会社内でのセクハラ行為が刑事事件に発展した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
東京都新宿区にあるベンチャー企業で管理職の立場にあるAさんは、同じ部署の20代の女性社員に対して、日常的にセクハラ行為を繰り返していました。
最初は「彼氏いるの?」とか、「最近、ご無沙汰なんじゃない?」といった言葉によるセクハラでしたが、女性社員が嫌がる素振りを見せないので、段々とエスカレートしてしまい、1ヶ月ほど前からは、身体を触ったりするようになりました。
そんな中、部署の懇親会が新宿区内の居酒屋でありました。
Aさんは隣に座った女性社員の体を触ったりしていましたが、酔払ったAさんの行動は、次第にエスカレートしていき、遂には飲み会の席で急にキスをしたり、遂にはトイレに行った女性社員に後ろからついていき、女性社員を無理矢理トイレに連れ込んでスカートの中に手を入れるなどしたのです。
女性社員が泣き出したことから、我に返ったAさんは、すぐに女性社員に謝罪したのですが、懇親会の翌日から女性社員は出勤しませんでした。
そして、事情を知った女性社員の家族から会社に苦情が入り、Aさんは退職せざるを得なくなったのです。
(この事件はフィクションです)
◇セクハラ行為が刑事事件化◇
セクハラとは、セクシュアルハラスメントの略称のことで、性的な嫌がらせや相手の意に反する性的な言動によって不利益を受ける職場でのハラスメントです。
厚生労働省によりますと、セクハラとは
①職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型セクシュアルハラスメント)
②性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に大きな悪影響が生じること(環境型セクシュアルハラスメント)
と定義されています。
かつては大きな問題にならなかったようなちょっとしたセクハラ行為であっても、最近は、大きな問題となり、Aさんのように職を辞さなければならないような大事に発展することも珍しくありません。
またセクハラ行為が、後述するような法律に触れるような場合は、被害者が警察に被害を訴えると、刑事事件化されることも珍しくなく、逮捕される方もいるぐらいです。
◇セクハラ行為で抵触する犯罪◇
セクハラ行為で成立する犯罪として考えられるものとしては
●強制わいせつ罪、強制性交等罪
相手の体を触ったり、今回の事例の様に急にキスをしたりといった場合には強制わいせつ罪となってしまう可能性があります。
そして、性交渉を迫ったような場合は強制性交等未遂となってしまうことがあります。
●傷害罪
セクハラ行為で、相手がうつ病などの精神病となってしまった場合には傷害罪となってしまう可能性があります。
実際にノイローゼが傷害として認定されて、傷害罪が成立した判例もあります。
●準強制わいせつ罪、準強制性交等罪
相手が酔っていたり、断れない状態に追い込んだりして、わいせつ行為や性交渉を行った場合は準強制わいせつ罪、準強制性交等罪となります。
●強要罪
相手に義務のないことを強要したとして強要罪となる可能性があります。
このほかにも侮辱罪や各都道府県の迷惑防止条例違反など、セクハラは刑事罰に該当する行為となってしまう可能性が高く、様々な法律に違反してしまう可能性があります。
◇セクハラの刑事弁護活動◇
セクハラは被害者が被害届を出すことで刑事事件化することが大半です。
そこで、被害者の方と示談を締結し、被害届を取下げてもらうことができれば、不起訴処分となる可能性が大きくなります。
ただ性的な被害を受けている女性被害者は加害者への処罰感情が非常に強く、加害者本人からの示談を受け入れてもらえる可能性は非常に低いでしょう。
そのような場合は、示談交渉のプロである弁護士に依頼するようにしましょう。
弁護士を通じて交渉することで被害者も話し合いに応じることが多いですし、示談することで、刑事告訴の取消しや被害届の取下げてもらうことがあります。
また、起訴されて、正式な裁判を受けることになったとしても最終的な刑事処分を軽減することができます。
被害者感情は様々ですので、被害者との示談を希望される方は、刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。