ガソリンをかけ傷害罪で逮捕
事例
東京都西東京市在住のAは、西東京市内の会社に勤めるか移審です。
ある日、Aは喧嘩のすえVに対して、持っていたガソリンを浴びせかけ、Vに怪我を負わせました。
東京都西東京市を管轄する田無警察署の警察官は、Aを傷害の疑いで逮捕しました。
Aの家族は、刑事事件に強いと評判の弁護士に相談することにしました(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~殴ったり蹴ったりしなくても傷害罪が成立~
第28章 傷害の罪
(傷害)
第204条 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(暴行)
第208条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
多くの方が傷害罪と聞いてまず想起されるのは、殴る蹴るなどの方法によって相手方に怪我を負わせるといったものではないでしょうか。
たしかに、傷害罪として逮捕されたり、立件されたりする事件のほとんどはこのような方法によるものです。
これを法律的に言い直すと、「傷害」(刑法204条)という結果を負わせる典型的な手段は「暴行」(刑法208条参照)ということになります。
ここでいう「暴行」とは、人の身体に対する物理力の行使をいい、本件のような行為も人の身体に物理力を行使するものである以上、殴る蹴るといった行為と変わるところはありません。
そして「傷害」とは、生理的機能に障害を加えることをいいます。
これは比喩的に言うならば、人の健康状態を悪くさせることを指し、本件Vのようにガソリンを浴びせかけられれば健康状態に悪化が生じることは容易に推測され(場合よっては何らかの病変も生じ得るでしょう)「傷害」を生じさせたと考えることができます。
また、およそ犯罪が成立するためには、「罪を犯す意思」(38条1項本文)つまり故意が必要です(過失犯などの特別な例は除く(同項ただし書参照))。
では、仮に本件でAにVに傷害を負わせる故意まではなかった場合、傷害罪は成立しないのでしょうか。
ここで上記の208条の条文をもう一度見てみると、「暴行を加えた者が傷害するに至らなかったとき」に暴行罪が成立するとの定めになっています。
ここから、傷害罪とは暴行罪の結果的加重犯(基本となる犯罪から、思いがけず重い結果が生じた場合を規定する犯罪)だということが分かります。
結果的加重犯が成立するためには、基本犯に関する故意があれば足りると考えられており、AがVに傷害を負わせる故意まではなかったとしても暴行の故意に欠けるところはない以上、Aの行為には傷害罪が成立することになります。
~粗暴犯における弁護活動~
喧嘩などを想定すれば分かるとおり、傷害事件は元々感情的に対立している者の間で生じることが多い事件類型といえます。
したがって、被疑者(容疑者)となった者と被害を受けたと主張する者の主張が真っ向から対立することも少なくありません。
よって、弁護士としては、双方の意見を総合して正確な事件の筋や見通しを立てることが求められることになります。
とはいえ、被疑者(容疑者)が概ね事実を認めている場合には、刑事処分を見越して早期に被害者との示談交渉等に入ることも視野に入れるべきでしょう。
もっとも、その際には依頼者たる被疑者(容疑者)やその家族に対し、法律上・事実上のメリットやデメリットをしっかりと説明することが必須といえます。
また検察統計(2020年)によると、傷害事件で逮捕され検察に身柄が送致されると、その約8割が勾留されるに至っています(勾留請求されていない事件を除くと勾留される確率はさらに上がるでしょう)。
逮捕されてしまった場合には、弁護士との早期の接見(面会)を行うことが重要になることは間違いありません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、傷害事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
傷害事件で逮捕された方のご家族やご知人は、年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)にまずはお電話ください。