盗撮事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
~事件~
会社員のAさんは、3日前に、東京都荒川区にある駅のエスカレーターで、女性のスカートの中にスマートフォンを差し入れて盗撮しようとしたところ、側にいた男性に制止されました。
慌てたAさんは、制止した男性を振り切って逃走しましたが、しばらくして不安になり駅に戻ると、駅前にパトカーが止まっており、制服の警察官と、Aさんを制止した男性が話をしていました。
再びAさんはその場を離れましたが、3日前の事件で警察に逮捕されるのではないかと不安な日々を送っています。(フィクションです)
~東京都内での盗撮事件~
東京都内で盗撮事件を起こせば、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反(以下「迷惑防止条例」とする。)となります。
迷惑防止条例は、東京都民の生活の平穏を保持することを目的に、様々な迷惑行為を禁止しており、盗撮行為もその禁止行為の一つです。
禁止されている盗撮行為は、公共の場所での盗撮だけでなく、盗撮する目的で、カメラを撮影対象に向けたり、設置する行為も禁止されています。
盗撮の法定刑は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。
~盗撮の未遂は犯罪ですか?~
Aさんは盗撮する直前に男性に制止されています。
そのため実際に女性のスカートの中を撮影することはできませんでした。
いわゆる盗撮未遂ですが、東京都の迷惑防止条例で禁止されている盗撮行為には未遂を処罰する規定はありません。
しかし、上記のように東京都の迷惑防止条例では、盗撮する目的で、カメラを撮影対象に向ける行為も禁止しているので、Aさんの行為は盗撮行為と判断される可能性が高いです。
また、盗撮行為に該当しない場合でも、東京都の迷惑防止条例には「卑猥な言動」を禁止した条文があります。
卑猥な言動とは、過去の裁判例からすれば「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作。被害者を著しく羞恥させ、不安を覚えさせる動作。」のことです。
過去には、女性の臀部をズボンの上から撮影した行為を、卑猥な言動と認めた裁判例があるので、実際に女性の下着が写っていなかったとしても、Aさんの行為は、卑猥な言動として東京都の迷惑防止条例違反に抵触する可能性が高いです。