【解決事例】痴漢行為で強制わいせつ罪に
いわゆる痴漢行為をした結果強制わいせつ罪に問われたという解決事例を踏まえ、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【事例】
東京都足立区西新井在住のAさんは、事件当日以前から同じ列車の同じ車両に乗車することが多いVさんに対して痴漢と呼ばれる行為を複数回行っていました。
逮捕当日も、Aさんは臀部(お尻)を撫でる痴漢行為をしていましたが、Vさんが抵抗できないことに乗じてエスカレートしてしまい、最終的に自身の指をVさんの下着の中に手を入れました。
Aさんは同じ車内に乗っていた足立区内を管轄する西新井警察署の警察官に現認され、現行犯逮捕されました。
当事務所の弁護士が依頼を受けた時点で、既にAさんは強制わいせつの罪で勾留されていて、早期の釈放は難しい状況でした。
そこで、弁護士はまず、捜査機関を通じて被害者であるVさんの連絡先を伺い、勾留中のAさんに代わって誠心誠意の謝罪と賠償の意思を示した結果、Vさんは示談に応じてくださいました。
示談成立の時点で既に勾留延長が決まっていましたが、弁護士は示談が成立したことやその内容などを踏まえてもはや勾留が必要ないということを主張した結果、Aさんは釈放されました。
また、刑事処分についても、示談の内容を評価され、不起訴となりました。
≪守秘義務・個人情報保護のため、事件地や一部事件内容を変更しています。≫
【いわゆる痴漢行為について】
列車やバスなどの公共交通機関で他人の臀部(お尻)や太ももなどを触る行為は、俗に痴漢行為と呼ばれています。
痴漢行為に対応する「痴漢罪」などの罪はなく、その多くは各都道府県が定める迷惑防止条例違反として処罰されます。
東京都の場合、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例に以下の規定があります。
同条例5条1項 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
1号 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
同条例8条1項 次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2号 第5条第1項又は第2項の規定に違反した者(次項に該当する者を除く。)
【強制わいせつ罪に当たる場合とは】
今回の事例でAさんが行った行為は、公共の乗り物で衣服の上から、そして下着の中に指を入れることで直接Vさんの身体に触れる行為ですので、前述した東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の5条1項1号に当たることは間違いありません。
しかし、Aさんに対しては、強制わいせつ罪が適用されました。
強制わいせつ罪の条文は以下のとおりです。
刑法176条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
被害者が13歳以上の場合、強制わいせつ罪は
・暴行又は脅迫を用いること
・わいせつ行為をすること
を要件としています。
暴行又は脅迫という要件について、これは被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足る程度の暴行又は脅迫があれば認められます。
これは一般に想像するような、被害者を押し倒すような暴行や「騒ぐと殺すぞ」等の言葉での脅迫は勿論のこと、路上で背後からいきなり抱き着くような行為でも成立しますし、列車内のような乗客が多数いて恐怖や羞恥のため逃げられず声も上げにくい状況に乗じてわいせつ行為をした場合にも強制わいせつ罪が適用されます。
また、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例が禁止している行為は被害者を著しく羞恥させたり不安を覚えさせたりする行為ですが、強制わいせつ罪の客体はわいせつ行為です。
条例違反に比べ、より性的羞恥心を害するような行為を指します。
Aさんのように下着の中に指を入れる行為のほか、数分間臀部(お尻)を撫でまわすような行為などがわいせつ行為にあたります。
【痴漢事件・強制わいせつ事件での弁護活動】
列車内での痴漢事件・強制わいせつ事件の場合、在宅で捜査が進められる場合もありますが、被害者が乗る路線・時間帯を知っていることから、在宅で捜査を進めると加害者が被害者に接触して不当な働きかけをすることが疑われると判断され、逮捕・勾留される可能性があります。
特に、同じ被害者に対して痴漢事件・強制わいせつ事件を起こしている場合などでは、逮捕・勾留される可能性が高くなります。
Aさんの場合、逮捕された日より前からVさんに痴漢行為をしていたため、勾留は避けられない事例でした。
また、Aさんは条例違反ではなく強制わいせつ罪で逮捕・勾留されていました。
条例違反の場合は罰金刑がある罪なので略式手続による罰金の可能性がありますが、強制わいせつ罪の場合は罰金刑がない罪なので、起訴された場合には公開の法廷で裁判を受けることになり、実刑の可能性もある罪名でした。
弁護士は、これまでの刑事事件・少年事件の弁護活動の経験を活かし、早期に被害者に連絡して誠心誠意の丁寧な説明を行った結果、起訴される前に示談に応じて頂くことができ、可能な限りの早期の釈放・不起訴獲得という結果に結びつきました。
東京都足立区西新井にて、ご家族が痴漢・強制わいせつ事件で逮捕・勾留されてしまった場合、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部にご連絡ください。
刑事事件・少年事件を専門とする弁護士が初回接見に行き、事件の内容や逮捕・勾留中の方の意向を伺った上で依頼者の方にご説明・ご報告致します。