千葉市の脅迫事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
Aさんは、千葉市でゲームセンターを経営しており、このゲームセンターに大手食品メーカーの自動販売機を設置しています。
半年ほど前から、この自動販売機に硬貨が詰まる等の故障が頻発するようになり、これまで何度もメーカーの担当者を呼び寄せて修理してもらっていました。
Aさんは故障を繰り返すことから、メーカーの担当者に自動販売機の交換を要請していますが、契約期間が残っているとの理由から応じてもらえません。
そして先日、お客さんから再び「硬貨が詰まって商品が出てこない。」との苦情を受けたAさんは、担当者に修理を依頼したのですが、担当者が「今日は対応できないので、明日の修理になる。」と断られてしまいました。
担当者の対応に腹が立ったAさんは、メーカーの事務所に電話して、対応した事務員に対して「すぐに修理に来い。すぐに来んかったら、事務所に火ぃつけるぞ。」とすごみました。
この行為が脅迫罪に当たるとして、メーカーの顧問弁護士から刑事告訴する旨の通知を受けたAさんは、千葉市の刑事弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
◇脅迫罪◇
刑法第222条
1 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
脅迫罪は個人の自由に対する罪です。
脅迫罪は、危険の発生を必要としない危険犯で、害悪を加えることが相手方に告知されたときに既遂に達するもので、未遂罪は存在しません。
脅迫の主体に制限はなく、客体は自然人である必要があります。
ちなみに、幼児や、精神病者等のように告知された内容を理解し得ない者に対する脅迫罪は成立しません。
ちなみに脅迫は、相手を畏怖させる目的で害悪を告知する必要がありますが、実際に相手方が畏怖したかどうかは、脅迫罪の成立を左右しません。
害悪を告知する方法に制限はありませんので、Aさんのように電話で告げる場合は当然のこと、文書で送りつけても脅迫罪は成立します。
害悪の内容は、人を畏怖させるのに足りるものでなければならず、相手方の境遇や、年齢、その他の事情を考慮して脅迫に該当するかどうかが判断されます。
また、言語による脅迫場合は、口にした内容だけでなく、告知者の態度や、人柄、その他の状況を考慮して脅迫に該当するかどうかが判断されます。
ちなみに脅迫罪は故意犯ですので、その成立には故意が必要となります。
脅迫罪の故意とは、行為者が告知内容を認識し、それによって人を畏怖させようとする意思です。
◇脅迫事件の弁護活動◇
口論の末に思わず口にしてしまった一言であっても、その内容によっては、脅迫罪が成立する可能性があるので注意しなければなりません。
脅迫事件の刑事弁護活動では、被害者との示談交渉が優先されるでしょう。
脅迫事件の被害者のほとんどは、脅迫行為によって身の危険を感じ、安心な生活が保障されないことから、警察に被害を訴えています。
そのため被害者に対して謝罪し、脅迫行為によって生じた被害を弁償するだけでなく、被害者が心から安心して生活することができる具体的な提案をすることで示談が締結されやすくなるでしょう。
被害者との示談が成立すれば、被害届の取り下げや、告訴の取り消しによって不起訴処分が十分に望めますが、逆に、被害者との示談が成立しなかった場合には、初犯であっても罰金刑などの刑事処分が科せられる可能性があるでしょう。