Archive for the ‘暴力事件’ Category

暴行の相手が死亡 同時傷害の特例

2020-01-14

暴行した相手が死亡してしまった同時傷害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

◇暴行の相手が死亡◇ 

土木作業員のAさんは、同じ工事現場で作業をしている同僚と仲が悪く、普段からトラブルを繰り返しています。
その同僚と、先日偶然、豊島区にある行きつけの居酒屋で出くわしてしまい、口論になった後に、Aさんは同僚の顔面を複数回殴りつけてしまいました。
そして同僚は、Aさんに殴られて転倒する際に、偶然、そばにいた酔っ払いの服を掴んでしまい、酔っ払いの服を血で汚してしまいました。
服に血が付いたことに怒った酔っ払いは、Aさんに殴られて転倒した同僚の顔面を足で踏みつける暴行を加えました。
Aさんと、酔っ払いの暴行によって傷害を負った同僚は、救急搬送されましたが、頭部に重傷を負っており、その後死亡が確認されました。
通報によって駆け付けた警視庁池袋警察署の警察官によって傷害罪で現行犯逮捕されていたAさんは、その後、傷害致死罪で取調べを受ける事になりましたが、Aさんは、同僚が死亡した原因は、酔っ払いによる暴行が原因だと思っており、この罪名に納得ができません。
(フィクションです。)

~傷害致死罪と同時傷害の特例(刑法207条)~

本件では、Aさんに同時傷害の特例が適用され、傷害致死罪が適用されています。
同時傷害の特例とは、耳慣れない方も多いかもしれませんが、刑法207条によって規定されています。
刑法207条は、
・「2人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において」
・「それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは」
・「共同して実行した者でなくても、共犯の例による」
という、非常に特殊な規定になります。

刑法60条は、「2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と、共犯の中でも共同正犯について定めていますが、本来本条が適用されるには、2人以上の間に共謀が必要とされています。
刑法207条はこのような共謀がない場合にも、共同正犯が成立することを認める特殊な規定なのです。
さらに、本条は本来は検察官が負うはずの挙証責任を、被告人側に転換する(行為と結果の因果関係の不存在を被告人側に負わせる)点においても、特異な規定であり、学説上も批判が根強く主張されているところでもあります。

このような特例が置かれた趣旨については、傷害の結果が明らかであるにもかかわらず、当該傷害について誰も刑事責任を負う者がいなくなってしまう事態を回避するための特例との考え方が通説とされています。

この点、近年の判は、本条の適用に関し、まず「共犯関係にない2人以上」の「各暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するもの」であり、「同一の機会に行われたものである」場合には「各行為者において、自己の関与した暴行が傷害を生じさせていないことを立証しない限り、傷害についての責任を免れない」としました。
さらに上記判例は、「共犯関係にない2人以上の暴行による……刑法207条適用の前提となる事実関係が証明された場合には、いずれかの暴行と死亡との間の因果関係が肯定されるときであっても、各行為者について同条の適用は妨げられない」としています。

これは、207条は暴行と死亡結果の因果関係を問題とするものではなく、あくまで暴行と「傷害」結果の因果関係が不明な場合に適用される規定であることを示したものと考えられます(上述のとおり207条では、「その傷害を生じさせた者を知ることができないとき」という文言が使われています。)。
したがって、本件Aさんが「当該傷害を惹起する危険性」を有する暴行を、「同一の機会」に行ったと認められば、207条の適用を介して、傷害致死罪(刑法205条)の罪責を負う可能性が生じることになるのです。

~同時傷害の特例における弁護活動~

弁護士としては、本条の適用について、Aさんの暴行が本当に「同一の機会」によるものであるのかを検討する必要があるでしょう。
さらに、刑法第207条が因果関係の挙証責任を被告人側に転換している規定である以上、Aさんによる暴行と、同僚の傷害との結果の間に因果関係がないということを積極的に立証するという特殊な立証活動が求められることになります。
仮に、因果関係がないことが証明されれば、Aさんが負う刑事責任は傷害罪の程度にとどまることになり、その法定刑に大きな差が生じることになるため、弁護士の立証活動が重要になることは言うまでもありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部は、傷害致死(同時傷害の特例)事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
豊島区の刑事事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部の無料法律相談、初回接見サービスをご利用ください。

万引きが事後強盗罪に発展

2019-11-13

事後強盗罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

◇事件◇

大学生のAさんは、これまで何度か、池袋にある書店で、雑誌や文庫本等を万引きを繰り返しています。
お店に警戒されていたAさんは、先日、同じ書店で万引きしようと、持っていた手提げかばんに商品を隠して、レジを通らずに店外に出たところ、書店の店員に腕を掴まれたAさんは、逮捕を免れるために、この店員を突き飛ばして逃走しました。
店員は転んだ時に腕をついて、腕を骨折したようですが、この事実をAさんは知らず、そのまま自宅に逃げ帰りました。
しかし、その日の夜に自宅を訪ねてきた警視庁池袋警察署の警察官に事後強盗罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)

◇事後強盗罪~刑法第238条~◇

窃盗の既遂又は未遂の犯人が

①犯行後に、窃盗品を取り返されるのを防ぐために
②逮捕を免れるために
③罪跡を隠滅するために

の何れかの目的で、犯行を抑圧するに足りる程度の暴行、脅迫をすれば「事後強盗罪」となります。
事後強盗罪は、刑法第238条に定められた法律で、強盗罪と同じ「5年以上の有期懲役」が法定刑として定められています。

~主体~

上記したように、事後強盗罪の主体となるのは窃盗犯人に限られます。
窃盗行為が既遂に達することまで必要とされませんが、少なくとも窃盗の実行に着手していなければなりません。
今回の事件では、Aさんが、支払いの済んでいない商品を店外に持ち出している時点で窃盗(万引き)行為は既遂に達しているので、Aさんは事後強盗罪の主体となり得ます。

~目的~

事後強盗罪は

①盗品を取り返されるのを防ぐ
②逮捕を免れる
③罪跡を隠滅する
の何れかの目的で、暴行、脅迫を加えることで成立する犯罪で、いわゆる目的犯です。

①盗品を取り返されるのを防ぐ
窃盗によって得た財物を、被害者等に取り返されるのを防ぐことです。

②逮捕を免れる
正に、Aさんの行為がこれに当たります。
窃盗犯人が一時的に捕まってしまったとしても、その身体拘束の状態から逃れるために暴行、脅迫を加えることです。

③罪跡を隠滅する
後日、窃盗犯人として捜査機関に検挙されることになる物証等を隠滅する意図で、他人に暴行、脅迫を加えることです。
例えば、万引き犯人が逃走する際に、自身の身分証の入った財布を店員に取り上げられてしまった場合、この財布を取り返すために店員に暴行、脅迫を加えれば、これに当たります。

~居直り強盗~

「居直り強盗」は、窃盗の最中に被害者に気付かれたために、その目的(窃盗の目的)を達するために被害者に暴行、脅迫を加える犯罪です。
一見すると居直り強盗は、事後強盗罪のように思われますが、居直り強盗犯は上記3つの目的で被害者に暴行、脅迫するのではなく、あくまで財物の奪取が目的ですので、事後強盗罪ではなく、刑法第236条に規定されている強盗罪が適用されます。

~事後強盗罪の成立要件~

事後強盗罪は、法的には強盗罪と同一だと考えられています。そのため、財物奪取と暴行、脅迫の間には密接な関連性がなければなりません。
原則として、窃盗行為と、暴行、脅迫が行われたことには、時間的、場所的な接着性が要件となりますが、多少の時間的、場所的隔離がある場合であっても、窃盗の現場の継続的延長があるとみられる状況の下で暴行、脅迫が行われた時は、事後強盗罪が成立する可能性があります。

~「既遂」「未遂」の基準~

事後強盗罪の「既遂」「未遂」の判断は、窃盗行為が既遂に達しているかどうかで判断されます。
ですから、万引きしようとした窃盗未遂犯が、店員に捕まりそうになって、店員に暴行して逃走した場合でも、逮捕を免れるという目的は達していますが、窃盗行為が未遂なので事後強盗未遂罪となります。

ちなみに、暴行によって相手に傷害を負わせた場合は、強盗致傷罪(刑法第240条)が適用されます。

池袋の刑事事件でお困りの方、事後強盗罪でお困りの方は、東京で刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部にご相談ください。
初回法律相談:無料

あおり運転が刑事事件化

2019-09-12

あおり運転が刑事事件化された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

2年前に起こった「東名高速道夫婦死亡事故」以来、あおり運転が社会問題となり、警察等の捜査当局は「あおり運転」の取締りを強化しています。
通常のあおり運転は、道路交通法の車間距離保持義務違反での摘発を受けますが、昨年の摘発件数は、全国で1万3000件と、前年度の1.8倍にも及んだようです。
また、悪質なあおり運転刑事事件化されるケースは全国的で後を絶たず、つい最近も常磐自動車道におけるあおり運転事件が世間を騒がせました。
そこで本日は、東京の刑事事件に強い弁護士が、あおり運転が刑事事件化された場合の適用罪名について解説します。

◇暴行罪◇

あおり運転が社会問題化されて、警察庁は、全国の警察に対して、道路交通法違反だけでなくあらゆる法令を適用して、あおり運転の取締りを強化するよう指示しました。
そんな中、あおり運転が刑事事件化された際に適用される可能性が最も高いのが「暴行罪」です。
暴行罪は、刑法第208条に定められた犯罪で、その法定刑は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
暴行罪でいう「暴行」の行為とは、代表的なもので、殴る、蹴る、突く、投げ飛ばす等、身体に対する物理的な有形力の行使ですが、直接的に身体に触れなくても、相手の五官に直接間接に作用して不快ないし苦痛を与える性質のものであれば暴行罪でいう「暴行」行為に該当する可能性があります。
走行中の車に急接近したり、走行中の車の前方で急ブレーキを踏んで衝突させようとする行為は、ドライバーの感情的に「接触するかも」という恐怖を感じるもので、暴行罪の暴行行為に当たる可能性は極めて高いでしょう。

◇危険運転致死傷罪◇

あおり運転が社会問題化される原因となった「東名高速道夫婦死亡事故」は、危険運転致死傷罪が適用され、第一審では有罪判決(懲役18年)が言い渡されています。※被告人の控訴中
危険運転致死傷罪とは、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条に規定されている犯罪です。
通常の交通(人身)事故は、過失運転致死傷罪が適用されますが、故意の危険運転によって交通事故を起こし、被害者を死傷させた場合は罰則規定の厳しい危険運転致死傷罪が適用されることとなります。
危険運転致死傷罪の法定刑は、被害者が死亡した場合「1年以上の有期懲役」で、被害者が傷害の場合「15年以下の懲役」ですので、過失運転致死傷罪の法定刑が「7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」であるのと比べると、非常に厳しいのが分かります。

◇殺人罪◇

昨年7月に大阪府堺市で起こった、あおり運転による交通死亡事故には「殺人罪」が適用されています。
殺人罪は、殺意(故意)をもって人を死に至らしめることで、その手段・方法に制限はありません。
殺人罪は、人の命を奪うという結果の重大性から、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役と、非常に厳しい法定刑が定められています。
この事件では、あおり運転から逃げるために、加速して走行する被害者(バイク)を、被告人(車)が加速して追随し、衝突の直前に、急ブレーキや急ハンドルといった衝突を回避するための行動をとらずに衝突していることや、衝突後も、すぐに停止することなく数秒間走行を続け、その後「はい、終わりー」とつぶやいていることから、被告人が、衝突すればバイクが転倒し、それによって運転手が死亡する危険性があることは十分に認識できたにもかかわらず、故意的に車を衝突させて被害者を死亡させたとして、未必の故意による殺人罪が認定されました。
この事件では、第一審で「懲役16年」の有罪判決が言い渡されて、被告人が控訴していましたが、つい先日、被告人の控訴は破棄されています。

◇強要罪◇

最近世間を騒がせた常磐自動車道におけるあおり運転事件では、走行中の車の前で急停車した車の運転手が「強要罪」で逮捕されています。
あおり運転で「強要罪」が適用されたのは全国で初めてではないでしょうか。
強要罪とは、刑法第223条に規定された犯罪です。
その内容は「 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害する」ことで、法定刑は「3年以下の懲役」です。
前述したように、これまであおり運転については「暴行罪」が適用されるケースがほとんどでしたが、今回は、その暴行行為によって、被害者が、義務のない停止行為を強いられたとして強要罪が適用されたのでしょう。
強要罪の法定刑は、暴行罪に比べると厳しく罰金刑の規定もありません。

2年ほど前から取締りが強化されているにもかかわらず、あおり運転による事件が後を絶ちません。現在はあおり運転自体を禁止する法律が存在しないために、状況に応じて様々な法律が適用されていますが、新たにあおり運転を規制するための法律を新設する動きもあります。

東京都内の刑事事件に強いと評判の「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」では、東京都内で起こったあおり運転の刑事事件に関する法律相談を無料で受け付けております。
刑事事件専門の弁護士による無料法律相談をご希望の方は、フリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中)までお気軽にお電話ください。

処分保留で釈放

2019-08-01

処分保留の釈放について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

◇事件◇

東京都小平市に住む主婦のAさんには、小学校2年生と4年生の子供がいます。
子供が言うことを聞かないことに腹を立てたAさんは、日常的に子供たちに対して手を上げて躾(しつけ)をしていました。
そして、その躾(しつけ)がいき過ぎてしまい、ある日Aさんは、兄弟喧嘩を止めに入った際に、子どもたちを殴りつけてしまい、二人の子供の顔にアザができるほどの怪我を負わせてしまったのです。
翌日、子供たちの顔にアザができていることに気付いた小学校の先生が、児童相談所に通告し、子供たちは児童相談所に保護されてしまいました。
そして、1週間ほどして、Aさんは子供たちに対する傷害容疑警視庁小平警察署逮捕されてしまったのです。
Aさんは20日間勾留された後に、処分保留で釈放されました。
(フィクションです。)

◇躾(しつけ)のつもりが刑事事件に発展◇

躾(しつけ)として子供に対して手をあげることが、昔であれば、親として当然の行為だと肯定される場合がありましたが、最近は、虐待として刑事事件化されるケースが増えているようです。
特に、学校等から児童相談所に報告された場合は、児童相談所の職員が被害者となる子供から聞き取りを行い、暴行の事実が確認されれば管轄警察署に報告されるようです。
そしてその間、子供は児童相談所に保護されるケースがほとんどで、親御さんは、子供が帰宅しない不安の中で、警察の捜査を受けることとなり、Aさんのように逮捕されることも珍しくありません。
逮捕されるかどうかは、警察等の捜査当局が、裁判官に対して逮捕状を請求する否かによりますが、その判断は、逮捕の要件や必要性に加えて、子供に対する暴行の頻度や程度、子供の傷害の程度によって検討されているようです。親子という何より身近な関係であるが故に、罪証隠滅におそれが強いと判断されて逮捕されることもあるようです。

◇暴行・傷害事件◇

親の子供に対する暴力は「虐待」と表現され、教師の生徒に対する暴力は「体罰」と、そして上司から部下に対しる暴力は「パワハラ」と表現されていますが、何れのケースであっても、基本的に人に対する暴力は、刑事手続き上「暴行罪(刑法第208条)」が適用され、それによって相手が怪我をすれば「傷害罪(刑法第204条)」が適用されます。
※行為態様によっては、暴力行為等処罰に関する法律違反や、逮捕、監禁罪など別の法律が適用される場合もありますので、不安のある方は刑事事件に強い弁護士に相談してください。

~暴行罪(刑法第208条)~

人を暴行すれば「暴行罪」の適用を受けます。
暴行罪の法定刑は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。
躾(しつけ)のつもりでも、刑事事件化されて暴行罪の適用を受けた場合は、起訴されて有罪が確定すれば、この法定刑内で刑事罰を受けることとなり、前科が付いてしまいます。

~傷害罪(刑法第204条)~

暴行によって相手に傷害を負わせてしまえば「傷害罪」の適用を受けます。
「躾(しつけ)のつもりで手を上げた。怪我をさせるつもりはなかった。」と言いましても、故意的な暴行行為がある場合は傷害罪に抵触する可能性が非常に高いでしょう。
なお、傷害罪の法定刑は「15年以下の罰金又は50万円以下の罰金」ですので、起訴されて有罪が確定すれば、この法定刑内で刑事罰を受けることとなり、前科が付いてしまいます。

◇処分保留◇

警察等の捜査機関から事件(被疑者)の送致を受けた検察官は、起訴するかどうかを判断します。

~起訴~
起訴された場合は、公開される裁判(公判)で刑事処分が決定する場合と、罰金を支払えば裁判は行われずに、全ての刑事手続きが終了する略式起訴(罰金)の場合があります。

~不起訴~
検察官が起訴しないことを「不起訴」といいます。
不起訴の理由は様々ですが、不起訴は、刑事罰が科せられないことを意味しますので前科は付きません。

~「処分保留」とは?~
被疑者が、勾留によって身体拘束を受けている場合、その勾留期間は10日~20日と法律で決まっています。
そして検察官は、この勾留の満期時に起訴するか否かを決定しなければなりません。
しかし、様々な事情(主に起訴するだけの証拠が揃っていない)があって検察官が勾留の期間内に、起訴するかどうかの決定ができない場合に「処分保留」となって、勾留されていた被疑者は釈放されます。
「処分保留」となった場合は、その後も引き続き捜査が継続されて、新たな証拠が出てきた場合には、起訴されることもありますが、既に被疑者が釈放されていることもあり、捜査を尽くしても、新たな証拠が出てくる可能性は低く、最終的には不起訴処分になるケースがほとんどのようです。

小平市で、子供に対する躾(しつけ)が刑事事件化されてしまった方、警察に逮捕、勾留されている方の、処分保留による釈放を希望される方は、東京都内の刑事事件を専門に扱っている「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」にご相談ください。
初回法律相談:無料

町田市の殺人事件で逮捕

2019-07-10

町田市の殺人事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

◇事件◇

昨日、東京都町田市のマンションで、友人の首を包丁で刺して死亡させたとして、20代の男性が殺人未遂容疑現行犯逮捕されました。
その後、搬送先の病院で被害者男性の死亡が確認されたことから、警察は、逮捕した男性の容疑を殺人罪に切り替えて、詳しい動機等を調べています。
(令和元年7月8日配信の産経新聞ニュースを参考)

◇殺人罪◇

刑法第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以下の懲役に処する。(刑法抜粋)

殺意をもって行為に及び、その結果、人を殺せば殺人罪に問われます。
殺人の行為は、その手段・方法に制限はなく、およそ他人の生命を断絶し得る手段・方法を用いた一切の行為が、殺人罪の実行行為となり得ます。

~殺意~

殺人罪が成立するには、行為者に「殺意」がなければなりません。
殺意とは、いわゆる殺人の故意のことで、これは確定的なものに限られず、未必的なものであっても、条件付きのものや、概括的なものであってもよいとされています。

◇殺人の例◇

~不作為による殺人~

幼児を養育する義務を負う者が殺意をもって、殊更にその生存に必要な食物を与えず、死に至らしめような場合。
この様な事件の場合、保護責任者遺棄致死罪殺人罪のどちらが成立するかで議論があるかもしれませんが、殺意をもって養育を放棄していれば殺人罪が成立することとなるでしょう。(平成22年に大阪市西区のマンションで、3歳と1歳9か月の幼児を自宅に残して外出を繰り返し、幼児を餓死させた母親に対しては殺人罪が適用されて確定している。)

~間接正犯による殺人~

医師が患者を殺そうとして、薬と偽って看護師を使って毒薬を飲ませて患者を殺害したような場合や、被害者にその意思決定の自由を失わせるほどの威迫を加えて、被害者に自殺させたような場合でも、殺人罪に抵触する可能性があります。

~原因において自由な行為による殺人~

飲酒すれば共謀になって他人に危害を加える自覚がありながら、殺人を予期してあえて泥酔して心神喪失に陥って人を殺害する行為。

◇殺人罪で逮捕された後の流れ◇

殺人事件を起こして警察に逮捕されると、逮捕から48時間は警察の留置場に収容されて警察官の取調べを受けることになります。
そして、逮捕から48時間以内に検察庁に送致されるのですが、その送致から24時間以内には、裁判所に勾留を請求され、裁判官が勾留を決定すれば10日間~20日間は勾留によって身体拘束を受けて、取調べを受けることになります。
この取調べで、殺人に至った理由(動機)や、犯行の態様等を厳しく取調べられることとなるのです。
そして勾留の満期時に、検察官が起訴するか否かを決定し、起訴された場合は、保釈が認められない限りは、引き続き身体拘束を受けながら刑事裁判に臨むことになります。

◇弁護活動◇

①真犯人がいることの主張
信じられないでしょうが、全く身に覚えのない事件の犯人として警察に逮捕されてしまう場合もあります。いわゆる冤罪事件による誤認逮捕です。
そのような状況に陥った方は、早急に刑事事件に強い弁護士に相談する事をお勧めします。

②殺意がないことの主張
殺人罪の刑事裁判では、殺意の有無が争点となることがよくあります。
殺意が認められなければ、被害者の死亡という結果が生じていても、傷害致死罪等が適用される場合があります。

③正当防衛・緊急避難の主張
正当防衛や緊急避難行為の結果として被害者を殺害してしまった場合は、刑事罰を免れたり、減軽されたりする可能性があります。

④情状弁護
殺害行為に及んだ理由(動機)や、反省していることを主張するなどして、少しでも減軽されるように弁護活動を進めていくことができます。これを情状弁護と言います。

町田市の刑事事件でお困りの方、ご家族、ご友人が殺人罪逮捕されてしまった方は、刑事事件に強いと評判の、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、警察署に逮捕された方への初回接見サービスをフリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中)で承っております。
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傷害罪の前科を回避

2019-06-26

傷害事件の前科について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

◇事件◇

大学4年生のAさんはお酒に酔った勢いで、一緒に飲んでいた後輩の顔面を殴打して鼻を骨折させてしまいました。
事件を知った後輩の両親は激怒し、警視庁中野警察署に、Aさんを傷害罪で訴えました。
そのためAさんは、警視庁中野警察署に呼び出されて取調べを受けています。
すでに就職先から内定をもらっているAさんは、今回の事件によって前科が付く事を避けたいと思っていますが、どの様にしたらよいのか全く分かりません。
(フィクションです。)

◇前科とは◇

前科とは、一般に刑事事件として起訴され、刑罰が科せられた経歴のことをいいます。
これに対して、前歴というのは、捜査機関によって一定の捜査の対象になった経歴のことを意味します。
その他にも交通違反で反則金を支払ったなどの経歴である交通違反前歴というものもあります。ちなみに、過去に警察に補導されたり指導を受けたりしても、前科・前歴には残りません。

◇前科による不利益◇

~刑事手続き上の不利益~
刑事事件を起こしてしまい、罪に問われる場合、捜査機関は必ず容疑者の犯罪歴を調査します。
そして、容疑者に前科が付いていれば、その内容や犯罪歴の個数にも関係しますが、重い処分につながりやすくなります。
たとえば、万引きを繰り返し行ってしまった場合、同じような態様で行われたとしても、罰金処分、執行猶予付き判決、実刑判決とより重い処分へとつながりやすくなります。

~その他の不利益~
前科があることによって、一定の職業に就くことができなくなったり、資格の取得が制限される場合があります。
前科の有無や内容は、通常、一般には公開されませんし、本人であっても調査して確認することはできません。
しかし、報道機関などにより、一旦実名報道がなされてしまうと、ネット上に記事などが残っていることがあります。
履歴書などに前科を記載すると、当然就職活動は困難になるでしょうし、かといって企業が要求している場合に虚偽の記載をしてしまうと経歴詐称になってしまいます。
後にネット記事などによって犯罪歴を知られてしまうと解雇されてしまう場合もあるでしょう。

◇前科を回避するために◇

前科を避けるためには、捜査機関による事件化を防止するか、検察官に起訴しないで(不起訴処分)事件を終結してもらうことが必要です。
軽微な事件では、被害者との示談が成立し、被害届が出されないような場合では事件化を防ぐことが可能です。
しかし、事件が捜査機関により捜査の対象となってしまった場合には、検察官が起訴するかどうかの秤にかけられることになります。
検察官が起訴した場合の有罪率は、約99%ですから、無罪判決を勝ち取ることは非常に困難です。
その反面、送致事件のうち検察官の起訴率は40%程度ですので、約60%は不起訴処分で処理されているということになります。
ちなみに不起訴処分のうちの約90%は、起訴猶予となっています。
起訴猶予処分とは、犯罪の嫌疑はあるものの、訴追するまでの必要はないと検察官が判断した場合に下される処理のことです。

◇不起訴処分を得るための弁護活動◇

不起訴処分には、実際には罪を犯していないのに犯罪の嫌疑が欠けられてしまった場合にもなされますし、犯罪の嫌疑があっても訴追を必要としないと判断されてなされる場合(起訴猶予)もあります。
起訴猶予を理由とする不起訴処分の場合には、起訴・不起訴処分がなされるまでの限られた時間の中で、検察官に対して不起訴処分が相当であるということを説得的に主張しなければなりません。
そこで、捜査の早い段階から弁護士が積極的に弁護活動に取り組むことが非常に有用なのです。
具体的には、刑事裁判で有罪を勝ち取るには証拠が不十分であるとか、容疑者にアリバイがあること、すでに示談が済んでいること、被害弁償が終わっていること、被害届・告訴状の取下げがなされていることなど容疑者に有利な事情を示して検察官に不起訴処分にしてもらえるよう交渉していきます。
特に被害者がいる場合に示談が成立していることは、不起訴処分を勝ち取るためにも、刑罰を軽くするためにも非常に有利に働く事情です。
被害者が処罰を求めない以上、検察官としても刑罰をもって処罰するまでの必要性は乏しいのではないかと考えさせる契機になるというわけです。
また、親告罪の場合には、被害者と示談をして、告訴を取り下げてもらうことにより、確実に不起訴処分を得ることができます。

東京都中野区の刑事事件でお困りの方、傷害事件を起こしてしまって前科を回避したい方は、東京で刑事事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件に関するご相談は フリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中) までお気軽にお電話ください。

殺人事件の裁判員裁判

2019-06-24

殺人事件の裁判員裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

◇事件◇

会社員のAさんは、かねてから金銭トラブルのあった友人を、話し合いをするために自宅に呼び出しました。
そこで友人と口論になってしまい、Aさんは、テーブルの上にあった灰皿で思わず友人の頭部を殴打してしました。
そして更に転倒した友人に馬乗りになって頭部を連続して殴りつけて友人を殺害しました。
我に返ったAさんは、自ら110番通報し現場に臨場した警視庁原宿警察署の警察官に殺人罪で現行犯逮捕されました。
Aさんは、逮捕から起訴まで一貫して犯行を認めており、裁判員裁判が開かれることになりました。
(フィクションです。)

◇裁判員裁判◇

裁判員裁判とは
①死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
②短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪のうち故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件
については、通常の裁判官だけの裁判ではなく、裁判員も含めた裁判員裁判で審理が行われる刑事裁判です。
今回、Aさんが起訴された殺人罪の法定刑は「死刑若しくは無期若しくは5年以上の懲役」ですので、上記①に当たります。
裁判員裁判は、殺人事件や強盗致死傷事件だけでなく、通貨偽造事件や営利目的での薬物輸入事件、危険運転致死事件などの、基本的に国民の関心の高い事件が対象となっています。

◇裁判員裁判の特徴◇

通常の刑事裁判は、検察官や弁護士、裁判官という法律の専門家が中心となって行われますが、裁判員裁判は、国民の中から選任された裁判員が裁判官ととともに、刑事被告人が有罪であるか否か、どれくらいの刑を課すべきかを決めることとなります。
裁判員裁判は、原則として、裁判官3人裁判員6人の合議体で行われることとなります。
裁判員裁判は、一般人が裁判に参加することもあり、通常の刑事裁判とは異なり短期間に集中して行われ、第一回公判から判決の言い渡しまでは2週間もかかりません。
そのため、裁判員裁判が開始されるまでに、裁判の争点や証拠を整理する公判前整理手続が、必ず行われます。
公判前整理手続とは、第一回公判前に検察官・弁護人双方の主張すなわち事件の争点や証拠を整理する手続きのことで、この手続きには被告人も出頭することもできます。
公判前整理手続で、裁判の争点と証拠が整理され、被告人にとっては、検察官の手持ちの証拠を開示させることができるという利点があります。
裁判員裁判は、法律家以外がその審査に参加することから、法律的な要素だけでなく、裁判員の印象も、その後の判決に大きく影響すると言われています。
そのため、従来は証人尋問をせずに被害者や目撃者、被告人の調書を読み上げるだけで済まされていたのが、裁判員の前で証人として尋問するようになり、これまで調書で問題となっていた、供述者の供述の信用性についてしっかり尋問できるようになりました。

◇裁判員裁判の上訴◇

法律家の視点だけで裁かれる従来の刑事裁判では、杓子定規に当てはめたような量刑が言い渡されることがほとんどですが、裁判員裁判では、想定外の判決は言い渡されることも珍しくありません。
(実際の裁判員裁判では、薬物輸入事件で故意が認められないとして無罪判決が言い渡されたり、検察官の求刑意見よりも重い従来の量刑基準を逸脱した判決が言い渡されたりしている。)
当然、その様な想定外の判決に対しては、検察官側も、被告人側も控訴することができますが、裁判員裁判は一審だけであり、控訴・上告すれば裁判官のみで構成される裁判所により裁判されます。
一審の判決が重すぎるとして、量刑不当により刑が軽くなるケースがある一方で、検察官側が控訴して一審が無罪判決だったものが控訴審で有罪判決を下される可能性もあるのです。

裁判員裁判の刑事弁護は、従来の刑事裁判とは異なり、卓越した刑事事件専門の知識と、豊富な経験が必要となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、これまで数多くの刑事事件を解決に導いてきた実績と、豊富な経験がございます。
殺人事件を起こした方のご家族、ご友人の刑事弁護をご希望の方、殺人事件裁判員裁判に強い弁護士をお探しの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、無料法律相談、初回接見サービスのご予約を0120-631-881(24時間)にて受け付けておりますので、お気軽にお電話ください。

少年事件(逆送)

2019-05-29

少年の逆送事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

◇事件◇

私立高校を途中で退学したAさん(16歳)は、毎晩のように友人と遊びまわる生活をしていました。
そん中、渋谷区の繁華街で通行トラブルになったサラリーマンと喧嘩になってしまい、Aさんは、このサラリーマンを殴って死亡させる、傷害致死事件を起こしてしまいました。
犯行後、現場から逃走したAさんでしたが、テレビのニュースで、被害者が死亡したことを知って、両親と共に、警視庁渋谷警察署に出頭し、傷害致死罪逮捕されました。
Aさんは、20日間の勾留を経て、東京少年鑑別所に収容されました。
その間、事件は検察庁から家庭裁判所に送致されましたが、家庭裁判所の少年審判で逆送が決定し、再び検察庁に送致され、その後起訴されました。
Aさんの裁判が、裁判員裁判によって大人と同様に裁かれることを知った両親は、少年事件に強い弁護士を探しています。
(フィクションです)

◇逆送とは◇

逆送とは、家庭裁判所の審判において、刑事処分が相当であると判断されて、事件が家庭裁判所から検察官に戻されて送致されることをいいます。
逆送されれば、成人と同様の刑事手続に移行します。
正式起訴されれば、成人同様、正式裁判を受けなければなりませんし、裁判で有罪となり判決が確定すれば刑に服さなければなりません。

平成30年度版犯罪白書によれば、2087人の少年が逆送され、うち2028人の少年が起訴されています。
この数字を見れば、逆送された少年のほとんどが起訴されていることが分かります。
しかし、逆送された少年2028人の内のほとんどは略式起訴による罰金刑が言い渡されており、正式に起訴されて刑事裁判になった少年は187人にとどまります。
ちなみに、交通事故(過失運転致死傷罪等)など要保護性の認められない過失事件の場合、逆送されるケースが多いようですが、そのほとんどが略式起訴による罰金刑が確定しています。

◇どの様な事件が逆送されるの◇

逆送される少年の多くは
①少年が審判までに成人を迎えてしまう「年齢超過」による場合
②人の生命を奪う等の重大な事件を起こした少年で「刑事処分相当」と判断された場合
の何れかです。

~年齢超過~
「年齢超過」による場合とは、事件が家庭裁判所に送られ、調査・審判が行われている段階で、少年の年齢が20歳以上と判明した場合のことをいいます。(少年法19条2項、23条3項)
20歳以上かどうかの判断は、事件時ではなく、調査・審判の時点で判断されます。

~刑事処分相当の判断~
 「刑事処分相当」による場合とは、その名の通り、少年に刑事処分を科すのが相当であると考えられる場合のことをいいます。
少年法は以下の事件ごとに、いかなる場合に逆送すべきか規定しています。

◇原則として逆送される事件◇

故意の犯罪行為により被害者を死亡させる事件を起こした少年は原則として逆送されてしまいます。(少年法20条2項) 
殺人罪が典型となりますが、この他にも傷害致死罪、強制性交等致死罪、強制わいせつ致死罪、強盗致死罪、強盗殺人罪、危険運転致死罪などがあります。
ちなみに、交通死亡事故を起こした場合に適用される「過失運転致死罪」は、過失犯ですので「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪」には該当しません。
この罪の事件については、まず、罪を犯した時点で、少年の年齢が16歳以上であることが必要です。
また「犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるとき」は逆送しないと規定されていますので、絶対的に逆送されるとは限りません。

東京都渋谷区における少年事件でお困りの方、お子様が逆送される可能性のある刑事事件を起こしてしまった方、逆送事件に強い弁護士をお探しの方は、東京で少年事件に強いと評判の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
警視庁渋谷警察署までの初回接見費用:35,000円
東京少年鑑別所までの初回接見費用:37,100円

警視庁高輪警察署の裁判員裁判対象事件

2019-05-04

裁判員裁判事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

◇殺人未遂事件◇

港区の工事現場で働いていたAさんは、同じ現場で働いていた男性と仕事中にトラブルになりました。
最初は口論でしたが、相手の男性に胸倉を掴まれたことに腹が立ったAさんは、金属製の工具でこの男性の頭部を殴りつけてしまいました。
周りにいた作業員がAさんを制止している間に、殴られた男性はAさんから逃げようとしましたが、Aさんは、この男性の服を掴み、何度も男性の頭や、顔面、身体を殴打したのです。
制止していた作業員が、Aさんから工具を取り上げて暴行は収まりましたが、男性は頭蓋骨骨折等の重傷を負い、Aさんは、通報で駆け付けた警視庁高輪警察署の警察官に殺人未遂罪現行犯逮捕されてしまいました。
殺人未遂事件は、裁判員裁判対象事件で、Aさんは、警察署や検察庁で「殺意」を厳しく追及されています。
(フィクションです)

◇裁判員裁判対象事件◇

通常の刑事裁判は、裁判官が、起訴された被告人側の弁護士と、起訴した検察官の主張を聞いた上で、有罪か無罪かを判断し、有罪の場合はその処分を言い渡します。
しかし、一定の重い犯罪(裁判員裁判対象事件)については、一般市民から選ばれた裁判員6名が裁判に参加し、裁判官3人と共に審議して、判決が言い渡されるのです。
このような裁判のことを「裁判員裁判」と呼んでいます。

裁判員裁判対象事件
①死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる事件
②故意の犯罪により人を死亡させた事件(①に当たるものを除く)
です。
殺人罪や放火罪は①に当たり、傷害致死罪は②になります。
ちなみに、過失運転致死罪は、故意の犯罪ではありませんから、①②のいずれにも当てはまらず、裁判員裁判対象事件ではありません。
今回Aさんは殺人未遂罪で逮捕されています。
殺人未遂罪のまま起訴されてしまうと、被害者が死亡していませんが①に該当し、裁判員裁判となります。しかし、殺意が否定されて傷害罪で起訴された場合は、裁判員裁判を免れることができます。

◇裁判員裁判の流れ◇

裁判員裁判は、通常の刑事裁判とは流れが異なります。
通常の裁判では、法廷に裁判官・検察官・弁護人・被告人が出席したうえで、公開の法廷で議論が進められます。
これに対し、裁判員裁判では、実際の裁判が開かれる前に、公判前整理手続という手続きが行われます。
公判前整理手続とは、裁判員に実際に審理をしてもらう前に、裁判官・検察官・弁護人の三者により、本件事件の争点や、実際に裁判に提出する証拠を整理する手続きです。
このような手続きの中で、事件の争点や、重要な事実が整理され、裁判員には、最初から争点や判断の対象が提示されるようになっています。
公判前整理手続を経た事件の場合、この手続きが終結した後には、特別の事情がない限り新たな証拠の提出が許されなくなります。

◇殺人未遂罪で起訴されると~「殺意」を検証~◇

Aさんは、逮捕後に20日間の勾留を経て、殺人未遂罪で起訴されてしました。
そこでAさんに選任されている刑事事件に強い弁護士は争点を「殺意があったかどうか」に絞り争うことにしました。
殺人(未遂)事件の刑事裁判では、「殺意」が争点となることは珍しくありません。
それでは、そもそも「殺意」とはなんでしょうか?
殺意とは、加害者に被害者を殺害する意思があるかどうかです。
殺意は、加害者の意思なので、第三者が判断することは非常に困難でしょうが、刑事裁判において、主に殺意は
・加害者の供述
・犯行の状況(凶器の有無や、暴行の程度等)
・事件背景(犯行動機)
・犯行後の状況
によって認定されます。

今回の事件で、Aさんは
①金属製の工具を凶器としている。
②被害者の頭部に向けて暴行している。
③制止されても追撃している。
ので、客観的な状況から殺意が認定される可能性は高いでしょう。

裁判員裁判対象事件の刑事弁護は、刑事事件専門の弁護士に依頼することをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に取り扱っており、裁判員裁判を経験した弁護士も多数所属しておりますので、是非一度、ご検討ください。
殺人未遂事件等の裁判員裁判対象事件に関するご相談、ご家族、ご友人が裁判員裁判対象事件で警察に逮捕されてしまった方は、フリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中)までお気軽にお電話ください。
なお、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、ゴールデンンウィーク中も営業しておりますので、お気軽にお電話ください。
初回法律相談:無料
警視庁高輪警察署までの初回接見費用:36,600円

警視庁富坂警察署に窃盗被害を虚偽申告

2019-04-30

窃盗被害の虚偽申告事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

◇事件内容◇

東京都文京区に住む会社役員Aさん(50歳)は、火災保険の「犯罪被害の保証特約」に加入しています。
この保険は、自宅敷地内で犯罪被害にあった場合、その被害品等を保証してもらえる内容になっています。
そしてAさんは、この特約を悪用することを企て、自宅の駐車場に駐車していたオートバイを盗まれたと、管轄の警視庁富坂警察署に窃盗被害を虚偽申告しました。
すると、警視庁富坂警察署の警察官が自宅にやってきて、鑑識活動を行い、Aさんから聴取を行って被害届を作成したのですが、Aさんの態度を不審に思った警察官から追及を受けたAさんは、虚偽の被害申告である旨を白状してしまったのです。
(フィクションです。)

◇業務妨害罪◇

刑法第233条~偽計業務妨害罪~
偽計を用いて人の業務を妨害すれば偽計業務妨害罪となり、偽計業務妨害罪で起訴されて有罪が確定すれば「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられます。

偽計とは、人を欺き、あるいは、人の錯誤、不知を利用したり、人を誘惑したりするほか、計略や策略を講じるなど、威力以外の不正な手段を用いる事とされています。
簡単な表現で「人を騙す」といった行為も偽計に当たります。
つまり今回の事件で、虚偽の窃盗被害を警察に届け出る行為は、警察官を騙しているので、偽計業務妨害罪の「偽計」に該当すると言えます。
続いて「業務」について考えてみます。
一般的に業務妨害罪の「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して行う事務又は事業を意味し、営利の目的や経済的なものである必要はなく、精神的、文化的なものでもよいとされています。
ただ今回の事件の様な警察官の職務が、業務妨害罪の「業務」に当たるか否かについては諸説あります。
これは、警察官の職務は「公務」と位置付けられ、公務は公務執行妨害罪によって保護されている事から、偽計業務妨害罪により保護される「業務」との関係が問題になるからです。
かつて「公務」は、一切業務妨害罪の対象にならないという説が有力でしたが、警察官の職務を業務妨害罪の対象にしている判例も存在するので、現段階では、警察官の職務、公務が業務妨害罪の「業務」に当たるか否かは、明確に定められていないと言えます。
ただ昨年、警察官の前に覚せい剤に似せた白い粉をわざと落とした男の行為に対して、偽計業務妨害罪が適用されました。この事件の裁判で、弁護人は「警察官の業務は強制力のある権力的公務であり、偽計業務妨害罪の対象外である」として無罪を主張していましたが、裁判官は「公務であっても偽計業務妨害罪の対象と解釈すべきだ」と指摘して有罪判決を言い渡しています。(平成30年10月31日付の福井新聞記事を参考)

◇軽犯罪法違反◇

軽犯罪法第一条第16項で、虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出ることを禁止しています。
実際に発生していない窃盗事件の被害を警察官に申告する行為は、まさにこれに当たります。
軽犯罪法違反の法定刑は「拘留又は科料」と非常に軽いもので、情状によっては刑が免除されることもありますが、逆に勾留と科料が併科される場合もあります。

業務妨害罪が適用されるか否かの判断については、法律知識が豊富な刑事事件専門の弁護士からアドバイスを受ける事をお勧めします。
刑事事件を専門に扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、無料法律相談や、初回接見サービスのご予約をお電話で受け付けております。
東京都内の刑事事件でお困りの方は、お気軽にフリーダイヤル0120-631-881(24時間受付中)にお電話ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ゴールデンウィーク中の法律相談や初回接見サービスを承っております。
初回法律相談:無料

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