薬物事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
覚せい剤の運び屋をしているAさんは、覚せい剤の密売人に頼まれた覚せい剤40グラムを車で運んでいる途中で、警視庁石神井警察署の警察官に職務質問されて、その覚せい剤を発見押収されてしまいました。
覚せい剤の所持罪で逮捕されたAさん、営利目的所持を疑われて厳しい取調べを受けています。
(フィクションです。)
◇覚せい剤取締法◇
覚せい剤取締法で禁止している覚せい剤の所持には①単純(非営利目的)所持②営利目的所持の2種類があります。
①単純(非営利目的)所持
覚せい剤を単純(非営利目的)所持すれば「10年以下の懲役」が科せられるおそれがあります。
初犯であれば、執行猶予付きの判決となるのがほとんどですが、再犯の場合は実刑判決となる可能性が高くなります。
②営利目的所持
覚せい剤の所持に営利目的が認められると「1年以上の有期懲役(情状により500万円以下の罰金)」が科せられるおそれがあります。
単純(非営利目的)所持とは異なり、非常に重い罰則が規定されており、初犯であっても長期実刑の可能性のある非常に厳しい犯罪です。
◇営利目的とは◇
営利目的とは、覚せい剤を所持する動機、目的が、覚せい剤を販売、譲渡することで財産上の利益を得たり、第三者に得させるためであることです。
以下のような状況があれば営利目的の所持を疑われます。
①所持する量
覚せい剤は、一回の使用量が約0.02グラムだといわれています。この量を大きく上回る場合は営利目的の所持が疑われます。
②覚せい剤以外の所持品
覚せい剤は2~3回分の量を、「パケ」と呼ばれるチャック付きのポリ袋に入れて密売されるケースが多いため、小分けするためのパケを大量に所持していたり、小分けする量を計る電子計り等を所持していた場合は、営利目的の所持が疑われます。
③密売事実
販売を裏付けるメモや、メールのやり取りが発覚したり、実際に購入者が捕まったりしている場合は、営利目的の所持が疑われます。
◇覚せい剤事件の弁護活動◇
傷害事件や窃盗事件等のように被害者が存在する事件の刑事弁護活動は、無罪を主張する場合を除いては、被害者との示談活動が主となります。
覚せい剤のような薬物事件や、法律で禁止されている禁制品を所持していたような事件では被害者が存在しませんので、その様な活動を行うことができません。
それではどのような活動をすれば減軽につながるのでしょうか。
覚せい剤等の薬物事件は再犯率が非常に高い犯罪として有名ですが、その理由の一つは、覚せい剤等の禁止されている薬物の依存性の強さにあります。
頭で使用してはいけない、使用すると警察に逮捕されるかも知れないと分かっていても、一度覚せい剤の快楽を経験した身体は、その快楽を求めて覚せい剤を欲してしますので、理性がきかなくなり、再び覚せい剤等の禁止薬物に手を出してしまうようです。
その様な依存症から脱するには、専門医の診断を医学的な受けて、医学的な治療をしたり、専門家のカウンセリングを受けるしかありません。
覚せい剤等の違法薬物が脱するには、刑務所等に服役するよりも、この様な治療等の方が効果的だという専門家の意見もあり、最近の薬物事件における刑事裁判では、こうした治療を積極的に受けているかどうか、刑事罰に影響してきます。