【事例解説】置き引きは占有の有無で問われる罪が変わる?窃盗罪と占有離脱物横領罪の違い

【事例解説】置き引きは占有の有無で問われる罪が変わる?窃盗罪と占有離脱物横領罪の違い

窃盗罪 占有離脱物横領罪

置き引きによる刑事事件で窃盗罪が認められた事例をもとに、置き引き行為によって成立する可能性がある窃盗罪占有離脱物横領罪の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・新宿支部が解説します。

【事例】

東京都新宿区内にある公園のベンチで座っていた男性V(37)は、立ち去る際に手に持っていたバッグをベンチに置いたままにしてしまいました。
公園から200mほど歩いたときにバッグをベンチに忘れたことに気付いたVは、すぐに走って公園に戻りました(公園に引き返すまでの時間は約3分が、バッグはすでにベンチから無くなっていました。
Vはすぐに警察に通報し、警察は近くにあった監視カメラから、男性A(28)がVのバッグを置き引きしていたことが発覚し、Aを逮捕しました。

警察の取り調べによると、Aは「落とし物を拾っただけで盗んではいない」と容疑を否認しています。
(※この事例はフィクションです。)

【置き引き行為は何罪?】

置き引きは、その場に置かれている荷物を所有者が目を離した隙に盗む行為を指し、刑法第235条で規定されている窃盗罪か刑法第254条で規定されている占有離脱物横領罪(遺失物等横領罪)のいずれかが該当します。
各条文は以下のように規定されています。

  • 刑法第235条(窃盗)
    他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
  • 刑法第254条(遺失物等横領)
    遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

それぞれの条文が規定している処罰内容は、窃盗罪は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金占有離脱物横領罪は「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金なので、どちらの罪が成立するかで全く違ってきます。

【窃盗罪と占有離脱物横領罪の違い】

置き引き行為が窃盗罪と占有離脱物横領罪のどちらに該当するかについては、置かれていた荷物を所有者が占有していたかどうかという「占有の有無」が重要になります。
ここで言う占有とは、バッグや財布などの財物を事実上所持・管理していることを指します。

他人が占有している財物に対して置き引き行為をした場合は、他人の財物を窃取したことになるので窃盗罪が成立します。
一方で、他人が占有していない財物に対して置き引き行為をした場合は、占有を離れた他人の物を横領したことになるので占有離脱物横領罪が成立します。

このように、占有の有無によって成立する犯罪が変わってくるため、占有の有無の判断は極めて重要なポイントになります。
ただ、占有の有無を判断するための明確な基準というものは規定されておらず、判例では、客観的な要件主観的な要件の2つを総合的に考慮し、社会通念に従って占有の有無を判断しています。

客観的な要件としては、所有者から財物が離れた距離や時間がどのくらいなのかなどを考慮した上で、所有者が財物に対して事実上の支配があったのか判断します。
一方で、主観的な要件としては、所有者が意図的に置いていたり置き忘れていただけといったような、財物を支配する意思があったのか判断します。

【占有の有無が争点になった判例】

窃盗罪か占有離脱物横領罪のどちらに該当するかについて、占有の有無が争点になった判例をいくつか紹介します。

①所有者の占有が認められて、窃盗罪の成立が肯定された判例
・被害者が公園のベンチに置き忘れて引き返すまでの2分間で盗まれたポシェット(最高裁平成16年8月25日決定)
・バス停に並んでいた被害者が置き忘れて約20m離れた隙に盗まれたカメラ(最高裁昭和32年11月8日判決)

②所有者の占有が認められず、占有離脱物横領罪の成立が肯定された判例
・大型ショッピングモールにいた被害者が6階にあるベンチに置き忘れて地下1階から戻る約10分の間に盗まれた札入れ(東京高裁平成3年4月1日)

今回の刑事事件で考えると、Vがバッグを公園のベンチに置き忘れたことに気付いた距離は200mほどで、公園のベンチに引き返すまでの時間は3分ほどだったことから、判例に照らし合わせると、盗まれたバッグ(財物)はV(所有者)の占有が認められるため、Aには窃盗罪が成立することになります。

【窃盗罪・占有離脱物横領罪による刑事事件でお困りの方】

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とした弁護士事務所です。
過去に窃盗罪や占有離脱物横領罪による刑事事件の弁護をした実績がある弁護士も多く在籍していますので、窃盗罪・占有離脱物横領罪による刑事事件でお困りの方は、ぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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