【解決事例】ネコババで被害届

【解決事例】ネコババで被害届

落し物を着服するいわゆるネコババで問題となる罪と、被害者が被害届を提出した場合の流れについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。

【事例】

東京都江戸川区在住のAさんは、江戸川区内の会社に勤める会社員です。
事件当日、Aさんは江戸川区内のパチンコ店でパチンコをしていたところ、足元にスマートフォンが落ちていました。
そこでAさんは何も考えずに拾って自身の鞄に入れ持ち帰ろうとしましたが、スマートフォンの所有者VさんはGPS機能を用いてスマートフォンがある場所を特定していて、Aさんの帰宅途中にVさんはAさんを特定し、警察に通報しました。
通報を受けて臨場した江戸川区内を管轄する小岩警察署の警察官は、Aさんに任意同行を求め、警察署にて取調べをしました。
Aさんはネコババを認めたところ、警察官はAさんに対し「逮捕はしないけど、Vさんから被害届が出ているから在宅で捜査するよ」との説明を行いました。

≪守秘義務・個人情報保護のため、事件地や一部事件内容を変更しています。≫

【ネコババで問題となる罪】

落し物をした場合には落とし主に返却するか、最寄りの交番や警察署に提出する必要があります。(遺失物法4条1項)
では、それを届け出ずにその落し物を持ち去った場合にはどのような罪に問われるのでしょうか。
以下で検討します。

・遺失物横領罪・占有離脱物横領罪
まず、落し物を届け出ずに持ち去った場合には遺失物横領罪・占有離脱物横領罪が適用されます。
条文は以下のとおりです。

刑法254条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

ここで規定されているのは、占有離脱物横領罪であり、遺失物横領罪はその例示であるとされています。
持ち主がその場に忘れて行った物を盗った場合には遺失物横領罪が、意識して置いた上でその場を立ち去っていた場合などには占有離脱物横領罪の罪名が、それぞれ付くと考えられます。

・窃盗罪
上述のとおり、基本的には落し物を盗んだ場合には占有離脱物横領罪・遺失物横領罪が適用されますが、それを拾得した場所によっては窃盗罪が適用される可能性があります。
窃盗罪の条文は以下のとおりです。

刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

確かに、どのような場所であれ忘れ物である以上は占有を離れたものと言えそうです。
しかし、例えばデパートなどの商業施設や飲食店のほか、ケースのようなパチンコ店などの場合、たとえ落し物であってもその占有は商業施設や飲食店、パチンコ店にあるとされ、窃盗罪が適用される可能性があります。
なお、例え占有する施設の管理責任者が落し物の存在を知らなかったとしても、占有は認められ、窃盗罪が適用されます。

【被害届の提出について】

警察官などの捜査機関が捜査を開始することを「捜査の端緒」と言います。
捜査の端緒には、警察官による職務質問や目撃者による通報・現行犯逮捕などのほか、被害者やその家族・遺族による被害届や刑事告訴が挙げられます。
そのうち、今回の事件で提出された被害届については、以下のとおり規定されています。

犯罪捜査規範61条1項 警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。

とはいえ、実務では
被害届は基本的に被害者の住所地を管轄する警察署等に提出される(あるいはそのように勧められる)ことが多い
・罪に当たらないということで被害届が受理されなかったり、当事者間での合意(示談)などを勧められる場合もある
という性質から、被害届が受理されるかどうかは被害者にとって重要な内容であり、受理された場合には取調べを含め捜査が行われる蓋然性が高いものだと考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は、これまでネコババなどの財産犯事件を数多く取り扱ってきました。
東京都江戸川区にて、ネコババをしてしまい被害届を提出された場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部にご連絡ください。
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