液体状の「大麻」を所持?職場で懲戒免職になる?逮捕の可能性は?【前編】
2024年3月29日、海上自衛隊の弾薬整備補給所の海士長が大麻リキッドを使用していたとして懲戒免職処分になったという報道がなされました。
「大麻」は大麻取締法によって規制されており、所持や譲渡については刑事罰が科されます。
今回は、大麻リキッドの所持事案を基に、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説をします。
前編となる本記事では法律上で規定されている大麻の定義や大麻リキッドについて、後編では大麻使用による懲戒免職について解説していきます。
【事例】
※以下の事例はフィクションです。
Aさんは品川区高輪近くにある企業に勤めている会社員(20代・男性)でした。
Aさんには喫煙の趣味がありましたが、ある時ベイプショップという、電子タバコのようなものを売っている雑貨屋でタバコ用のリキッドを購入しました。
店員から聞くと「大麻の成分が入っているが、日本ではまだ合法なものです」と説明を受けたので、Aさんはそれを信じて購入しました。
後日、そのべイプショップが「違法大麻のリキッドを販売して摘発された」というニュースを見たAさんは「自分が持っているリキッドも違法なものなのではないか」と心配になり、弁護士に相談することにしました。
【法理上規制される「大麻」とは】
大麻取締法では、どのようなものが「大麻」として禁止されるのかを定義しています。
法律上大麻とは、「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品を指します。
ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。」とされています。
大麻草という葉っぱの状態だけでなく、収穫した大麻を原料にして生産した製品も法律上の大麻に該当するとしています。
そのため、たとえ葉や草のような状態でなくても、ペーストにしたものやオイルにしたもの、リキッド状にしたものについても大麻として大麻取締法による規制の対象になります。
このような「大麻」はTHC(テトラヒドロカンナビノール)という成分が含まれており、このTHCが人の脳に作用して様々な薬物作用を引き起こすため、人体に有害な薬物として規制の対象になっているのです。
大麻草のうち、大麻取締法の規制対象となっていない茎や種子には、違法なTHC成分が含まれていないとされています。
茎や種子にはCBD(カンナビジオール)という成分が含まれていて、CBD自体は未だ大麻取締法の規制の対象になっていません。
そのため、Aさんの事例のように、「大麻の成分を含んでいるけれども合法です」という製品があるのです。
ただし、大麻取締法については2023年12月にも改正があり、今後の法改正次第ではCBD成分についても規制の対象となることもありうるでしょう。
Aさんも、おそらく店員としてはCBDオイルのつもりで販売したのかもしれませんが、THC成分を含むものであった場合、Aさんは大麻の所持をしていたということになります。
【大麻リキッドの所持・使用で逮捕?】
たとえリキッド状であったとしても、Aさんが持っていたものが大麻の葉っぱに由来する製品であれば大麻取締法の違反が成立します。
2024年4月時点では、大麻の所持は大麻取締法違反として扱われ、リキッド等の使用自体は犯罪にならない扱いです。
しかしながら、2023年12月に法改正があったため、2024年のうちに大麻の所持と使用の両方が法律違反になることになっています。
新しい法律が実際に適用されることになると、これまで大麻取締法違反として扱われていたもののほとんどが麻薬及び向精神薬取締法の違反になります。
麻薬及び向精神薬取締法違反として扱われることになると、大麻についても使用罪が新設され、法律上も刑罰が重くなります。
これまでは「5年以下の懲役」とされていたものが「7年以下の懲役」になりますが、今後は、大麻そのものを持っていなかったとしても使用罪によって逮捕される事案が急増することが予想されます。
職務質問をした際に大麻そのものが見つけられなかったとしても、尿検査の結果で大麻を使用したことが分かれば、コカインや覚醒剤と同様にその場で逮捕ということになります。
厚生労働省などの研究によると、一般的に、大麻(THC)を吸引した後、1週間程度は尿から成分が排出されますが、常習的に使用していた場合には3か月程度排出されることもあるようです。
(参考:『厚生労働省』大麻由来製品の使用とTHCによる使用の立証について)
また、法律上も刑罰が重くなったことで逮捕される事案や早期の釈放が認められない事案があり得るでしょう。
大麻をめぐっては今後も法規制の動向を注視していく必要があります。
【大麻取締法違反事件を起こしてお困りの方へ】
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件に特化した法律事務所です。
大麻取締法違反事件についても、弁護活動を担当した実績を多く持つ経験豊富な弁護士が多数在籍しています。
東京都内で大麻取締法違反事件を起こしてしまったという方は、まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部までご相談ください。
ご相談・ご予約に関するお問い合わせは、24時間365日受付中の弊所フリーダイヤル(0120−631−881)にてお待ちしております。