ストーカー事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
会社員のAさん(25歳)には、大学生のころから5年間付き合っている女性がいましたが、先日、この女性から突然、別れを告げられました。
Aさんは、この女性との結婚を考えており、別れを切り出された理由が全く分かりませんでした。
そのためAさんは、何度も女性の携帯電話機に電話したり、メールを送信しましたが全く返信がないので、業を煮やしたAさんは、東京都世田谷区にある女性の家まで行き、女性の帰宅を待ち伏せしたのです。
その際に、同居する女性の両親がAさんの存在に気付き、管轄の警視庁成城警察署に通報されてしまいました。
Aさんは逮捕こそ免れましたが、ストーカー行為で警察から厳重注意を受けました。
(フィクションです)
◇ストーカー行為◇
ストーカー規制法では、ストーカー行為について、同法第2条3項で
~この法律において「ストーカー行為」とは、①同一の者に対し、②つきまとい等(第1項第1号から第4号まで及び第5号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を③反復してすることをいう。~
と定めています。
これをわかり易く要約すると、ストーカー行為とは
① 同一の者に対する
② つきまとい等 を
③ 反復して行うこと
です。
◇つきまとい等について◇
ストーカー行為というためには、同一の者に対する、つきまとい等であることが必要とされていますが、ここでいう「つきまとい等」とは何でしょうか?
これにについては同法第2条1項で定義されています。
~つきまとい等とは、特定の者に対する恋愛感情やそれが満たされなかったことに対する怨恨感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し
1.つきまとい・待ち伏せ・押しかけ・うろつきなど
2.監視していると告げる行為
3.面会や交際など義務のないことの要求
4.粗野又は乱暴な言動
5.無言電話・連続した電話、メールなど
6.汚物などの送付
7.名誉を傷つける事項の告知
8.性的羞恥心の侵害
のいずれかの行為をすることをいいます。~
Aさんが女性に行った、複数回の架電や、メールの送信は、上記5号に該当する可能性があり、その後、女性の自宅近くで女性を待ち伏せした行為は、上記1号に該当するでしょう。
◇電子メールの送信等について◇
「電子メールの送信等」というためには、前提として
・(連絡を)拒まれたこと
・(電子メールの送信等が)連続していること
が必要です。
「電子メール」には、パソコン・携帯電話端末によるEメールのほか、YahooメールやGmailといったウェブメールサービスを利用したメール、SMS(ショートメッセージサービス)、LINEやFacebookなどのSNSメッセージ機能を利用したメールも含まれます。
また、受信者が受信拒否設定などをしていたとしても、受信履歴等から電子メールの送信等が行われたことを受信者が認識し得るのであれば、「電子メールの送信等をすること」に該当すると解されます。
なお、電子メールの送信等については、上記しているストーカー行為の要件を満たした上で「(相手方の)身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害がされる不安を覚えさせるような方法により行われた」場合のみ「ストーカー行為」に当たるとされています(同法第2条3項)。
◇「反復して行う」とは◇
反復性の有無に関しては、行為の時間的間隔等を考慮して社会通念に従って判断されます。通常、同一の行為につき、少なくとも2回つきまとい等を繰り返せば反復に当たり得ます。また、一つの行為が1回のみだったとしても、それ以外の法律2条1項各号に掲げられた行為を複数回繰り返した場合にはやはり反復に当たるとするのが最高裁の考え方です。
◇量刑◇
ストーカー行為で起訴されて有罪が確定すれば「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科せられます。
ストーカー行為については、被害者との示談が成立するか否かが、起訴となるか不起訴となるかに大きな影響を与えます。
しかし、ストーカー規制法違反の場合、被害者はもう関わりたくないと、加害者本人やその家族からの示談交渉を受け付けないことも多々あります。
そこで、刑事事件、示談交渉に強い弁護士に依頼し、示談交渉をしてもらうことをおすすめします。
被害者も弁護士を介すれば交渉してくれることがありますし、示談交渉の経験も豊富な弁護士なら相手にもうまく交渉し、示談を成立させられる可能性も高まります。