田園調布警察署に逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
~事件~
大学生のAさんは、友人と共に、SNSで知り合った女子大生2人とコンパをしました。
東京都大田区内の居酒屋で一次会をした後、女子大生2人を自宅に誘って、そこで二次会を開催したのですが、しばらくするとお酒に酔った女子大生が寝てしまいました。
Aさんは、友人と共に女子大生の胸を触る等のわいせつ行為に及び、その様子をスマートフォンで撮影しました。
そして後日、Aさんがその動画をインターネットの動画投稿サイトに投稿したことから、女子大生が被害を知ることとなりました。
女子大生が、警視庁田園調布警察署に被害を届け出たことから、Aさんは友人と共に準強制わいせつ罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
◇準強制わいせつ罪◇
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為に及べば「準強制わいせつ罪」となります。(刑法第178条第1項)
刑法第176条に定められた強制わいせつ罪の補充的な規定である準強制わいせつ罪は、わいせつ行為に及ぶための手段として暴行や脅迫を用いる必要はありません。
~心神喪失とは~
精神上の障害によって正常な判断を失っている状態を意味します。
具体的には、催眠状態、泥酔、精神耗弱、麻酔の状態等がこれに当たります。
~抗拒不能とは~
心理的、物理的に犯行不能な状態にあることを意味します。
抗拒不能に陥った原因はその理由を問わないので、驚愕や錯誤によって抗拒不能に陥った場合も該当します。
また性的無知や信頼を利用してわいせつ行為に及んだ場合も、抗拒不能に乗じたものとして準強制わいせつ罪が成立し得ます。
~主体と客体~
わいせつ行為と聞けば、男性が女性に対して行う犯罪と思われがちですが、準強制わいせつ罪の主体に性別の制限はありません。
同様に、準強制わいせつ罪の客体にも性別の制限がないので、男性が男性に対してわいせつ行為に及んだ場合や、女性が男性に対してわいせつ行為に及んだ場合、女性が男性に対してわいせつ行為に及んだ場合でも準強制わいせつ罪が成立します。
~故意~
準強制わいせつ罪は故意犯ですので、被害者を積極的に心神喪失又は抗拒不能に陥らせてわいせつ行為に及んだ場合は、故意の立証に関する問題点はありません。
しかし、心神喪失若しくは抗拒不能の状態にある被害者に対してわいせつな行為に及ぶ場合は、少なくとも被害者がその様な状態にあることを認識する必要があるでしょう。
今回の事件の被害者である女子大生は、被害にあった際、お酒に酔って寝ています。
この状態は、女子大生が心神喪失状態に陥っていると考えられますので、準強制わいせつ罪が成立することは間違いないでしょう。
◇準強制わいせつ罪の量刑◇
準強制わいせつ罪は、強制わいせつ罪と同じく「6月以上10年以下の懲役」が法定刑として定められています。
準強制わいせつ罪は、性犯罪の中でも比較的罰則の厳しい犯罪の一つですので、事件を起こしてしまった場合は、逮捕される可能性が非常に高いです。
特に今回の事件の場合は、二人以上で犯行に及んでいる共犯事件ですので、犯人同士の口裏合わせを防止する観点からも逮捕されるリスクは非常に高いでしょう。
そして起訴されるか否かは、起訴されるまでに被害者(女子大生)と示談できるかどうかによります。
起訴されるまでに被害者(女子大生)と示談することができれば不起訴の可能性があります。