・プログラミング技術を誇示しようとコンピュータウイルスを作成し、流通させたことが発覚し、警視庁麹町警察署に逮捕・勾留された…
・SNSで偽の爆弾を設置したとの書き込みを行い、警察から事情聴取のため出頭を要請された…
1 不正指令電磁的記録に関する罪(刑法168条の2、168条の3)
いわゆるコンピュータウイルスなどの不正な指令を与えるプログラムを作成したり、実際に実行される状態に置いたりした場合には、刑法上、不正指令電磁的記録に関する犯罪が成立することになります。
人が電子計算機を使用するに際して、その意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録や不正な指令を記述した記録が処罰の対象となります。
(1)不正指令電磁的記録作成罪(168条の2第1項)
正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、コンピュータウイルスやウイルスプログラムを作成・提供した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。
コンピュータウイルスは、多種多様ですが、本罪の対象は、他のプログラムに寄生して自己の複製を作成し感染する形態の者に限られるわけではなく、一般にトロイ木馬やスパイウェアなどと呼ばれるものであっても対象になり得ます。
また、ウイルスの動作のためにアイコンのクリックなどの使用者の行為が必要となるか否かは問われません。
(2)不正指令電磁的記録供用罪(168条の2第2項)
正当な理由がないのに、コンピュータウイルスやウイルスプログラムをその使用者の意図とは無関係に実行される状態にした場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。
供用罪が成立するためには、使用者の意図とは無関係に実行される状態に置くことが必要ですから、使用者がウイルスであることを認識している場合には、成立しません。
(3)不正指令電磁的記録取得罪(168条の3)
正当な理由がないのに、その使用者の意図とは無関係に勝手に実行されるようにする目的で、コンピュータウイルスやそのプログラムを取得・保管した場合は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。
取得とは、不正指令電磁的記録等であることを認識した上で自己の支配下に移す一切の行為をいいます。
たとえば、ウイルスプログラムが記録されているCD-R等の記録媒体の交付を受ける行為や、ウイルスプログラムのソースコードが印刷された紙媒体の交付を受けとる行為などがこれに当たります。
保管というのは、不正指令電磁的記録を自己の実力支配内に置いておくことをいいます。
自分のパソコンのハードディスクや自分の管理するサーバーに保存する行為などが対象となります。
2 不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)違反
不正アクセス禁止法では、不正アクセス行為等を禁止するとともに、違反行為について罰則などが定められています。
不正アクセス行為の禁止(不正アクセス禁止法11条)
不正アクセス行為の禁止に反した場合には、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。
不正アクセス行為には、以下のものがあります。
・他人の識別符号を悪用する行為(不正アクセス禁止法2条4項1号)
他人の識別符号を悪用することにより、本来アクセスする権限のないコンピューターを利用する行為が禁止されています。
他人のIDやパスワードによる不正ログインが念頭に置かれています。
・コンピュータプログラムの不備を衝く行為(不正アクセス禁止法2条4項2号、3号)
アクセス制御のプログラムの瑕疵、アクセス管理者の設定上のミス等の安全対策上の不備、いわゆるセキュリティホールを利用して、システムに侵入する行為を禁止しています。
他人の識別符号を不正に取得する行為の禁止(不正アクセス禁止法4条、12条1号)
不正アクセス行為の用に供する目的で、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を取得する行為が禁止されており、これに違反すると、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
不正アクセス行為の用に供する目的には、取得者自身に他人の識別符号を用いて不正アクセス行為を行う意図がある場合のほか、第三者に不正アクセス行為を行う意図がある場合に、そのことを認識しながら、当該第三者に識別符号を提供する意図を持って取得する場合もこれに該当します。
取得とは、識別符号を自己の支配下に移す行為をいい、識別符号を再現可能な状態に記憶することを含みます。
不正アクセス禁止法違反のまとめ
罪となる違反行為 | 罰則・法定刑 | |
不正アクセス行為 | 他人の識別符号を悪用する行為 | 3年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
コンピュータプログラムの不備を衝く行為 | ||
他人の識別符号を不正に取得する行為 | 1年以下の懲役又は50万円以下の罰金 | |
不正アクセス行為を助長する行為 | ||
他人の識別符号を不正に保管する行為 | ||
識別符号の入力を不正に要求する行為(フィッシング行為) |
名誉毀損罪(刑法230条)
公然と事実を適示し、人の名誉を毀損した場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金になります。
インターネット上で書いた内容が、名誉毀損罪の対象になる場合があります。
現在では、FacebookやLINEやツイッターその他の通話チャットアプリケーションなど様々なSNSが、広く利用されていますが、軽い気持ちで書き込んだ内容が名誉毀損にあたる場合があります。
業務妨害罪(刑法233条、234条)
虚偽の風説を流布したり、偽計を用いたり、威力を用いて、業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
インターネット上での特定の者に対する脅迫や、嘘の犯行予告は、業務妨害罪が成立する可能性があります。
サイバー犯罪における弁護活動
1 不起訴処分・無罪判決を目指した弁護活動
サイバー犯罪では、インターネット上の複雑で専門的な知識を駆使して行われることが多く、知らぬ間に自分のコンピュータを経由して犯罪が行われている場合もあり得ます。
捜査機関側も専門的なチームにより日々監視の目を強化してはいますが、年々巧妙化しているのも事実です。
もしも、身に覚えのない容疑で捜査の対象となったり、逮捕されてしまったりした場合には、客観的証拠をもとにして容疑者が無実であることを強く主張していく必要があります。
また、虚偽の自白が作成されないようにしっかりと取調べ対応を行い、捜査機関の証拠が不十分であること、犯人ではないということを示す資料などを示すことにより、不起訴処分や無罪判決を目指します。
2 早期の身柄解放
サイバー犯罪は、コンピュータを介しての行為が問題とされることがほとんどであるため、非常に高度な専門的知識が要求される他、証拠の隠滅が図られやすい犯罪であるともいえるでしょう。
従って、罪証隠滅のおそれを危惧して、逮捕されたり勾留されたりすることが多いと考えられます。
早期に弁護士に相談することで、逮捕・勾留等の身柄拘束を避けて捜査するように働きかけることや、逮捕に引き続く勾留を阻止する働きかけを行うことができます。
3 被害弁償・示談交渉
サイバー犯罪においても、被害者が存在する事件は数多く考えられます。
そのような場合には、被害者に対して謝罪や示談交渉をすることで、不起訴処分や刑の減軽を目指した弁護活動を行うことができます。
たとえば、インターネットを通した名誉毀損が問題となっている事件では、被害者との示談がまとまり、告訴を取り下げてもらえれば、不起訴処分が得られることになります。
謝罪や示談の交渉に関しては、専門家である弁護士にお任せください。
加害者が直接に話し合うことは、感情的になる場合が多く、交渉自体がまとまらないこともあります。
示談が成立すれば、事案の軽重にもよりますが、不起訴処分や執行猶予判決などにつながりやすくなります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部では、サイバー犯罪についての経験が豊富な弁護士による最善のアドバイスを受けることができます。
刑事事件・少年事件を専門に取り扱う弁護士が、直接「無料相談」を行います。
被疑者が逮捕された事件の場合、最短当日に、弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供しています。