千葉市の窃盗事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
無職のAさんは、千葉市内にあるショッピングモールの駐車場で、キーが差さったままになっている車を見つけました。
この車の助手席の上にカバンがあるのを見つけたAさんは、金目のものはないかと思い、車内に入って物色を始めましたが、車の持ち主が戻ってきてしまったのです。
被害者に顔を見られたAさんは、そのまま車のエンジンをかけて車ごと盗んで逃走しました。
その直後に、ショッピングモールから数百メートル離れたところまで逃げたAさんは、複数台のパトカーがサイレンを鳴らしてショッピングモール方向に急行しているのを見ました。Aさんは、大事になっているのではないかと不安になり、様子を見るために車を運転してショッピングモールの駐車場にもどったのです。
そしてショッピングモールの駐車場に、盗んだ車で入ったAさんは、被害者に見つかってしまい、側にいた警察官によって窃盗罪の容疑で現行犯逮捕されてしました。
(フィクションです。)
新聞や、テレビ等のニュースで「逮捕」という言葉をよく耳にしますが、一言に「逮捕」と言いましても、法律的に「逮捕」は、裁判官の発した逮捕状をもとにできる通常逮捕、一定の重い罪を行った犯人に対して緊急性のある場合にだけにできる緊急逮捕、そして今回の事件でAさんがされた現行犯逮捕の3種類があります。
そこで本日は現行犯逮捕について刑事事件に強い弁護士が解説します。
◇現行犯逮捕◇
現行犯逮捕は、現に罪を行っている犯人又は現に罪を行い終わった犯人にしかできません。
現行犯逮捕と、通常逮捕や、緊急逮捕との大きな違いは
①誰でも犯人を逮捕することができる。
②裁判官の発する逮捕状なしで逮捕することができる。
※通常逮捕の場合は逮捕時に逮捕状が必要であり、また緊急逮捕の場合は、逮捕後に裁判官に逮捕状を請求しなければならない。
という点で、これが現行犯逮捕に認められた特例ともいえます。
現行犯逮捕は、逮捕者が犯人の犯行を目撃している場合や、現場の状況や目撃者の証言によって犯人であることに間違いがない場合にだけ行われるので、誤認逮捕の可能性が極めて低いことから、上記のような特例が認められているのです。
10年前にはなりますが、平成20年度に警察庁が発表した記録によりますと、全国の警察署等で逮捕された犯人の約40パーセントが、現行犯逮捕によるものだったようです。
当然、現行犯逮捕された犯人の中には、警察官に逮捕された犯人だけでなく、偶然犯行を目撃したりした一般人によって現行犯逮捕された犯人も含まれています。
◇準現行犯逮捕◇
現行犯逮捕できる条件は①「現に罪を行っている犯人」と②「現に罪を行い終わった犯人」と限定されています。
被害者や、目撃者が犯行を目撃し、その場で犯人を逮捕する場合が①に該当するので、わかり易いですが、②の「現に罪を行い終わった」については、明確な判断基準が設けられているわけではありません。
そこで現行犯逮捕の幅を広げるために、法律では「準現行犯逮捕」という規定があります。
準現行犯逮捕とは、罪を行い終わってから間がないと認められる場合において、以下の何れかの要件を満たす場合に許される、みなし現行犯逮捕です。
~準現行犯逮捕の要件~
①犯人として追呼されているとき
②贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる凶器その他の物を所持しているとき
③身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき
④誰何されて逃走しようとするとき
◇現行犯逮捕の例外◇
現行犯逮捕は、裁判官の令状なくして、誰でも行うことができますが、どのような犯罪を犯した犯人にでもできるわけではありません。
刑法犯については、30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる軽微な犯罪を犯した犯人については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合か、犯人が逃走するおそれがある場合にしか現行犯逮捕できないのです。
◇現行犯逮捕されたら◇
逮捕された犯人は、身体を拘束され、外部との連絡を絶たれる等の自由が奪われてしまいます。これは人のプライバシーを侵害する重大な行為ですので、その逮捕が適法であるか否かをしっかりと検討する必要があります。
違法な逮捕手続きによって身体拘束を受けた場合、その後の刑事手続きが無効になる場合もあり、その場合は、裁判において無罪判決を獲得する可能性もあるのです。
ですので現行犯逮捕された方は、早急に、刑事事件に強い専門の弁護士に相談することをお勧めします。