名誉棄損罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
東京都葛飾区に住むAさんの自宅の前は私道になっていますが、通り抜けをする車両が絶えず、困っています。
通行を禁じる旨の立て看板をして注意を呼び掛けていますが、全く効果がないことからAさんは、自宅の前に監視カメラを設置しました。
そして、「不正通行監視中。悪質な違反者は警察に通報します。」と警告の看板も設置したのです。
こうした対策によって不正通行する車両は激減しましたが、先日、偶然不正通行する車両を見つけたので、Aさんはドライバーに注意しました。
しかしドライバーは全く聞く耳を持たず、逆にAさんに暴言を吐いてくる始末でした。
Aさんは、ドライバーに何か刑事罰を科せないものかと不正通行の様子を撮影した監視カメラの映像をもって、警視庁葛飾警察署に相談しましたが、取締るのは難しいと言われました。
そこでAさんは、インターネットの動画投稿サイトに「犯罪者。見かけた方は注意してください。」という表題をつけて、監視カメラの映像を投稿したのです。
その映像には、不正通行した車両ナンバーがハッキリと映っており、ドライバーの顔がアップになっていました。
この行為が名誉毀損に該当するとして、ドライバーが警視庁葛飾警察署に被害を届け出たことから、Aさんは警察署から呼び出されました。
(フィクションです。)
◇名誉毀損◇
公然と事実を適示し、人の名誉を毀損すれば名誉毀損罪に抵触する可能性があります。
名誉毀損罪にいう「公然と」とは、不特定多数人が認識できる状態を意味します。
Aさんが書き込んだインターネットの動画投稿サイトは、誰でも閲覧可能なサイトですので、公然性は認められるでしょう。
続いて「事実を適示」についてですが、ここでいう事実は真実である必要はありません。しかし、内容については、人の社会的評価を害する、ある程度具体的なものでなければならないとされています。
Aさんが「犯罪者。見かけた方は注意してください。」と表題をつけて、相手を特定できる内容の映像を公開していることを考えると、これは、人の社会的評価を害する、具体的なものであるといえるでしょう。
事実の適示がされたか否かは、その有無によって名誉毀損罪と侮辱罪とが区別されることもあるので非常に重要な問題です。
名誉毀損罪の罰則規定は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」ですが、侮辱罪の「拘留又は科料」ですので、罰則規定に大きな違いがあります。
ちなみに名誉棄損罪は親告罪ですので、被害者等の告訴権者の告訴がなければ起訴を提起できません。
インターネットの書き込みは匿名ということもあり、普段よりも攻撃的になってしまう場合があります。
最近はこういったインターネットを利用する方のモラルが社会問題化されていることもあり、何気なしにした書き込み、軽い気持ちでした書き込みが、名誉毀損罪に当たるとして警察の捜査を受けている方もいるので注意しなければなりません。
◇呼び出しには応じるべきか◇
よく警察署から呼び出しを受けた方から「出頭した方がいいですか?」と質問があります。
全く犯罪に関与していないのであれば、逮捕されるリスクがないので出頭する必要はありませんが、警察署から呼び出しがあるということは、何らかの形で事件に関与していると判断されている可能性が高いでしょう。
その場合、任意の出頭要請に応じなければ逮捕されるリスクが生じてしまうので、警察署からの呼び出しに応じるか悩んでおられる方は、早急に刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。
◇刑事弁護活動◇
刑事事件では「時間」が非常に重要になってきます。
より良い結果を得るためには、刑事事件専門の弁護士が、適切かつ迅速に対応することが大切です。
特に、Aの事件のように、不拘束で警察の取調べを受ける方は、警察署に出頭して取調べを受ける前に、刑事事件に強い弁護士に法律相談することをお勧めします。
不拘束事件における名誉毀損事件では、事件が検察庁に送致されるまでに、被害者と示談する事によって、十分に不起訴処分が期待できます。
名誉毀損罪でお困りの方は、一刻も早く、刑事事件に強い弁護士にご相談ください