【報道事例】改正刑法施行前に起きた強制わいせつ事件適用される罪は?

【報道事例】改正刑法施行前に起きた強制わいせつ事件適用される罪は?

令和5年7月13日に改正刑法が施行され、従来の強制わいせつ罪は不同意わいせつ罪に変更されました。
では、施行前に起きた強制わいせつ事件が改正刑法施行後に発覚した場合は、強制わいせつ罪と不同意わいせつ罪のどちらが適用されるでしょうか。

今回は、改正刑法の施行前に起きた強制わいせつ罪による刑事事件の報道事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が詳しく解説します。

【事例】

会社員の男性A(31)が路上で女子大学生V(20)にわいせつな行為をしたとして逮捕されました。

Aは、今年6月21日の午前0時半ごろ、文京区の住宅街の路上で帰宅途中のVに背後から抱きつき、胸を触るなどした疑いがもたれています。

警視庁によりますと、Aは犯行直前の夜に家を出たあと、自宅周辺の路上を徘徊する姿が防犯カメラに写っていて、取り調べに対し容疑を認め、「家庭のことでうまく行っていないことがあり、関係ない女性を困らせたかった」と供述しているということです。

Aが所属している会社は「弊社社員が逮捕されたことは誠に遺憾です」「捜査中のためコメントは差し控えます」としています。
(※Yahoo!JAPANニュース8月22日配信『「ライオン」社員を強制わいせつ容疑で逮捕「家庭でうまく行かず女性を困らせたかった」 東京・文京区の路上』記事の一部を変更して引用しています)

【強制わいせつ罪とは】

強制わいせつ罪とは、令和5年7月13日に改正刑法が施行される前に刑法第176条で以下のように規定されていました。

  • 旧刑法第176条(強制わいせつ)
    13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

強制わいせつ罪が成立するための「暴行又は脅迫」については、相手の反抗を抑圧する程度であれば足りると解釈されています。
殴る蹴るといった暴行はもちろんですが、「抵抗すれば殺す」などの脅迫が例として挙げられます。

【不同意わいせつ罪とは】

不同意わいせつ罪とは、令和5年7月13日に施行された改正刑法によって、従来の強制わいせつ罪から変更された内容です。
不同意わいせつ罪については、従来の強制わいせつ罪が規定されていた刑法第176条が以下のように変更されています。

  • 刑法第176条(不同意わいせつ)
    次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
    一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
    二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
    三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
    四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
    五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
    六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
    七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
    八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
  • 2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
  • 3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

強制わいせつ罪が不同意わいせつ罪に変更された際に変わったポイントは、大きく以下の3つです。

  1. 成立する要件としての行為が明文化され、処罰対象となる行為の範囲が拡大された(刑法第176条1項)
  2. 相手の誤信を利用したわいせつ行為も処罰の対象になった(刑法第176条2項)
  3. 相手の同意年齢が13歳未満から16歳未満に引き上げられた

他にも、婚姻関係であっても処罰の対象となることや、公訴時効が従来の7年から12年に延長されたこと、法定刑が懲役刑から拘禁刑に変更されたことなど、様々な点が変更されています。

【施行前に起きた強制わいせつ事件が施行後に発覚した場合】

今回の事例のように、改正刑法が施行後に発覚したが、事件が起きた日が改正刑法の施行前であった場合は、強制わいせつ罪と不同意わいせつ罪のどちらが適用されるのでしょうか。

結論から言うと、犯罪を実行した日が改正刑法の施行前であれば、施行後に発覚した場合でも、施行前の旧刑法の罪で処罰されます。

つまり、今回の事例で考えると、AがVに対して行った強制わいせつ事件は、改正刑法が施行される前の6月に起きているため、Aは強制わいせつ罪が適用されるということになります。

【不同意わいせつ罪で逮捕されてしまったら弁護士へ】

不同意わいせつ罪で逮捕されてしまうと、被疑者として扱われ、警察から検察へ身柄を送致されます。
検察に送致された後は、検察官が取調べを行い、被疑者を処罰するべきかどうかを判断します。

処罰を与える必要があると検察官が判断すると起訴されることになり、不同意わいせつ罪で起訴されると、裁判が開かれて拘禁刑を言い渡される可能性がある公判請求がされます。
公判請求されて仮に執行猶予がついたとしても、起訴された時点で前科が付いてしまうため、今後の人生に大きな影響が及ぶ可能性があります。
起訴を免れて不起訴処分を獲得すれば前科は付きませんが、不同意わいせつ罪で不起訴処分を獲得するためには、被害者との示談を締結することが重要になります。

ただ、不同意わいせつ罪で被害者と示談を締結する場合、被害者は加害者に対して強い恐怖心を抱いていることや厳しい処罰を望んでいる場合が多いため、当事者間で示談を締結することは極めて難しいです。
なので、不同意わいせつ罪で被害者と示談を締結したい場合は、弁護士に刑事弁護活動を依頼することをお勧めします。

弁護士が代理人として、被害者の感情に寄り添いながらスムーズに示談交渉を行うため、当事者間で示談を進めるよりも、示談を締結できる可能性が高まります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、様々な刑事事件で被害者と示談を締結して不起訴処分を獲得した実績を持つ弁護士が多数在籍しています。
不同意わいせつ罪に関する刑事弁護活動について、詳しく話を聞きたいという方は、24時間受付中の弊所フリーダイヤル(0120-631-881)までご相談ください。

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