【事例解説】風俗店での本番行為は犯罪?当事者間での示談は危険?
風俗店トラブルのほとんどは、禁止されている「本番行為」をしてしまうことです。
本番行為を行ったことが店に発覚した後に当事者間で示談を締結しようとすると、別の問題が発生する危険性もあります。
今回は、風俗店トラブルを示談締結によって事件化阻止できた事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が詳しく解説します。
【事例】
東京都台東区にある風俗店を利用していた男性A(32)は、従業員の女性V(23)に対して、禁止されているにも関わらず本番行為を行ってしまいました。
Vが店長に「Aが本番行為をしてきた」と伝えたことで発覚し、店長はAに対して「300万円払えば示談してやる。払えない場合は警察に被害届を出す。」と金銭を要求しました。
300万円も持ち合わせていなかったAは、とりあえず財布に入っていた現金5万円を店長に渡し、後日連絡するとして店を後にしました。
今後どうなっていくのか不安に感じたAは、店に連絡をする前に弁護士に相談することにしました。
(※この事例は全てフィクションです。)
【風俗店で本番行為を行うと犯罪?】
原則、本番行為が認められている風俗店はありません。
本番行為を認めてしまうと、店や従業員が売春防止法違反で処罰されてしまうからです。
なので、本番行為禁止というルールを定めている風俗店がほとんどで、これに違反してしまうと違反金が請求される恐れがあります。
今回の事例では、AがVに対して禁止されている本番行為を行ったことで、店長から「違反金を払わないと警察に被害届を出す」と言われています。
では、警察に被害届を出されてしまった場合、Aは何罪に問われるのでしょうか。
この場合、Aは不同意性交等罪に該当する可能性があります。
不同意性交等罪については、刑法第177条で以下のように規定されています。
- 刑法第177条(不同意性交等)
前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。- 2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
- 3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
条文に記載されている「前条第一号各号に掲げる行為」とは、刑法第176条で規定されている以下の行為です。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
不同意性交等罪は、上記の行為やこれらに類似する行為によって、相手が同意しない意思を形成することや表明すること、全うすることが困難な状態にさせ、性行為等をすることで成立します。
わかりやすく説明すると、相手が同意していないにも関わらず性行為等をすることで、不同意性交等罪が成立するということです。
今回の事例で考えると、そもそも店のルールとして本番行為は禁止されているため、Vに同意はありません。
ですが、プレイ中にAが勢い余って本番行為をしてしまったとすると、Vは嫌だ(同意しない)という意思表示をする「いとまがない」ため、刑法第176条1項5号に該当し、AのVに対する行為は不同意性交等罪が成立する可能性があります。
【示談で事件化阻止ができる?】
当事者間で示談を締結し、被害者が被害届を提出しなければ、刑事事件になることを阻止することはできます。
事件化阻止ができれば、逮捕されたり処罰されることもありませんが、当事者間で示談を進めることは難しいです。
当事者間で示談を進めてしまうと、示談金を支払ったのに被害届を提出されてしまったり、示談したはずなのに追加で金銭を要求されてしまったりといった問題が発生する危険性があります。
なので、風俗店トラブルを起こしてしまい、示談で事件化阻止を目指したいという場合は、弁護士に代理人として示談交渉を行ってもらうことをお勧めします。
今回の事例でも、Aは弁護士に依頼して、弁護士がAの代理人として、店長やVと示談交渉を行った結果、被害届を提出しないことや今後金銭を要求しないといった旨を記載した示談を締結することができ、無事に事件化阻止することができました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、風俗店トラブルはもちろん、様々な刑事事件で被害者との示談締結を行った実績を持つ刑事事件に特化した法律事務所です。
風俗店トラブルを起こしてしまって今後どうなるか不安に思っている方は、まずは24時間受付中の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までご相談ください。