釈放とは
釈放とは、逮捕・勾留により、留置施設に身柄を拘束されている被疑者を解放することをいいます。
同じく身柄を解放する制度である保釈とよく似ていますが、保釈が起訴後勾留されている被告人を解放するための法律上の制度であるのに対し、単に釈放という場合は、起訴前に様々なケースで事実上拘束から解放されることを意味する点で異なります。
逮捕・勾留されると、警察署の留置場に留置されることになりますが、その期間外部との接触は制限されるため、勤務先や学校に行くことができません。
また、身柄拘束が長期にわたると、その分日常生活に戻るのが遅れるため、事件のことが周囲に知られたり、最悪の場合、会社に解雇されたり、退学といったことになりかねません。
そこで、弁護士は、被疑者が一刻も早く日常生活を取り戻せるよう弁護活動を行います。この際、できる限り早期に釈放に向けた行動を起こすことが重要となってきます。
釈放のメリット
・直ちに日常生活に戻れる
・弁護士との連絡が密にとりやすくなり、今後の弁護活動を行いやすくなる
・事件のことを知られるリスクが減る
起訴前の釈放
1 逮捕後、検察官送致前の釈放
警察は、犯罪の捜査を遂げた場合には、極めて軽微な事案を除いて検察官に事件を送致しなければなりません。
このとき、逮捕に至らずに送致する場合を一般に書類送検と呼びます。
これに対して、容疑者を逮捕した場合には、逮捕後48時間以内に書類や証拠物とともに身柄を検察官のもとへ送致しなければなりません。
留置の必要がない場合には、直ちに容疑者を釈放しなければなりません。
したがって、逮捕から検察官に事件送致が行われるまでの間では、その後に勾留の手続きがされないように、又は虚偽の自白がなされないように、弁護人と接見を行い防御活動の準備を行うことが大切です。
2 検察官送致後、勾留請求前の釈放
逮捕された事件が検察官に送致された場合、検察官は、身柄の受領後24時間以内に留置が必要か否かを判断し、留置を必要としない場合には直ちに被疑者を釈放しなければなりません。
反対に、留置が必要と判断する場合には、勾留の請求をするか直ちに起訴しなければなりません。
ただ、勾留をせずに直ちに公訴を提起すること(:起訴すること)は、実務上ほとんどありません。
勾留は、被疑者が住居不定であることや罪証隠滅の恐れがあること、逃亡のおそれがあることを理由としてなされます。
そこで、弁護士は、検察官に対して、これらの事由がないことを主張し、説得することで、検察官が勾留を請求しないように働きかけます。
3 勾留請求後、勾留決定前の釈放
検察官が勾留請求をした場合、勾留をするかどうかの決定は、裁判官が行います。
そこで、弁護士は、裁判官に対して、被疑者から聞き取った事情や収集した証拠資料とともに書面などをもって、勾留の理由や必要性がないことを主張します。
裁判官との面会や意見書の提出を通じて、弁護士が説得することにより、裁判官が勾留請求を却下すれば、被疑者は釈放されることとなります。
検察官の勾留請求が認められると、勾留延長を含め、最大20日間の身柄拘束となりますから、できる限り勾留を回避したいところです。
たとえ、捜査が継続するとしても、身体拘束下における場合とそうでない場合とで、今後の弁護活動の準備のし易さが変わってきますし、何より一刻も早く日常生活に戻れるという点で大きく異なります。
4 勾留決定後、勾留決定を覆すことによる釈放
裁判官から勾留決定が出された場合でも、これに対して不服を申し立てることが可能です。
裁判所が行った勾留決定が違法であることを主張して、取消しを求める不服の申立てを準抗告といいます。
ただ、一度、裁判官のした決定を覆すことを要求する手続きですから、ハードルは高く、認められる確率は低いのが実際のところです。
ですから、刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼するのが望ましいといえるでしょう。
5 最後に
勾留を避け、又は勾留から解放されるためには、勾留の理由となる事由が、存在しないことを検察官や裁判官に納得してもらわなければなりません。
ただ単に、証拠隠滅の恐れはないんだと主張するよりも、客観的な資料による裏付けがあったほうが説得的であることは間違いありません。
そのような資料を作成・収集するためには、できる限り時間があったほうがいいですし、被疑者から事件について十分に話を聞き、精査する必要があります。
そういった意味でも、早期に弁護士に相談していただくことが重要となるのです。
刑事事件では、上記のように手続きの段階ごとに身柄解放のチャンスがあります。
身柄解放自体が非常に困難な事件もありますが、そういった事件の種類の説明や見通しなども含めて、弁護士にご相談いただければと思います。
~刑事事件における身柄開放活動は、スピードが重要です。逮捕勾留されている場合のご依頼は、刑事事件・少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部へ。~