・東京都上野駅近くに放置されていた自転車を無断で乗って帰った。警視庁上野警察署の警察官に取り調べを受けている…
・長年、会社で経理を任されており、会社のお金2500万円を着服した。着服が発覚し、警視庁蒲田警察署に逮捕された…
1、横領・背任事件
横領・背任事件は、いずれも信任関係に背いて犯される財産犯として共通の性格を持っています。
横領について、横領罪、業務上横領罪、遺失物横領罪が刑法に規定されています。
背任は、刑法上に背任罪が規定されているほか、会社法に会社の取締役や支配人等を対象として特別背任罪(会社法960条)が規定されています。
2、横領罪
(1)横領罪
横領罪は、「自己の占有する他人の物」を「横領」することによって成立します(刑法252条1項)。
以下で記載する「業務上横領罪」と区別し「単純横領罪」とよばれることもあります。
横領罪の法定刑は、5年以下の懲役です。
横領罪の「横領」行為について、その意義について争いがあります。
通説・判例は、委託物についての不法領得の意思を実現するすべての行為であると解しています。
具体的には、他人からの依頼に基づき預かっている現金や物品を、本人の許可を得ることなく勝手に使用、処分、売却するような行為です。
(2)業務上横領罪
業務上横領罪は、「業務として」「占有している他人の物」を「横領」することによって成立します(刑法253条)。
業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役です。業務上横領罪は、被害者の委託信任関係への侵害の程度が強いため、単純横領罪より重い刑罰を規定しています。
業務上横領罪の具体例は、会社の従業員が、会社から預かっている現金を使い込んでしまう場合や、会社から保管を任されている商品を勝手に売って代金を着服するよう場合です。
(3)占有離脱物横領罪
占有離脱物横領罪は、「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物」を「横領」することによって成立します(刑法254条)。
占有離脱物横領罪の法定刑は、1年以下の懲役、10万円以下の罰金又は科料(1000円以上1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰)です。
「占有を離れた他人の物」とは、占有者の意思によらずその占有を離れた物で、まだ誰の占有にも属していない物をいいます。
この典型例が、遺失物や漂流物です。
占有離脱物横領罪の具体例は、列車内に置き忘れられた携帯品を鞄に入れて持ち去った場合、窃盗犯人が放置した自転車を無断で利用した場合、誤って配達された郵便物を開封し処分した場合などです。
3、背任罪
(1)背任罪
背任罪は、他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為を行い、本人の財産上の損害を加えることによって成立します(刑法247条)。
背任罪の法定刑は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
(2)特別背任罪
特別背任罪は、会社の取締役、執行役、支配人等が、自己又は第三者の利益を図り、株式会社に損害を加える目的で、その任務を背く行為をし、会社に財産上の損害を加えることによって成立します(会社法960条)。
特別背任罪の法定刑は、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金、又はこれらの併科です。
通常の刑法上の背任罪に比べ、特別背任罪は重い法定刑が規定されています。
特別背任罪の典型例は、銀行の取締役が、友人が経営する会社の利益を図り、倒産寸前であるにもかかわらず多額の融資を行い、銀行に財産上の損害を与えた場合などです。
4、横領・背任事件のまとめ
罪名 | 刑罰・法定刑 |
単純横領罪(刑法251) | 5年以下の懲役 |
業務上横領罪(刑法253条) | 10年以下の懲役 |
遺失物横領罪(刑法254条) | 1年以下の懲役、10万円以下の罰金又は科料 |
罪名 | 刑罰・法定刑 |
背任罪(刑法247条) | 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金 |
特別背任罪(会社法960条) | 10年以下の懲役、1000万円以下の罰金 |
業務上横領罪の相談例
・他人からの依頼で預かっていた現金等を着服した
→単純横領罪など
・レンタカーを返却期限までに返さず、無断で使用し続けている
→単純横領罪など
・家庭裁判所に選任されている成年後見人が被成年後見人の預金を勝手に引き出し使った。
→業務上横領罪など
横領・背任事件における弁護活動
1 横領・背任事件に強い弁護士へ相談する
横領・背任事件の容疑をかけられている場合には、すぐに横領・背任事件に強い弁護士へ相談してください。
横領・背任事件では、継続的に犯罪が行われることも多く、身に覚えのない部分まで疑われてしまうことがあります。
横領・背任事件を認めている場合でも、事件の概要を正確に把握したうえで、一貫した弁護活動を行っていくことが重要です。
横領・背任事件に強い弁護士は、事件の全体像を把握したうえ、事件の流れや今後の見通しなどに基づいた、適切なアドバイスを行うことができます。
2 横領・背任事件で早期に示談をする
単純横領罪・業務上横領罪は、罰金刑が規定されていません。
そのため、これらの横領罪で起訴されてしまうと、「無罪判決」、「執行猶予付き判決」、「懲役刑の実刑判決」しかありません。
起訴を避けるには、早期に被害者への謝罪や被害弁償を行い示談することが重要です。
もし捜査段階で被害者と示談することができれば、不起訴処分を獲得できる可能性が高まります。
示談交渉は、専門の弁護士に依頼することをおすすめします。
当事者同士の交渉では、加害者が十分な交渉を行うことができませんし、感情的になり、話が決別してしまうこともあります。
示談交渉の経験豊富な弁護士は、加害者の謝罪・反省の態度を第三者の立場から伝え、被害者が示談をするメリット・デメリットも丁寧に説明します。
そして、お互いに納得できるような示談の成立を目指します。
3 横領・背任事件で身柄拘束を阻止する
横領・背任事件で警察の捜査を受ける場合、逮捕・勾留される可能性があります。
いったん逮捕・勾留されると、身柄拘束が長期化する傾向にあります。
身柄拘束が長期化すると、会社や学校に行くこともできません。
横領・背任事件に強い弁護士は、逮捕・勾留を避け在宅事件として捜査してもらうよう捜査機関に働きかけます。
また、すでに逮捕・勾留されている事件の場合、証拠隠滅のおそれがないことや定職・家族がいるため逃亡のおそれがないこと等を説得的に説明し、身柄拘束から解放するための弁護活動を行います。
横領・背任事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部へお問い合わせください。
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