窃盗目的で民家に不法侵入し家人に現行逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
窃盗目的で民家に不法侵入
仕事をクビになって生活費に困ったAさんは、他人の家に盗みに入ることを企て、留守の多い葛飾区の民家に忍び込んで金品を窃取する計画を立てました。
そしてある日、家人が出かけたのを確認したAさんは、リビングの掃き出し窓を割って開錠して、民家に不法侵入し計画を実行にうつしたのです。
留守の家のリビングに不法侵入したAさんは、金目の物がありそうなタンス等を見つけ、その中を物色していたところ、忘れ物を取りに帰ってきた家人に見つかり、その場で取り押さえられてしまったのです。
家人によって取り押さえられたAさんは、その後、通報で駆け付けた警視庁葛飾警察署の警察に引き渡されて、警察署に連行されました。
警察官の取調べを受けているAさんは、どのような刑事罰が科せられるのか不安でたまりません。
(フィクションです。)
不法侵入
窃盗の目的で留守の家に不法侵入すれば住居侵入罪となります。
住居侵入罪は、刑法第130条に定めらている法律で、その法定刑は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。
今回の事件でAさんは、リビングの掃き出し窓を割って、閉まっていた鍵を開錠して家内に不法侵入しているので、この住居侵入罪の適用を受けるのは間違いないでしょう。
窃盗目的
Aさんは、家内から金品を窃取する目的で留守の民家に不法侵入しています。
この場合、まだ何も盗っていないAさんですが、「窃盗罪」の適用を受けるのでしょうか?
~窃盗罪~
まず「窃盗罪」について解説します。
窃盗罪とは、刑法第235条に定められている法律で、その内容は「他人の財物を窃取する(刑法抜粋)」ことです。
窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですので、窃盗罪で起訴されて有罪が確定すればその法定刑内の刑事処分を受けることになります。
~窃盗未遂罪~
窃盗罪は、未遂であっても処分の対象となります。(窃盗未遂罪)
窃盗未遂罪とは、窃盗の着手が認められるが、他人の財物を窃取するという結果まで発生しなかった場合を意味します。
例えば、歩いている被害者が持っているカバンをひったくろうと、そのカバンを掴んだが、被害者がカバンを放さなかったので、カバンを窃取できなかった場合や、コンビニのレジの中にある現金を盗もうと、店員がレジから離れたすきにレジを開けたが、レジの中にお金がなくて目的を遂げれなかった場合などが窃盗未遂罪となります。
窃盗未遂罪が成立するには、窃盗の着手行為がなければなりません。
窃盗罪でいうところの着手時期は、財物についての他人の占有を侵害する行為を開始したとき、又は、これに密着した行為を開始したときです。
~Aさんに窃盗未遂罪は適用されるのか?~
Aさんは、金目の物がありそうなタンスの中を物色していたところを、帰宅した家人に取り押さえられています。
タンスの中を物色する行為は、財物についての他人の占有を侵害する行為に該当するでしょうから、Aさんに窃盗未遂罪が適用されるでしょう。
住居侵入罪と窃盗未遂罪の関係(牽連犯)
これまで解説したように今回の事件でAさんは、「住居侵入罪」と「窃盗未遂罪」の2つの犯罪に抵触しています。
この2つの犯罪行為は、手段と目的の関係にあり、このように複数の犯罪が、手段と目的の関係にあることを「牽連犯」といいます。
牽連犯は、刑事罰を科せる上では一罪として扱われ、最も重い罪の法定刑によって処断されることとなります。
ですからAさんの場合ですと、窃盗未遂罪の法定刑の適用を受けることとなりますが、侵入窃盗事件では、単なる窃盗事件より厳罰化される傾向にあるので注意しなければなりません。