学校での火遊びが放火になった少年事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
事件
東京都文京区の私立中学校に通うA君は、授業の休み時間などに、友人と一緒に、ライターでティッシュペーパーに火を点け、それを振り回すなどして遊んでいました。
その際、A君は教室の床に引火させてしまい、消防車が出動する騒ぎになりました。火はすぐに消火されたものの四方約1平方メートルを焦がしてしまいました。
消防から警察に事件が報告されたことから、A君は友人と共に、警視庁大塚警察署に呼び出されて放火の容疑で取調べを受けています。
(フィクションです。)
ちょっとした悪戯が重大犯罪に?
火を使用すれば刑法上は放火の罪や失火の罪に問われかねません。
放火して、人がいる建造物等を焼損した場合は現住建造物等放火罪(刑法108条、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役)
に、
人がいない建造物等を焼損した場合は非現住建造物等放火罪(刑法109条、2年以上の有期懲役)
に問われる可能性があります。
また、
失火した建造物等を焼損した場合は失火罪(刑法116条、50万円以下の罰金)
に問われる可能性があります。
建造物等を全焼しなくても「焼損」
ちなみに、「焼損」の意義に関しては様々な説がありますが、判例は、
火が媒介物を離れて目的物に燃え移り、目的物が独立して燃焼を継続し得る状態に達すること
をいう独立燃焼説に立っています。この説によると、目的物全焼しなくても、その一部のみを燃やした場合でも「焼損」に当たることになります。
しかし、これでは木造建築の場合、放火罪の既遂時期が早くなりすぎてしまうとの批判から、
・目的物の重要な部分、あるいは本来の効用が失われたことが必要とする効用喪失説
・目的物の重要な部分の燃焼開始を必要とする燃え上がり説
・効用喪失説を基調としつつ、目的物が毀棄罪における損壊の程度に達することを必要とする毀棄説
が提唱されています。
退学処分の可能性は
お子さまが学校で非行を働いたという場合、
退学処分となるのではないか
と不安になられる親御様もおられるかと思います。そこで、学校教育法を確認すると、その11条では
校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。
とされています。そして、「文部科学大臣の定めるところにより」というのは、学校教育法施行規則のことを指しており、その26条1項から3項では
1項 校長及び教員が児童等に懲戒を加えるに当つては、児童等の心身の発達に応ずる等教育上必要な配慮をしなければならない。
2項 懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校長(大学にあつては、学長の委任を受けた学部長を含む。)が行う。
3項 前項の退学は、公立の小学校、中学校(学校教育法第七十一条の規定により高等学校における教育と一貫した教育を施すもの(以下「併設型中学校」という。)を除く。)、義務教育 学校又は特別支援学校に在学する学齢児童又は学齢生徒を除き、次の各号のいずれかに該当する児童等に対して行うことができる。
1 性行不良で改善の見込がないと認められる者
2 学力劣等で成業の見込がないと認められる者
3 正当の理由がなくて出席常でない者
4 学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者
とされています。つまり、3項によれば、公立の小学生、中学生等以外の同行1号から4号に該当した者を退学処分とすることができます。
この点、A君は私立中学校に通う生徒です。さらに、今回、放火に当たり得る行為をしていますから4号に当たる者と判断され、退学処分を受ける可能性があります。