強制わいせつ事件の時効について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
~事件~
Aさんは、8年前に東京都目黒区の路上で、帰宅途中の女性を襲う強制わいせつ事件を起こしました。
そして先日、時効直前で、Aさんは警察に逮捕されてしまいました。(フィクションです)
殺人罪や強盗殺人罪のように「人を死亡させた罪であって死刑に当たる罪」については公訴時効がありませんが、その他の犯罪については公訴時効があります。
公訴時効とは、どの様なものなのか、刑事事件に強い弁護士が解説します。
公訴時効とは
公訴時効とは、犯罪を終了してある一定期間経過すると、起訴を提起できなくなることです。
公訴時効の期間は、犯した犯罪の法定刑によって様々で、最長で30年(無期の懲役又は禁錮に当たる罪)、最短で1年(拘留又は科料に当たる罪)です。
ちなみに公訴時効は、犯人を逮捕するまでではなく、起訴を提起するまでの期間なので、逮捕から起訴までの捜査に要する時間を考えると、公訴時効が成立する2~3週間前に犯人を逮捕しなければ、検察が犯人を起訴するのは難しいでしょう。
公訴時効の停止
よく刑事ドラマなどで、犯人が海外に逃亡していた間は公訴時効が停止するといった描写がされていますが、実際に公訴時効が停止することはあるのでしょうか?
①犯人が海外に逃亡している間
②共犯者が起訴されて裁判が確定するまでの間
等は、実際に公訴時効の進行が停止します。
①の例としては、1970年に発生したよど号ハイジャック事件の犯人が、海外に逃亡している間に公訴時効が停止していたために、帰国後ハイジャック犯人が逮捕、起訴されています。
また②の例としては、1971年に発生した渋谷暴動事件の犯人大坂正明は、共犯者の裁判期間中に公訴時効の進行が停止していたために、事件発生から40年以上経過しても、逮捕、起訴されています。
DNA捜査に代表されるように、科学捜査技術の向上により、警察等の捜査能力は数年前に比べると格段に進歩しています。
数年前には、採取することができなかった事件現場に残された指紋やDNAが、今になって採取できたり、数年前には解析することができなかった防犯カメラ映像が鮮明化されたりして、事件から数年経過して犯人が特定されることも少なくありません。