~事件~
東京都北区の保育所のプールで、4歳の園児が溺れて死亡したのは、保育所の監視体制に過失があったとして、この保育所を管轄する警視庁王子署は、園長と保育士を業務上過失致死罪の疑いで書類送検されました。
(実際に起こった事件を参考にしたフィクションです。)
~業務上過失致死罪~
業務上過失致死罪とは、業務上必要な注意を怠り、人を死傷させた場合に成立する犯罪で、法定刑は5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。
この法律でいう業務とは、他人の生命身体等に危害を加えるおそれのある、本来人が社会生活上の地位に基づき反復継続して行われる行為です。
保育士や、その長である園長が、保育所で勤務することは当然「業務」に当たり、その業務において、園長には保育所内で事故が起こらないように管理、運営する責任が伴い、園児を直接監視する保育士には、園児の安全を確保するための注意義務があります。
実際に、今回の事件のように、園児の死亡という重大な結果が発生してしまう事故が発生すれば、管理、監視体制を問われる事となり、業務上過失致死罪という法律が適用されることは珍しくありません。
業務上過失致死罪では、過失の有無と、その過失行為と死傷という結果の間には因果関係がなければなりません。
事故が発生した時点に、結果回避の観点から要求される注意義務を尽くしていたか否かが検討され、結果に対する予見可能性があり、結果の回避が可能であると判断されると、その回避措置をとらなかったことが注意義務違反の内容として具体的に特定されます。
逆に、特定された結果回避のための措置をとっていても結果の発生が避けられなかった場合には、過失がないという判断となり、業務上過失致死罪の成立を避けれる可能性があります。
業務上過失致死罪は故意犯ではなく過失犯です。
警察での取調べ内容等が、法律の適用に大きく左右されるので、業務上過失致死罪で警察の取調べを受ける際は、事前に、刑事事件に強い弁護士にアドバイスを受けることをお勧めします。