが、これらの行為が刑事罰の対象になるのか不安です。、
(フィクションです)
◇セクハラ◇
セクハラとは、セクシュアルハラスメントの略称のことで、性的な嫌がらせや相手の意に反する性的な言動によって不利益を受ける職場でのハラスメントです。
厚生労働省は
①職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型セクシュアルハラスメント)
②性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること(環境型セクシュアルハラスメント)
と、セクハラを定義しています。
一昔前からセクハラが社会問題化されて、行き過ぎたセクハラ行為が刑事事件化するケースも少なくありません。
◇セクハラが刑事事件化されると◇
セクハラ行為で成立する犯罪として考えられるものとしては
~強制わいせつ罪等~
相手の体を触ったり、今回の事例の様に急にキスをしたりといった場合には強制わいせつ罪となってしまう可能性があります。
そして、性交渉を迫ったような場合は強制性交等未遂となってしまうことがあります。
~準強制わいせつ罪等~
相手が酔っていたり、断れない状態に追い込んだりして、わいせつ行為や性交渉を行った場合は準強制わいせつ罪、準強制性交等罪となります。
~傷害罪~
度重なるセクハラ行為で相手が、うつ病などの精神疾患を発症すれば、傷害罪となってしまう可能性があります。
セクハラ行為と、病気との因果関係を裏付けることは困難でしょうが、それが立証された場合は、傷害罪が適用されるおそれがあるでしょう。
過去には、故意的に騒音を発して、相手をノイローゼに陥らせたとして、傷害罪の成立を認めた判例があります。
~強要罪~
相手に義務のないことを強要したとして強要罪となる可能性があります。
このほかにも侮辱罪や各都道府県の東京都の迷惑防止条例違反など、セクハラ行為は、あらゆる法律の適用を受けて、刑事罰が科せられる可能性があります。
◇刑事弁護活動◇
セクハラは被害者が被害届を出すことで刑事事件化することが多いです。
そこで、被害者の方と示談を締結し、被害届を取下げてもらうことができれば、不起訴処分となる可能性が大きくなります。
しかし、性的被害を受けた被害者の処罰感情は非常に強く、加害者本人からの示談を受け入れてもらえる可能性は非常に低いでしょう。
そこで、セクハラ被害者との示談交渉は、刑事事件専門の弁護士に依頼することを、お勧めします。
弁護士を通じて交渉することで、被害者との示談を締結できる可能性が高まり、刑事罰を回避できる可能性が生じます。
また、早期に刑事事件専門の弁護士を介入させることで、起訴されて、正式な裁判を受けることになったとしても最終的な刑事処分を軽減することができます。
東京都葛飾区の刑事事件でお困りの方、自身のセクハラ行為が刑事事件に発展する可能性のある方は、事件の早期解決を目指す「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部」の刑事事件専門の弁護士にご相談ください。
初回法律相談:無料
掲示板への書き込みによる名誉毀損罪
名誉棄損事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
~事件~
東京都文京区に住む私立大学生のAさんは、インターネットを利用して洋服を購入しましたが、事前にインターネットに掲載されていたのとは全く別のデザインの洋服が自宅に届いたので販売会社に問い合わせをしました。
すると販売会社の担当者から、「インターネットの画像はサンプルで、実際の商品と異なる旨を明記しています。」と言われ、返品の要求にも応じてもらうことができませんでした。
腹が立ったAさんは、インターネットの掲示板や、販売会社のホームページにある掲示板に、「詐欺商法!全国に被害者続出!粗悪品販売会社!」等の書き込みをしました。
Aさんが書き込んだ掲示板は、誰でも閲覧できる掲示板です。
販売会社が、警察に届け出たことから事件化されて、Aさんは名誉毀損罪で警視庁大塚警察署に呼び出されました。
(フィクションです)
◇名誉毀損罪◇
刑法第230条に名誉毀損罪が定められています。
この条文によりますと「公然と事実を適示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と明記されています。
まず「公然と」とは、不特定多数人が認識できる状態を意味しますので、Aさんが書き込んだインターネットの掲示板は、誰でも閲覧可能な掲示板なので、公然性は認められるでしょう。
続いて「事実を適示」についてですが、ここでいう事実は真実である必要はありませんが、内容については、人の社会的評価を害する、ある程度具体的なものでなければならないとされています。
事実の適示がされたか否かは、その有無によって名誉毀損罪と侮辱罪とが区別されることもあるので非常に重要な問題です。
ちなみに侮辱罪の罰則規定は「拘留又は科料」ですので名誉毀損罪の罰則規定と比べると非常に軽いものです。
また名誉毀損罪は親告罪ですので、被害者等の告訴権者の告訴がなければ起訴を提起できません。
◇インターネット掲示板の書き込み◇
インターネット上の掲示板やSNSに相手を誹謗する書き込みをした場合、その内容によっては名誉毀損罪に該当する可能性があります。
名誉とは、対象となる人・会社・団体等の真価や社会的地位等を指し、名誉毀損の対象となるのは社会的地位や評判です。
インターネットの書き込みは匿名ということもあり、普段よりも攻撃的になってしまう場合があり、不適切な書き込みが刑事事件化されることも少なくありません。
またインターネット掲示板への不適切な書き込みは、名誉毀損罪に該当しない場合でも、侮辱罪や偽計業務妨害罪等の法律に抵触する可能性があります。
◇名誉毀損の弁護活動◇
名誉毀損罪は親告罪ですので、その弁護活動としては、被害者との示談が効果的です。
上記したように、名誉毀損罪で起訴されて有罪が確定すれば「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」が科せられることになりますが、警察に通報される前であれば、示談することで刑事事件化を防ぐこともできます。
また、捜査機関が介入して、家宅捜査や逮捕された場合でも、示談することで早期の釈放が望めたり、最終的な刑事処分が軽くなる可能性が出てきます。
東京都文京区で刑事事件に強い弁護士をお探しの方、名誉棄損罪の弁護活動を得意とする弁護士をお探しの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部にご相談ください。
初回法律相談:無料
東京都文京区を管轄する警視庁大塚警察署までの初回接見費用:35,800円
リベンジポルノ防止法違反で示談
リベンジポルノ防止法について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
東京都内で歯科医をしているAさんは、先日、3年もの間交際していた女性から別れを告げられました。
何度も復縁を迫りましたが願いが叶わなかったAさんは、元交際相手に対して憎しみを持つようになり、交際していた時に撮影し、自らのスマートフォンに保存していた元交際相手との性交渉の画像をインターネットの無料掲示板に投稿しました。
その画像は、顔にモザイクを入れることなく、知人が見れば元交際相手だと特定できるものでした。
元交際相手が、警視庁代々木警察署に被害届を提出したことを知ったAさんは、投稿した画像を削除しました。
Aさんは刑事罰を免れたく、東京で被害者との示談交渉に強いと評判の弁護士に、元交際相手との示談を依頼しました。
(フィクションです。)
◇リベンジポルノ防止法◇
リベンジポルノ防止法とは、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律の略称です。
リベンジポルノ防止法は、個人の名誉及び私生活の平穏の侵害による被害の発生またはその拡大を防止することを目的にしています。
ここでいう「名誉」とは、人に対して社会が与える評価としての外部的名誉を意味します。
また「私生活の平穏」とは、性的プライバシー、すなわち性に関する私生活上の事柄をみだりに公開されない権利を意味します。
~私事性的画像記録~
私事性的画像記録とは
①性交又は性交類似行為に係る人の姿態
②他人が人の性器を触る行為又は人が他人の性器を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮又は刺激するもの
③衣類の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されるものであり、かつ性欲を興奮又は刺激するもの
で、その姿態が撮影された画像に係る電磁的記録その他の記録をいいます。
ちなみに、撮影された人が、他人が閲覧することを認識した上で、撮影に承諾して撮影された画像については対象となりません。
リベンジポルノ防止法は、元交際者や元配偶者の性的な画像等を、撮影対象者の同意なく、第三者が撮影対象者を特定できる方法で、インターネットの掲示板等に公表する行為を禁止しています。
撮影対象者を特定できる方法とは、顔が写っている事は当然の事、背景として写っている物から特定できたり、公表された画像に添えられている文言等、画像以外から特定できる場合も含まれます。
対象となる画像については、上記のように性交又は性交類似行為、性器を触っている画像、裸や衣類を着けていても性欲を刺激する内容等様々です。
ちなみにAさんの行為は、リベンジポルノ防止法第3条第1項に抵触し、起訴されて有罪が確定した場合は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられます。
◇示談活動◇
リベンジポルノ防止法に関わらず、あらゆる刑事事件の弁護活動において、少しでも処分を軽くするには、被害者と示談する事が、最も有効的な手段です。
一般的な刑事事件における示談では、被害者に被害弁済や謝罪する事によって、刑事事件を起こした人を許してもらう事となるのですが、示談を締結する際に、被害者から様々な条件を提示される事もあり、条件が合わずに示談が決裂するケースもあります。
そんな交渉で活躍するのが、刑事事件に強い弁護士です。
弊所の弁護士は、これまで様々な刑事事件の弁護活動をこなしており、その中で数多くの示談を締結してまいりました。
リベンジポルノ防止法違反で起訴された場合は、初犯であれば略式罰金となる可能性が高いですが、犯行形態や、被害者感情によっては、初犯でも正式裁判となって執行猶予付の判決となる事もあります。
そんな最悪の事態を避けるために、リベンジポルノ防止法でお悩みの方は、一刻も早く、示談に強い弁護士にご相談ください。
東京都内で示談に強い弁護士をお探しの方、リベンジポルノ防止法違反で示談を希望されている方は、刑事事件を専門に扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部にご相談ください。
初回法律相談:無料
警視庁代々木警察署までの初回接見費用:35,000円
現住建造物等放火罪で再逮捕
放火事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
会社員A子さんには、2年前から交際している男性がいましたが、数ヶ月前から痴話喧嘩が絶えず2ヶ月ほど前に別れました。
別れた直後にA子さんは、男性に対する嫌がらせで、東京都杉並区の男性が住んでいるアパートの室内に火を付けました。
隣人の通報で駆け付けた消防によって消火され、被害は床の一部を焼損するにとどまりましたが、警視庁杉並警察署が、現住建造物等放火事件で捜査を開始しました。
そしてA子さんは放火した3日後に、友人の家に居たところを、警察官に発見され、警察署に任意同行された後、犯行を自供したことによって緊急逮捕されてしまったのです。
その後A子さんは、勾留されましたが、この20日間の勾留中に、刑事罰を受けるかもしれない恐怖から、自供を覆して、否認をし始めました。
その結果A子さんは嫌疑不十分の理由で釈放となったのですが、釈放となってから1か月ほど経過して、再びA子さんは、同じ現住建造物放火事件の容疑で再逮捕されてしまいました。(フィクションです)
既に逮捕、勾留された後に釈放された事件で、再逮捕されることはあるのでしょうか?
東京の刑事事件に強い弁護士が解説します。
~同一の犯罪事実での再逮捕の可否~
刑事訴訟法第199条第3項に、検察官や司法警察員が裁判官に対して逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実について、以前にその被疑者にかかる逮捕状を請求又は発付があった時は、その旨を裁判所に通知しなければならない旨が規定されています。
検察官や、司法警察員は、逮捕状請求書という司法書類によって裁判官に対して、被疑者の逮捕状を請求します。
この逮捕状請求書に、同一犯罪事実について前に逮捕状の請求又はその発付があった旨を明記していれば、同一犯罪事実について2回以上逮捕状を請求することも、これを発付することも認められているのです。
ただ同一犯罪事実で何度も逮捕できるのであれば、逮捕、勾留の期間が法律によって厳格に定められている趣旨に反することになります。
この点については、判例では、逮捕が不当に反復されない限り、再逮捕及びこれに基づく勾留請求は適法であるという見解を示しています。
ここでいう「不当に」とは
・最初の逮捕、勾留期間中に捜査が尽くされているか。
・嫌疑不十分で釈放となった後に新たな証拠が判明しているか。
・任意捜査によって真相の究明が困難であるかどうか。
等によって総合的に判断されるもので、先の勾留期間中に適切な捜査が行われておれば、当然、発覚したであろう証拠なのに、これが行われなかったために再逮捕を要することになれば、逮捕権の濫用と捉えかねません。
これらのことを総合的に判断すれば、同一の犯罪事実で再逮捕することは、法律的にはあり得ることですが、再逮捕するには、捜査機関はそれなりの理由が必要だということです。
A子さんの事件の場合ですと、最初の逮捕、勾留期間中には発覚しえなかった、A子さんが被疑者であることを裏付ける何らかの客観的な証拠が必要になるでしょう。
~嫌疑不十分で不起訴となった事件を改めて起訴できるのか~
嫌疑不十分による不起訴処分というのは、検察官の内部的意思決定にすぎず、外部に対して確定裁判における確定力のような効力を生じさせるものではありません。
これについては、過去の判例でも、検察官がいったん不起訴にした犯罪を後日起訴しても、その公訴提起は、一事不再理の原則(憲法第39条)に何ら違反しない旨が明言されています。
したがって、嫌疑不十分で不起訴となった事件であっても、後になって新たな証拠を発見したり、処罰を必要とする事情を発見した場合には、時効が完成していない限り、捜査機関は、これを再起して所要の捜査を遂げることができ、その結果をもって検察官は、改めて起訴することができます。
つまりA子さんについても、再逮捕、勾留によって新たに証拠が出てきた場合は、起訴される可能性があるのです。