~東京都迷惑行為防止条例の改正経緯②~

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東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例、いわゆる迷惑行為防止条例の改正について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。

~平成15年の改正で違反行為が追加~

 平成13年の改正から2年連続で平成15年10月14日に再度条例が改正されることとなります。
 この改正では,
   第5条 粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止
に追加される形で,新しく
   第5条の2 つきまとい行為等の禁止
が加わりました。
 当時,全国的に恋愛感情のもつれからストーカーに,そして暴力行為に発展する事件が相次いで発生したことから,平成12年に「ストーカー行為等の規制に関する法律」が制定されるも,個人の安全な生活を守ることが,同法だけでは対処が困難であったため,条例でも規制することとなったのです。
 
「つきまとい行為等の禁止」とは,
第5条の2
 何人も、正当な理由なく、専ら、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、不安を覚えさせるような行為であつて、次の各号のいずれかに掲げるもの(ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成十二年法律第八十一号)第二条第一項に規定するつきまとい等及び同条第四項に規定するストーカー行為を除く。)を反復して行つてはならない。この場合において、第一号から第三号まで及び第四号(電子メールの送信等(ストーカー行為等の規制等に関する法律第二条第二項に規定する電子メールの送信等をいう。以下同じ。)に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下この項において「住居等」という。)の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限るものとする。
一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること。
二 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
三 連続して電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信すること。
四 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

第5条の2第2項
 警視総監又は警察署長は、前項の規定に違反する行為により被害を受けた者又はその保護者から、当該違反行為の再発の防止を図るため、援助を受けたい旨の申出があつたときは、東京都公安委員会規則で定めるところにより、当該申出をした者に対し、必要な援助を行うことができる。

第5条の2第3項
 本条の規定の適用に当たつては、都民の権利を不当に侵害しないように留意し、その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。
と規定されました。

 さらに,罰則については,
 第5条の2第1項(つきまとい行為等)は
   6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する
   常習として違反行為をした者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処する
と規定されました。

 また,小型カメラ等,科学力の発展により急増した盗撮行為について明文化されたのもこの年です。
 第5条「粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)」の罰則を定めた第8条2項に
   人の通常衣服で隠されている下着又は身体を撮影した者であるときは,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
と定められ,更に,常習的に違反した場合は
2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
と厳しい罰則が制定されたのです。

~平成16年 両罰規定の制定~

 さらに,つづく平成16年12月24日,世間がクリスマスムードに染まる中,条例の整備は続きます。
 長らく第8条までしかなかった条例に第9条「両罰規定」が追加されました。

 「第9条(両罰規定)」
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条第三項、第四項第五号若しくは第六号、第五項又は第六項の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、同条の罰金刑を科する。

普段から法律に携わる方でなければ「両罰規定」と聞いても,イマイチ,ピンと来ないかもしれません。
本来,日本の刑罰は「個人責任」が中心です。どの刑罰も「生きた人間」がすることですから,「実際に罪を犯した人に対して刑罰を科す」というのが大原則になります。
しかし犯罪というものは,時には組織的に行われることもあります。そこで,実際に罪を犯した個人だけでなく,「組織」として犯罪を行った場合には,その「組織」そのものに対して刑罰を科すべき必要が出てくるのです。この時,「生きた人間」ではなく,「組織そのもの」に対して刑罰を科すという規定が「両罰規定」になるのです。「生きた人間」と「目に見えない組織(集団)」の「両方」を罰するため,両罰規定という名前が付いているのです。
この両罰規定で想定されているのは,おもに悪質な客引き行為や売春の勧誘などです。例えば路上で客引きや路上スカウトをしたという場合,その者だけではなく,その客引きたちを束ねているスカウト会社等についても併せて処分をすることがあります。

~平成24年 痴漢行為,盗撮行為の明文化~

 平成24年になると再度,第5条「粗暴行為(ぐれん行為等)の禁止」が改正され,それまでの条例上,明確に記載されていなかった痴漢行為と盗撮行為が新たに付け加えられます。
 改正前の第5条1項は
   何人も,人に対し,公共の場所または公共の乗物において,人を著しくしゆう恥(=羞恥)させ,または人に不安を覚えさせるような卑猥な言動をしてはならない
(第5条2項以降は省略)
とされていました。
 ところが,今回の改正により
    何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。
    二 公衆便所,公衆浴場,公衆が使用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部もしくは一部を付けない状態でいる場所又は公共の場所若しくは公共の乗物において,人の通常衣服で隠されている下着又は身体を,写真機その他の機器を用いて撮影し,又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け,若しくは設置すること
    三 前二号に掲げるもののほか,人に対し,公共の場所又は公共の乗物において,卑猥な言動をすること
   (第5条2項以降は省略)
とされ,第5条1項第1号1では痴漢行為を,第5条1項第2号では盗撮行為を,第5条1項第3号では従来の粗野な言動等について規定され,罰則は変わりませんでしたが,それまでは事件化されなかったケースでも事件化され,処罰されてしまうことになったのです。

≪次回ブログに続きます。≫

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