実子に対する略取誘拐事件 

離婚協議中に実子を連れ去った略取誘拐事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。

事件の概要

東京都渋谷区に住む会社員男性のAさんは、妻と別居し、離婚裁判の係争中です。
ある日、Aさんは、子供となかなか面会させてくれない妻の態度に腹を立て、小学校から一人で帰宅する子供を見つけ、抵抗する子供の腕を引っ張って車の助手席に乗せ、自宅へ連れ去りました。
その後、妻の通報を受けた警視庁原宿警察署の警察官がAさん宅を訪れ、子供は保護されました。
そしてAさんは、警視庁原宿警察署に未成年者略取罪で逮捕されました。
(事実を基に作成したフィクションです。)

未成年者略取罪とは

まず、Aさんが逮捕された未成年者略取罪の内容から解説します。
未成年者略取誘拐罪は刑法224条に規定されている法律です。

刑法224条
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
※未成年者=20歳未満の者

刑法229条
第224条の罪(略)は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

「略取」とは、略取された者の意思に反する方法、すなわち暴行、脅迫を手段とする場合や、誘惑に当たらない場合でしかも相手方の真意に反する方法を手段として、未成年者を自分や第三者の支配下に置くこと、「誘拐」とは、欺罔(騙すこと)や誘惑を手段として、他人を自分や第三者の支配下に置くことをいいます。
「誘拐」と「略取」とをあわせて「拐取」ということもあります。

なお今回の事件では、子供がAさんの連れ去りに抵抗しており同意していないものと思われますが、未成年者が連れ去り行為に同意していた場合は未成年者略取罪は成立するでしょうか?
この点については、未成年者略取罪が何を保護しよう(守ろう)としているのかと関係があります。
すなわち、未成年者略取罪は、未成年者の自由のほか、親権者など保護監督者の監護権をも保護しようとしていると考えるのが通説、判例です。
よって、未成年者を誘拐した場合には、未成年者の行動の自由・権利を侵害するだけでなく、保護監督者が未成年を保護監督する自由・権利をも侵害したということになるのです。
そのため、未成年者が同意をしていたとしても、その保護監督者が同意しない以上は未成年者誘拐罪が成立し得るということになります。

共同親権者の子供の連れ去りに対する判例の考え

判例は、今回と同じような事件で、被告人の行為は、未成年者略取罪の構成要件に該当することは明らかとして上で、被告人が親権者の1人であることは、その行為の違法性が例外的に阻却されるかどうかの判断において考慮されるべき事情であると解されるとしています。
そして、違法性が阻却されるかどうかは、当該行為(連れ去り行為)が社会通念上許容されるものであるかどうかという観点から判断されるべきところ、判例での事案では、

被告人の連れ去り行為が、子どもの監護上必要とされるような特段の事情は認められない
・行為態様が粗暴で強引なものである
・子どもが自分の生活環境についての判断・選択の能力が備わっていない2歳の幼児である
・その年齢上、常時監護養育が必要とされるのに、略取後の監護養育について確たる見通しがあったとも認め難い

ことなどから、家族間における行為として社会通念上許容され得る枠内にとどまるものと評することはできず違法性を阻却する事情を認めることはできないとしています。

以上の判例の考え方からすれば、共同親権者の連れ去り行為が直ちに未成年者略取罪に結び付くものではなく、当該行為が社会通念上許容されるものである場合は違法性が阻却され本罪が成立しない場合もあります。
仮に、こうした主張をする場合は、その主張を基礎付ける事実を的確に挙げていかなければなりません。
だからこそ、弁護士に相談・依頼することが重要といえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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