自首について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
東京都足立区に住むAさんは、出会い系サイトで知り合った女性を自宅に連れ込みました。
そこで性交渉を迫りましたが、女性に拒否されたことに腹を立てたAさんは、女性に暴行を加え、無理矢理交渉をしました。
性交渉の後、女性が「警察に訴える」と言い出したので、Aさんは女性から携帯電話を取り上げて裸にし、自宅が出て行けないようにしたのです。
このように女性の監禁を始めたAさんでしたが、時間が経つにつれて警察に逮捕されることが怖くなって、警視庁千住警察署に自首を考え始めました。
(フィクションです)
◇強制性交等罪◇
Aさんが被害者の女性に対して暴行し、無理矢理性交渉した行為は「強制性交等罪」となります。
強制性交等罪は、刑法第177条に規定された犯罪で、起訴されて有罪が確定すれば5年以上の有期懲役が科せられます。
昨年の刑法改正までは「強姦罪」とされていましたが、昨年から法律名が変わり、その内容も改正されました。
大きく変わったのは、これまで禁止されていた性交渉の幅が広がり、改正後は肛門性交や口腔性交までが禁止行為に加わったことと、客体が女性に限られていたのが、男性が加わり性別の区別がなくなったことです。
◇監禁罪◇
監禁罪は、不法に人を監禁した場合に成立する犯罪です。
監禁罪は逮捕罪と同じ刑法220条に規定されており、人の行動の自由を侵害する犯罪です。
起訴されて有罪が確定した場合、3月以上7年以下の懲役が科せられ、罰則規定に罰金刑はありません。
~逮捕罪との違い~
監禁罪と同じ刑法第220条には逮捕罪も規定されています。
監禁罪と、逮捕罪はどのように違うのでしょうか。
逮捕罪は、人の身体を縄で縛るなど、人の身体を直接的に拘束することで人の行動の自由を奪うことで成立する犯罪です。
他方、監禁は、一定の場所からの脱出を不可能にしたり、著しく困難によって成立する犯罪です。
監禁罪は、物理的に脱出を困難することだけでなく、心理的に脱出を困難にした場合も成立します。
したがって、Aさんのように、女性を裸にして自宅に閉じ込めておく行為も、施錠の有無にかかわらず監禁罪が成立するでしょう。
◇自首◇
自首とは、捜査機関に犯罪事実又は犯人が発覚する前に、犯人が自ら進んで自己の犯罪事実を捜査機関に申告してその処分に委ねることをいいます。
自首をすれば、法律上刑を減軽されることがあります(刑法42条)。
ただし、捜査機関に事実を申告したからといって、必ず自首となるかといえばそうではありません。
申告した時点ですでに、捜査機関にあなたが犯人であることが発覚している可能性もあるからです。
その場合は、一般的に出頭といわれ、自首のような恩恵、つまり法律上の減軽措置を受けることができません。
しかし、自首はもちろんのこと、出頭したことによって逮捕のリスクを軽減させることはできます。
逮捕は、罪証隠滅、逃亡のおそれが要件となるところ、自首・出頭によってこれらのおそれを軽減させることができるからです。
ただ、事案によっては、出頭したことにより逮捕される、という可能性も否定できません。
また、ご相談の中には、自首・出頭で刑事処分、刑事処罰を免れたいと言われる方もいますが、上記のように、自首とは捜査機関に刑事処分を委ねることをいいますから、刑事処分を免れることはできません。
しかし、刑事処分には不起訴処分も含まれますから、自首・出頭後に被害者側と示談交渉を行い、示談を成立させることなどできれば不起訴処分を獲得でき、懲役刑や罰金刑の刑事処罰を免れることができるかもしれません。