背任罪とは?成立する行為や特別背任罪との違いは?
今回は、背任罪・特別背任罪について、事例をもとに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
【事例】
A大(東京都新宿区)の同窓会組織で一般社団法人「B会」の元職員が在職中、勤務実態がないのに会から給与約2000万円を受けた疑いが強まったとして、警視庁捜査2課は29日、一般社団法人法の特別背任容疑で、関係先の大学本部や江戸川区の産婦人科医院などを家宅捜索した。
捜査関係者らによると、疑いのある給与は、B会が運営する病院の職員だった50代女性Aに、2020年5月~22年3月に支払われた。
Aはこの間、B会から大学に出向する形で理事長の秘書業務などをしていた。
大学側からの給与と合わせて報酬を二重に得ていたが、B会本部や病院での勤務実態はなかったという。
捜査2課では、元職員や病院の事務長として給与の支払いを管理していた50代男性Cを特別背任容疑で調べている。
(※3月29日に『47NEWS』で配信された「勤務実態ない元職員に2000万円の給与…『元理事長は大学を私物化』東京女子医大めぐる特別背任容疑事件」の記事を一部変更・抜粋して引用しています。)
【背任罪とは】
背任罪は、刑法247条に規定されています。
- 刑法第247条(背任)
他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務の背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
247条が成立するためには、行為者が「他人のためにその事務を処理する者」であること(①)、そして「自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的(図利加害目的)」を行為者が持っていること(②)、「任務に背く行為」をしたこと(③)、「財産上の損害があること」(④)が必要です。
背任罪はその特殊性から、構成要件についての解釈も多岐にわたっていますが、本稿では判例に沿って当てはめていこうと思います。
【背任罪はB会のCさんに成立する?】
では、本件を見ていきましょう。
まず、Cさんは、元職員や第二病院の事務長として給与の支払いを管理していたので、他人であるB会のためにその事務を処理する者であると言えます(①)。
そして、任務に背く行為とは、一般に誠実な事務処理者としてなすべきものと法的に期待されるところに反する行為であると解されるところ、勤務実態がない職員に給与約2000万円を渡すことは、任務に背く行為であると言えるでしょう(③)。
また、財産上の損害とは全体財産の減少を言うと解されるところ、B会としては2000万円が失われていると言えるので、財産上の損害があると考えられます(④)。
最後に、②についてですが、この図利加害目的は、自己若しくは第三者の利益を図る目的、本人(本件ではB会)に損害を与える目的のことをいいます。
本件では、勤務実態のない職員に給与が支払われていたので、第三者の利益を図る目的があったと判断される可能性があります(②)。
以上から、Cさんに背任罪が成立する可能性があると考えられます。
そして、本件では特別背任罪の疑いでCさんは調べを受けています。
特別背任とは、背任罪が成立する人が一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の334条1項各号に該当するものである場合に、背任罪よりも重い法定刑を科す罪のことです。
- 第三百三十四条(理事等の特別背任罪)
次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は一般社団法人等に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該一般社団法人等に財産上の損害を加えたときは、七年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 設立時社員
二 設立者
三 設立時理事(一般社団法人等の設立に際して理事となる者をいう。第三百四十二条において同じ。)又は設立時監事(一般社団法人等の設立に際して監事となる者をいう。同条において同じ。)
四 理事、監事又は評議員
五 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された理事、監事又は評議員の職務を代行する者
六 第七十五条第二項(第百七十七条において準用する場合を含む。)、第七十九条第二項(第百九十七条において準用する場合を含む。)又は第百七十五条第二項の規定により選任された一時理事、監事、代表理事又は評議員の職務を行うべき者
七 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人
八 検査役
2 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は清算法人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該清算法人に財産上の損害を加えたときも、前項と同様とする。
一 清算人
二 民事保全法第五十六条に規定する仮処分命令により選任された清算人の職務を代行する者
三 第二百十条第四項において準用する第七十五条第二項又は第二百十四条第七項において準用する第七十九条第二項の規定により選任された一時清算人又は代表清算人の職務を行うべき者
3 前二項の罪の未遂は、罰する。
本件では、Cさんは7号の「事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人」に該当すると考えられます。
法定刑について、背任罪が5年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科しているのに対し、特別背任罪は7年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金を科しています。
【背任罪を疑われたら弁護士へ】
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