控訴

控訴とは

控訴とは、第1審裁判所に言い渡した判決に対してなされる高等裁判所への上訴をいいます。

上訴というのは、未確定の裁判について上級裁判所に是正を求める不服申し立てのことです。

控訴は、検察官からも被告人側からもすることができますが、被告人や被告人のために控訴をした事件については、第1審で下された判決の刑よりも重い刑を言い渡されることはありません。

控訴までの手続きと控訴審の手続きの流れ

控訴流れ
控訴をするためには、まず控訴申立書を提出し、一定期間以内に控訴趣意書というものを提出する必要があります。

控訴の提起期間は、判決の宣告のあった日から14日以内です。

この提起期間の間に、控訴申立書を第1審裁判所へと提出しなければなりません。控訴提起期間が経過すると、控訴権は消滅し、この後にされた控訴は、第1審裁判所によって決定で控訴が棄却されます。

控訴の申立てがあった場合、第1審裁判所の書記官によって、相手方に通知されます。

書類や証拠の整理が終わった後,第1審裁判所から控訴裁判所に訴訟記録や証拠物が送付されます。

訴訟記録の送付を受けた控訴裁判所は、控訴趣意書を差し出すべき最終日(通知から21日以上の日)を指定した通知書を控訴申立人に送達して通知します。

控訴趣意書には、控訴理由を簡潔に記載し、必要な疎明資料を添付しなければなりません。

控訴裁判所は、控訴趣意書を受け取ったら、その謄本を相手方に送達することになっており、相手方はこれに対して答弁書を提出することができます。

控訴理由の種類

訴訟手続きの法令違反(刑訴法377条、378条、379条)

控訴の目的は、原判決の誤りを是正することですから、控訴理由が判決に影響を及ぼさないのであれば、控訴を認める必要はありません。

そこで、訴訟手続きの法令違反については、それによって判決に影響を及ぼすものでなければならないとされています。

そして、判決に影響を及ぼすことが明らかである場合に限って控訴理由となる場合を相対的控訴理由といい、違反事由があることをもって判決に影響があることを擬制される場合を絶対的控訴理由とされています。

訴訟手続きの法令違反のうち、絶対的控訴理由とされているものは、以下に挙げる事由です。

  • 判決裁判所の構成に違反があること
  • 判決に関与できない裁判官が関与したこと
  • 審判の公開に反する規定に違反したこと
  • 管轄についての誤りがあること
  • 公訴の受理についての誤りがあること
  • 審判の請求を受けた事件についての判決をせず、審判の請求を受けない事件について審判をしたこと
  • 理由不備や理由齟齬

法令適用の誤り(刑訴法380条)

裁判所が、刑罰法令の適用を誤った場合を意味します。裁判所は、公判で顕出された証拠を基に事実を認定し、それに刑罰法令を適用して、判決を下します。

このときに、適用すべき法令を適用しなかったり、適用すべきでない法令を適用したりしたことが控訴理由となります。

この場合も判決に影響を与えることが明らかであることを示す必要があります。

刑の量定不当(381条)

量刑は、裁判所が様々な事実の認定と評価を行ったうえでなされる総合的な判断であるから、法定刑の範囲でどのような刑罰を科すかは、ある程度裁判所の裁量によるものだといえます。

しかし、その裁量が合理的な範囲を超えて不当であるという場合には、量刑不当として控訴理由になります。

事実誤認(382条)

控訴審の判断の基礎となる証拠資料によっては、原審が行った事実認定が認められない場合を事実誤認といい、これによって判決に影響を及ぼすことが明らかな場合は、控訴理由となります。

再審事由等(383条)

再審事由が存在する場合や、第1審判決後に刑の廃止があったこと等も控訴理由となります。

控訴申立期間内に再審事由が認められる場合にも、判決の確定を待って再審請求によるべきとするのは、迂遠であるために再審事由をもって控訴理由になるものとされています。

控訴審における弁護士の役割

1 控訴趣意書の作成

控訴審での判断対象は、法定された控訴理由が認められるかどうかということに尽きます。

そして、控訴審の裁判官は、控訴趣意書に記載された内容をもとに、原判決に誤りがなかったかどうかを検討し、控訴理由の有無を判断します。

ですから、控訴趣意書が極めて重要となるのです。

控訴趣意書は、一審判決を読み込み、その論理の弱点を見つけ出し、説得的な論述をしなければなりません。

こういった能力は、まさに弁護士の力量が問われる部分であるとともに、控訴審における弁護士の最も重要な弁護活動であるといえるでしょう。

2 新証拠の収集・提出

控訴審は、第1審判決に誤りがなかったかを第1審判決時の事情を基礎として審理するものです。

したがって、原則としては、第1審裁判所において取調べられた証拠に現れている事実を前提としなければなりません。

もっとも、事実誤認や量刑不当を理由とする場合には、やむを得ない事由によって第1審の弁論終結前に取調べ請求することが出来なかった証拠については、証拠調べがなされることとなっています。

また、第1審で取り調べや取調べ請求がされていない証拠であっても、第1審判決の当否を判断するために必要であれば、裁判所の裁量により取調べることが可能です。

さらに、量刑に影響を及ぼし得る情状については、第1審判決後に生じた事情であっても裁判所の裁量により取調べることが可能です。

第1審終結後の示談成立や再就職が決まった等の事情が挙げられます。

3 身柄解放活動

第1審裁判所から禁錮以上の判決を受けると、保釈の効力は失われます。

ですから、せっかく保釈されていても、実刑判決の宣告を受けたとたん、勾留による身体拘束が再度行われることになります。

このような場合には、再保釈請求を行うことにより、改めて身柄の拘束を解くことができます。

ただ、再保釈請求の場合は、保釈保証金を増額されることが多いため、あらかじめ準備しておく必要があります。

~あいち刑事総合法律事務所東京支部は、第1審判決の内容を精査し、不当な判決の是正を目指します。~

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