痴漢事件の警察捜査について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
会社員のAさんは通勤で電車を利用していますが、昨夜、帰宅のために利用した電車は満員でした。
そして自宅の最寄り駅で電車を降りようとしたところ、Aさんは、前に立っていた女性に「あなた痴漢したでしょう。」と言われて手を掴まれ、駅長室に連れていかれました。
Aさんは「やっていない。」と言っていますが、駅長が呼んだ警視庁三田警察署の警察官によって、警察署に連行されました。
Aさんは警察署で、刑事さんの取調べを受けましたが、痴漢の容疑を否認しています。
取調べを終えたAさんは、刑事さんから「今後も警察署に呼び出すので出頭するように。」と言われました。
Aさんは、今後、どのような捜査が行われるか不安で、東京の刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
◇警察の捜査◇
~取調べ~
痴漢事件のような刑事事件において、犯人(被疑者)が警察署で受ける捜査は、警察官の取調べがメインとなります。
基本的に取調べは、取調べと言われる密室で、取調官と一対一で行われます。(補助官が同席して一対二の場合もある。)
法律的な根拠はありませんが、捜査情報の漏洩を防止するという観点から、取調べを録音することは許可されません。(一定の重い犯罪の被疑者として取調べを受ける場合は、専用の機材を用いて録音録画される。)
取調べにおいて供述した内容は、取調官が「供述調書」という司法書類に記載して文章になります。
そして、完成した供述調書を読み聞かせられた上、実際に供述者本人が内容を確認して、署名、指印(押印)することによって、供述調書が完成します。
当然、内容を確認した時に訂正を申し出ることができますし、納得ができなければ署名、指印(押印)を拒否することもできます。
~再現見分~
事件の内容にもよりますが、取調べによって犯行状況が明らかになれば、犯行状況の再現見分が行われます。
警察官が被害者役をして、どの様に犯行に及んだのかを再現し、その状況を警察官が写真撮影するのです。
再現見分の目的は、犯行状況を明らかにすることですので、普通は、犯行時の状況が細かく再現された場所で再現見分は行われますが、実際の犯行場所において、再現見分が行われる場合もあります。
~引き当たり捜査~
警察官を犯行場所や、事件関係先に案内することを、引き当たり捜査と言います。
再現見分と同じように、警察官を案内している状況などを写真撮影されます。
~その他~
被疑者指紋やDNAを採取されたり、被疑者写真を撮影される他、否認している場合は、ポリグラフ検査をされることもあります。
ポリグラフ検査とは、俗に言われる「うそ発見器」のことですが、この検査は、強制ではなく任意ですので、拒否することができます。
◇注意点◇
上記したような警察で行われる捜査は決して強制されるものではなく、拒否することもできます。
そこで、取調べにおいて被疑者(捜査を受ける人)に与えられている権利をいくつか紹介します。
~黙秘権~
取調官は、取調べを始めるにあたって、被疑者に対し、自己の意思に反して供述する必要がない旨を告げる必要があります。あなたは、取調中は終始沈黙(黙秘)することができます。
~増減変更申立権~
供述調書が作成されると、取調官から内容に間違いがないかどうか問われます。ここで自分の意図したこと(話したこと)と異なる内容が書かれてあった場合は、どんな些細なことでも構いませんので、遠慮なく、内容の変更、あるいは内容の増減を申し立ててください。
~署名押印拒否権~
供述調書の内容の確認が終わると、最後に、供述調書への署名・押印を求められます。
ここで、署名・押印してしまうと、その供述調書に書かれた内容=あなたが話した内容として裁判で証拠として扱われることになります。
取調官は、あなたに署名・押印させようと説得を試みますが、署名・押印の拒否は、あくまであなたの判断で行うことができます。
~出頭拒否権、退去権~
在宅事件の場合、被疑者は、捜査機関からの出頭要請を拒否することができます。
また、取調べ中は、いつでも取調べ室から退去することができます。