公務員が起こした暴行事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
◇事件◇
公務員のAさんは、東京都昭島市の繁華街の居酒屋において、隣席で飲んでいた男性と些細なことから口論になり、男性の左肩を右こぶしで一回殴ってしまいました。
店員の通報で駆け付けた警察官によって、警視庁昭島警察署に任意同行されたAさんは、取調べを受けましたが、その日のうちに帰宅することができました。
2回目の取調べがあるとのことなので、Aさんはその前に弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
◇暴行罪◇
今回の事件では被害者を傷害するに至らなかったので、Aさんは暴行罪の嫌疑をかけられていると思われます。
刑法第208条は、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」としており、人を殴った以上、怪我をさせなかった場合であっても、罪に問われることになります。
「暴行」とは、人の身体に対し不法に有形力を行使することを意味し、殴る、蹴る、突くはその典型例です。
また、通行人の数歩手前を狙って石を投げつける行為や、狭い四畳半の室内で日本刀の抜き身を振り回す行為なども、暴行にあたるとした判例があります。
◇Aさんの今後◇
Aさんは現在、逮捕されずに在宅で捜査されているので、警察から呼び出しを受け、取調べを受ける、という期間が続くと思われます。
最終的には検察官がAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを決めるので、検察から呼び出しを受けることもあります。
呼出しを正当な理由なく拒否すると、逃亡のおそれがあると判断され、逮捕されてしまうことがあります。
逮捕、勾留されると、最長23日間もの間身体拘束を受けるので、Aさんの社会生活に対する悪影響は計り知れません。
逮捕されるリスクを考えると、呼出しには応じた方がよいでしょう。
◇起訴された場合◇
起訴され、有罪が確定すると、刑罰を受けることになり、前科にもなります。
ケースにおいて無罪判決を獲得するのは極めて困難でしょう。
Aさんは公務員なので、有罪判決を受けると、勤務先からの評価にも悪影響を及ぼすおそれがあります。
禁錮以上の刑を受けた場合、当然に失職します(地方公務員法28条4項・16条2号、国家公務員法76条・38条2号)。
では、前科がつかないようにするには、どうすればよいでしょうか。
◇被害者と示談◇
事件を有利に解決するためには、被害者と示談することをおすすめします。
示談とは、当事者間における、事件解決に向けた合意のことをいいます。
通常、加害者が被害者に賠償金を支払うことを内容とします。
示談が成立すれば、当事者間で事件が解決したものと判断され、逮捕されるリスクを低減させることができます。
さらに、検察官がAさんを起訴するか、あるいは不起訴にするかを判断する際に、Aさんに有利な事情として考慮されることが期待できます。
不起訴処分を獲得できれば、裁判にかけられることがないので、前科が付かずにすみます。
◇示談交渉◇
示談契約は民事上の合意なので、Aさんが直接被害者と交渉し、示談を成立させることもできます。
ですが、Aさんが直接被害者と交渉することはおすすめできません。
そもそも、被害者の情報がわからないので接触しようがない、ということもありますし、警察は通常被害者さんの情報を当事者であるAさんには教えてくれません。
また、接触できたとしても、被害者に不当な示談金を要求されることも考えられます。
第三者が関わると、法律上有効でない示談となる可能性もあります。
お金を払うことで事件が解決できるならば…と、安易に示談を成立させるのは、Aさんにとっても利益ではありません。
そこで、法律の専門家である弁護士に、被害者との間に立ってもらい、示談交渉を任せることをおすすめします。
示談を成立させる場合は、弁護士が法的な観点から示談の条件が有効かつ妥当であるかをチェックします。
また、弁護士はそうした手続きの専門家であり、示談交渉に熟練していることから、Aさんにより有利な条件を引きだすことができる可能性が高まります。
是非、弁護士を通じた示談交渉をご検討ください。