家庭内の暴力事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部が解説します。
~事件~
東京都葛飾区に住む会社役員のAさんは、3日前に、妻と夫婦喧嘩をしてしまい、妻に対して殴る等の暴行を加えてしまいました。
妻は、家を出て友人のもとに身を寄せているようです。
Aさんは「家庭内の暴力事件など警察沙汰にならないだろう。」と思っていましたが、事件の翌日に、妻は、病院で診断を受けて、警視庁葛飾警察署に傷害の被害届を提出しており、Aさんは、警視庁葛飾警察署から呼び出しを受けました。(フィクションです。)
~家庭内の暴力事件~
かつては「家庭内の出来事は、家庭内で解決する」という観点から、夫婦間の暴力事件が警察沙汰になることはほとんどありませんでした。
しかし家庭内の暴力事件が社会問題になり始めた平成13年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(通常DV防止法)」が制定されたころからは、家庭内の暴力事件が刑事事件化されるようになり、最近は、負傷の程度が軽い暴行、傷害事件であっても逮捕されるなど、警察等の捜査当局は積極的な刑事事件化を図っています。
ちなみにDV防止法は、配偶者からの暴力の防止と被害者の保護を目的にした法律ですので、暴行した加害者に対する罰則規定はありません。
DV防止法で処罰規定が設けられているのは、接近禁止命令や退去命令(保護命令)が発せられている加害者が、その命令に背く行為で、保護命令違反には「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」の罰則が規定されています。
~傷害事件~
Aさんのように、配偶者に暴行し、傷害を負わせた場合、刑法第240条に定められた傷害罪が適用されます。
傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。
通常の傷害事件であれば、負傷の程度が軽い場合、逮捕される可能性は低く、警察署に呼び出されて不拘束で取調べを受ける刑事手続きとなることがほとんどですが、家庭内で起こった傷害事件の場合、警察等の捜査当局は、再発防止の観点から加害者を逮捕することが多々あります。
また一般的な傷害事件ですと、被害者と示談を手結することで不起訴処分となって刑事罰を免れれる可能性が高いですが、家庭内の場合は、当事者同士の感情が強いことから、当事者同士で示談を締結することが難しい傾向にありますので、配偶者に対する暴行、傷害事件で警察の捜査を受けている方は、一刻も早く刑事事件に強い弁護士にご相談することをお勧めします。