脱税目的の金の密輸事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
海外で購入した金を密輸して日本国内で転売すれば、消費税がかからず、相当な利益を得ることを知ったAさんは、海外で金を購入し、自身の体に巻き付けて東京国際空港(羽田空港)から入国しようとしましたが、税関のX線検査で見つかってしまい、逮捕されてしまいました。
(フィクションです)
◇金の密輸◇
本来、税金のかからない国で購入した金を日本国に輸入する場合、国内に持ち込む際に日本の消費税がかかってしまいます。
税金のかからない国で金を購入すれば、日本で購入するよりも消費税分安く購入できますが、国内に輸入する際に消費税がかかってしまうので、実際は同じ負担がかかります。しかし、密輸によって、この消費税の支払いを免れることができれば消費税分を、そのまま儲けることができることから、消費税が8パーセントに引き上げられた14年ころから金の密輸が多発しており、昨年は1000件以上の事件が摘発されています。
まもなく消費税が10パーセントに引き上げられることもあり、このような金の密輸事件が増加することが予想されるので、全国の税関では、都道府県警や検察庁、海上保安庁などと連携した取り締まりの強化を推進しています。
◇金の密輸は何罪になるの?◇
輸入消費税の脱税を目的に金を日本に密輸した場合は
①関税法違反(未許可輸出入等の罪)
②消費税法違反(消費税ほ脱罪)
③地方税法違反(地方税ほ脱罪)
の3つの法律に抵触することとなります。ただし、密輸した金を日本国内で売却し、その換金した現金を海外に密輸出した場合には、関税法上の無許可輸出入等の罪のみが成立することとなります。
~法定刑~
①関税法第111条(無許可輸出入等の罪)
5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金又はその併科
(貨物の価格の5倍が1000万円超の場合、価格の5倍までの罰金が科せられる)
②消費税法第64条(消費税ほ脱罪)
10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金
(脱税額が1000万円を超える場合は脱税額まで)
③地方税法第72条の109(地方消費税ほ脱罪)
10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金
(脱税額が1000万円を超える場合は脱税額まで)
◇密輸された金を買い取ると?◇
密輸された金を買い取ったらどうなるのでしょうか?
その場合も関税法違反(第112条第3項)が成立することとなります。
これは金の密輸入実行者のみならず、日本国内に密輸入された金が流通することを防止するための法律で、密輸品を譲渡等すれば、その法定刑は
3年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金またはその併科
(貨物の価格の3倍が500万円超の場合、価格の3倍までの罰金が科せられる)
です。
財務省の発表によりますと、金の密輸事件の摘発件数は、ここ数年で急増しており、今年は抑止の観点から、関税法が厳罰化されています。
国際線のある空港税関では、密輸入の取締りが強化されており、逮捕された場合は、早めに刑事事件専門弁護士のアドバイスを受け、的確な弁護活動を受けることをお勧めします。