~事件~
台東区で企画会社を経営するAさんは、取引先から詐欺罪で訴えられて、警視庁上野警察署の任意捜査を受けています。
先日、Aさんが不在時に、Aさんの会社を訪ねてきた捜査員が、Aさんの許可を得ているとして、Aさんの事務机から資料を取り出して、留守番をしていたAさんの妻に任意提出させました。
そのことを知ったAさんは、警視庁に返還を求めましたが、応じてもらえなかったので、違法捜査に強い弁護士に相談することにしました。(平成30年11月3日に配信された琉球日報の記事を参考にしています。)
警察は犯罪を立証する上で必要な証拠品を、その捜査の過程で押収します。
押収の手段は、捜索差押許可状による差押え、又は、所有者等からの任意提出若しくは、警察官による領置です。
~捜索差押許可状による差押え~
証拠品の押収は基本的に、裁判官が発する「捜索差押許可状」「差押許可状」によって強制的に行われます。
この許可状があれば、警察は、強制的に捜索し、証拠品を押収することができるのです。
~任意提出~
所有者や管理者等から承諾を得て押収するのが任意提出による押収です。
この場合「任意提出書」という書類が作成され、この書類に任意提出者は住所氏名等を記載し押印(指印)します。
当然、任意による押収方法なので、警察官から任意提出を求められた場合でも、それを拒否することができるのが特徴です。
~警察官による領置~
路上に放置されている証拠品など、任意提出者がいない場合に、警察官が押収することです。
警察等の捜査当局は、その時の状況や証拠品の種類に応じて、前記押収方法を使い分けており、人の家や、会社に保管されている証拠品に関しては、捜索差押許可状を得て捜索、押収するのが通常です。
それは、後に任意提出者が「警察官に強制的に押収された。」等と、任意提出を否定した場合、押収物が違法収集証拠となって、証拠品としての価値(証拠能力)を失う可能性があるからです。
刑事裁判において、捜査過程で押収された証拠品の証拠能力が争点となるのは、よくあることで、その場合、押収過程に違法な手続きがなかったか検証されます。
そして実際に、押収時の違法捜査が認定されて、証拠品の証拠能力が否定されることは珍しくなく、その様な場合は、無罪判決が言い渡されることもあります。