Archive for the ‘刑事事件’ Category
【解決事例】公務執行妨害で保釈申請
【解決事例】公務執行妨害で保釈申請
~事案~
Dさんは,日雇いの仕事をしながら,全国を転々と回っていました。
東京都内での仕事後,新宿駅の近くで飲酒したあと,近くの交差点でタバコを吸っていたところ,警察官から呼び止められ,職務質問を受けることになりました。
路上でタバコを吸っていたことを注意され,飲酒して気が大きくなっていたこともあり,Dさんはカッとなり,警察官と口論になったのです。
段々と,興奮してきたDさんを警察官がなだめようとしましたが,Dさんの怒りは収まらず,ついには,警察官の顔面に唾を吐きかけてしまいました。
そして,ついに,Dさんは公務執行妨害罪として,現行犯逮捕されることとなってしまったのです。
※守秘義務及び個人情報保護の観点から一部,事実と異なる記載をしています。
また,本件は新型コロナウイルス蔓延以前の事案になります。
~公務執行妨害罪とは~
公務員が職務を執行するに当たり,これに対して暴行又は脅迫を加えた者は,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
(刑法第95条)
公務執行妨害罪は,広く「公務員」であれば適用されるものの,この法律が保護しているのは,国家や公共団体の機能としての公務を公正かつ円滑な遂行であり,公務員一個人の身体の安全や意思決定を保護するものではないとされています。
つまり,警察官等が正当な職務執行を行っている際,その職務を円滑に遂行することを妨害してはいけないとしたものである一方,その人いち個人の感情によるもので執行してはならないとされています。
~逮捕の要件とは~
なにか,犯罪行為を行ってしまった際,直ぐに逮捕されてしまうのでしょうか。
捜査機関の捜査は原則,任意捜査(在宅捜査)で行わなければなりません。
任意捜査(在宅捜査)とは,身柄を拘束することなく,捜査を推進するです。任意捜査(在宅捜査)の被疑者として取調べを受けている間であって,学校に行ったり会社に行ったり,と,通常の社会生活を送ることができます。
任意捜査は,在宅捜査,在宅送致などとも言われることがあります。
では,どのような場合に逮捕されてしまうのでしょうか。
それは,「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」が認められた場合です。
まず,「逮捕の理由」とは,「ある者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」のことです。
たとえば,「盗んだ財布を持っていた」や,「被害者をバットで殴る様子が防犯カメラに写っていた」と言った時に,逮捕の理由が認められる場合があります。
「何か犯罪が起きた」ということと,「誰がその犯罪を起こしたのか(≒犯人が誰か目星がついている)」ということが分かった時に,「逮捕の理由がある」といえるでしょう。
次に「逮捕の必要性」とは,身柄を拘束しなければ,捜査を続けることが出来なくなってしまう場合等を指します。
具体的には,「犯人に逃走するおそれ」がある場合,「犯人が証拠を隠滅するおそれ」がある場合などがあたります。
また,逮捕し,強制捜査を開始するためには,一部例外を除いて,裁判所が発付した逮捕状を示さなければ身柄を拘束することは出来ないとされています。
ですが,今回のように現行犯逮捕となると,少しだけ毛色が異なります。
現行犯逮捕は捜査機関以外の一般人でも行うことが出来るのが一つの特徴です。
また,逮捕する要件が定められており,
1 犯罪と犯人の明白性
誰が,なんの罪を犯したのか,逮捕する側にとって明らかであること
2 犯罪の現行性,時間的接着性の明白性
犯人が罪を行い終わって,間がないことが明らかであること
の両方が揃っている場合に限り,犯人を現行犯逮捕することができるのです。
~職務質問は断れないのか~
警察官による職務質問を断ったからといって,すぐさま身柄を拘束されることはあり得ません。
そもそも職務質問とは,「犯罪の予防」「犯人の検挙」「犯罪の捜査」のためのものであり,警察官職務執行法第2条に
1項 質問権
2項 同行要求件
3項 強制の禁止
4項 凶器の送検
と,それぞれの方法や限界についてが明確に定められています。
また,あくまでも職務質問は警察官が市民の同意を得て行っている任意の警察活動であり,職務質問を受ける人が承諾しなければ実施することが出来ません。
職務質問を断るのに特に理由は必要なく「質問に答えたければ答えても良い」というものなのです。
しかしながら,何らかの嫌疑により職務質問を受けた場合には,公共の安全と福祉のため,不審点を解明することが警察の責務である以上,嫌疑が晴れるまで,職務質問が継続されることもあります。
疑われる要因が何もないのであれば断ることもできます。ただし,もし,何らかの嫌疑がかかっていた場合,職務質問を断ったことが,「逃走したり証拠を隠滅したりするかもしれない」という新たな疑いに変わってしまい,身柄が拘束される可能性もある,ということは覚えておいた方が良いかもしれません。
~当事務所の活動~
Dさんが逮捕されたことを知ったDさんのお母様から,当事務所に依頼を頂き,Dさんの下へ弁護士が向かいました。
既に逮捕されてから時間がたっており,Dさんには国選弁護士もいたようですが,国選弁護士からご家族への報告や連絡等もなく,また,Dさん自身も国選弁護士さんに対してはやや不信感を抱いているようでした。
Dさんは前科前歴もなく,初めて留置場にはいったことから酷く憔悴している様子でしたが,当所の弁護士が接見に行ったことで,安心した様子でした。
弁護士がさらに詳しく話を聞いてみたところ,Dさんは,警察官の職務質問を受けたこと,路上喫煙を注意されたことについては真摯に認め,自身の軽率な行いについて反省している様子でした。
ただし,今回,警察官に対し唾を吐きかけたり,警察官の職務を妨害したりした,という点については,「自分はそんなことをしたつもりはない」とのことでした。
そこで,事実関係を明らかにすることはもちろん,先ずは,Dさんの心身の健康のために,身柄拘束を解くことを第一とし,活動を始めました。
裁判所に対して,今回の事件において証拠が隠滅されるおそれはなく,また,事件そのものの性質としても特別重い犯罪ではないことを根気よく説明し,交渉していきました。
当初は保釈申請を棄却されていましたが,そこで諦めることなく,当所弁護士が再度粘り強く説得を行い,ついに,逮捕時には住所不定の状態とみなされていたにも関わらず,Dさんは保釈されることとなったのです。
また,特に警察官に対する公務執行妨害罪は,捜査においてその他の犯罪と異なる点があります。
一般の方よりも法律に精通している警察官が被害にあったその時から,事件の立件をするために初動捜査を尽くすことから,加害者に不利な証拠が早い段階から揃いやすい点です。
被害に遭った警察官本人が,「どうやったら加害者(被疑者)に犯罪が成立しやすいか」を分かっているからこそ,より不利な証拠が見つけられやすいということです。
そして,証拠が早い段階から揃うということは,取調べを受ける時も加害者の供述の一つ一つが重要になってきます。
どちらとも捉えることができる供述では,どんどんと追及を受けることにもなり,心理的な負担がかなり大きくなることが想定されます。
そのため,もし,逮捕されてしまった場合,いち早く当あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部へご相談いただくことをお勧めいたします。
当所では,刑事事件を専門に数多く扱ってきた経験豊富な弁護士から,処分の見通しや今後の手続きの流れについて早い段階で聞くことができ,その後の手続きに落ち着いて対応することができます。
また,取調べの対応方法や供述内容に対するアドバイスを受けることで,誤解を招くような供述を避けることが出来ます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部の弁護士は日頃より刑事事件のみを受任し,数多く扱ってきた実績がございますので,どのような事件でも安心してご相談頂けます。
東京都内で職務質問中の公務執行妨害罪などで逮捕されてしまい,保釈について知りたいという方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部にご連絡ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部では初回無料法律相談も行っておりますので,お困りの方は,0120-631-881までお気軽にお電話ください。
【解決事例】住居侵入・不正アクセス禁止法違反事件と未決勾留期間
【解決事例】住居侵入・不正アクセス禁止法違反事件と未決勾留期間
住居侵入罪・不正アクセス禁止法違反で逮捕・勾留された場合の罪と、未決勾留期間について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都文京区在住のAさんは、男女の関係にあった被害者Vさんが別の相手とも関係を築いていたことに憎悪の念を抱き、Vさんの周辺情報を嗅ぎ付けようと合鍵を用いて無断でVさんの家に侵入したり、勝手にVさんのメールにアクセスするなどしました。
Vさんからの被害届を受理した文京区を管轄する富坂警察署の警察官は、Aさんを住居侵入罪で逮捕し、その後、不正アクセス禁止法違反でも逮捕しました。
Aさんの事件は一審・控訴審と担当し、実刑判決は免れませんでしたが、一審判決時は未決勾留期間40日が、控訴審判決では未決勾留期間30日が、それぞれ算入されました。
≪守秘義務・個人情報保護の観点から、事件地や一部事件内容を変更しています。≫
【住居侵入罪・不正アクセス禁止法違反】
御案内のとおり、他人の家や敷地に正当な理由なく侵入する行為は、住居侵入の罪にあたります。
(住居侵入)
刑法130条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
次に、Aさんが行ったVさんのメールに無断でアクセスする行為は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(通称:不正アクセス禁止法)に違反します。
(不正アクセス行為の禁止)
同法3条 何人も、不正アクセス行為をしてはならない。
同法11条 第3条の規定に違反した者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
一般論で言うと、関係性が近い人同士でパソコンなどをシェアしたことがある、あるいはスマホを一時的に貸したことがある場合等、一度アクセスしたことがある電子端末ではパスワード等が保存されている場合があります。
このように、違法なウイルスや専門知識を使ったわけではなく、勝手にログインできたなどという場合であっても、無断でログインをする行為は不正アクセス禁止法のいう「不正アクセス」に該当し、処罰対象となります。
【未決勾留期間】
≪刑事事件の手続きについて、詳細はコチラを併せてご確認ください。≫
罪を犯したと疑われる被疑者・被告人は、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合には裁判で判決を受ける前であっても勾留されることがあります。
この期間を、裁判での判決は未だだが勾留する期間として、未決勾留期間と呼びます。
このうち、起訴されてから判決を受けるまでの期間の勾留期間については、刑期に算入される場合があります。
起訴された被告人にとって、保釈により在宅で裁判を受けることが望ましいと言えます。
しかし、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合、なかなか保釈が認められません。
起訴後も長期間身柄拘束された被告人が、裁判で実刑判決を受けた場合、どれだけの期間が刑に算入されるか、という点は極めて重要と言えます。
また、控訴審での未決勾留期間についても、刑に算入される場合があります。
一審で実刑を言い渡され、控訴審でも覆る見込みが薄い場合は控訴しない方が短期間で刑期を終えられるという見方もあります。
しかし、勾留中は刑務作業が科せられませんが、懲役刑の場合は刑務作業が必須となるため、未決勾留期間の算入により被告人(のちの受刑者)にとっての負担が軽くなるという側面があります。
東京都文京区にて、住居侵入罪や不正アクセス禁止法違反で家族が逮捕され、未決勾留期間について知りたいという方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御連絡ください。
新宿区の電動キックボードで人身事故,逮捕される?
新宿区の電動キックボードで人身事故,逮捕される?
電動キックボードで人身事故を起こした場合の問題点について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説します。
事例
新宿区内の会社に勤めているYさん(20歳代・男性)は,最近通勤のために電動キックボードを使い始めました。
ある日の通勤途中,Yさんは電動キックボードを運転していた際,スマートフォンの通知が鳴ったので脇見をしたところ,歩行者と接触して相手を転倒させてしまいました。
怖くなったYさんはその場から逃げてしまいましたが,しばらくたって自分が逮捕されるのではないかと不安になってきました。
≪事例は全てフィクションです。≫
・電動キックボードは「車両」になる?
2022年3月4日の報道によると,道路交通法の改正案が閣議決定されたということです。
まだ正式に国会で決まったわけではありませんが,閣議決定された内容によると,電動キックボードについては「特定小型原動機付自転車」と呼ばれることになり,扱いとしては「速度制限のある自転車」といった形になりそうです。
現在の道路交通法では,(電動)自転車も原動機付自転車(一般的に,原付バイクと呼ばれているもの)も,「車両」として扱われて様々な規制を受けてますから,今後電動キックボードについても道路交通法に従った運転が求められます。
・電動キックボードでの事故はどうなる?
Yさんの事例のように,電動キックボードでの人身事故は,今後どんな犯罪になるのでしょうか。
・・過失運転致傷罪になる?
一つ考えられるのは,過失運転致傷罪になる可能性があります。
現在,自動車やバイクの人身事故については,「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」によって犯罪になります。この法律では,「運転上必要な注意を怠り,人を死傷させた」場合,つまり過失(:わきみ,よそ見,居眠りと言った不注意)によって人身事故を起こした場合には,この法律によって処罰されることになります。
単純な過失運転致傷罪であれば7年以下の懲役又は禁錮若しくは100万円以下の罰金が科せられることになります。
今後,法改正によって,電動キックボードについても,自動車や(原付)バイクと同じように扱うべきだということになれば,同じように人身事故について過失運転致傷罪が適用されることになる可能性があります。
この点については今後の法改正次第になります。
・・過失致傷罪になる可能性大!
法改正があるまでは,(重)過失致傷罪として扱われることになるでしょう。
過失致傷罪の場合には50万円の罰金,より重大な不注意の場合には5年以下の懲役又は禁錮若しくは100万円以下の罰金が科せられます。
現在の法律でも,自転車の運転中に起きた人身事故については過失致傷罪や重過失致傷罪として扱われています。電動キックボードでの人身事故についても,当面は自転車と同じように扱われるでしょう。
・・ひき逃げになることもある
現時点ではまだ,電動キックボードは「車両等」という扱いはされていませんが,改正された道路交通法の内容によっては,「特定小型原動機付自転車」も「車両等」に含まれることになる可能性があります。
「車両等」に含まれると,電動キックボードの運転中に事故を起こしてしまった場合には,自動車やバイクの事故と同様に,報告義務や救護義務が課せられます。
人身事故であれ物損事故であれ,事故を起こしてしまった場合には最寄りの警察官へ通報する義務がありますし,警察官が現場に到着するまではその場で待っていなければいけません。事故によって怪我をした人がいる場合には,救護をしなければなりません。
これらの報告義務や救護義務を怠ってその場から立ち去ってしまうと,「ひき逃げ」や「当て逃げ」として扱われることになります。
・電動キックボードのひき逃げ事故で逮捕される?
法整備がなされて,電動キックボードが自動車やバイクと同様の車両として扱われるようになると,今後ひき逃げ事故として扱われる事例も出てくるでしょう。
ひき逃げ事件に対しては,「実際に事故の現場から逃げている」という事情から,逮捕されやすい事件です。ひき逃げが成立するのは,①事故を起こしてしまったかもしれないという認識がありながら,②果たすべき義務を果たさなかった,という場合です。
特に①事故を起こした,という認識があったかどうかという点は,実際に裁判でも問題になることが多い論点です。電動キックボードは自動車と比べれば外装がない分,「事故を起こしたかどうか分からない」という事案は少ないようにも思われますが,今後裁判でも争点になるかもしれません。
ひき逃げ事件を起こしてしまったという場合には早急に刑事事件に強い弁護士に相談の上で適切な対応を取りましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所では,車やバイクでの人身事故は勿論のこと,自転車や電動キックボードなどで人身事故を起こした場合についても無料相談を受けることができます。
東京都新宿区にて,電動キックボードで人身事故を起こしてしまった場合,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御相談ください。
電子計算機損壊等業務妨害で逮捕
電子計算機損壊等業務妨害で逮捕
電子計算機損壊等業務妨害で逮捕された事例を題材に、刑事裁判について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説いたします。
事例
東京都中央区在住のAは、中央区内の会社に勤める会社員です。
Aは会社の上司からパワハラ行為を受けたことから、上司に嫌がらせをしようと企み、会社内に設置されたAが使用するPC(パーソナルコンピューター)に保存されていたデータを無断で削除することにより、会社の業務を妨害しました。
データが削除されていることに気付いたAは上層部と相談し、東京都中央区を管轄する警視庁中央警察署の警察官に相談し被害届を提出しました。
後日、Aは電子計算機損壊等業務妨害の疑いで逮捕されました。
Aの家族は、刑事事件に強いと評判の弁護士に相談することにしました(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。
~業務妨害の諸類型~
第35章 信用及び業務に対する罪
(信用毀損及び業務妨害)
第233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害)
第234条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
(電子計算機損壊等業務妨害)
第234条の2 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し……電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
刑法では、上記のように様々な種類の業務妨害が規定されています。
233条では偽計等による業務妨害が、234条では威力を用いた業務妨害が規定されています。
234条の2は、コンピューターなどの電子機器の普及に伴い、前2条では対応しきれなくなった態様の業務妨害を処罰するために定められた犯罪です。
上述のとおりコンピューター等がもはや業務における必需品となった現代では、このようなタイプの業務妨害は広範な範囲に被害を生じさせる危険性を有しています。
したがって、前2条の業務妨害よりも法定刑(「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」)が重くなっているのです。
なお、データの削除については、削除の対象が公用文書か私用文書であるかに応じて、電磁的記録毀棄罪(258条・259条)が成立しうる点にも注意が必要です。
~刑事裁判の流れ~
犯罪の疑いをかけられた者は、捜査機関による捜査を経て、検察官による公訴提起(起訴)によって、(略式手続等を利用しない限り)刑事裁判を受けることになります。
ここでは、通常の刑事裁判の流れを紹介いたします。
裁判はまず「冒頭手続」と呼ばれるものから始まります。
ここで、被告人が人違いでないかなどを確認した上で、起訴状が朗読され、いわゆる罪状認否といった最初の意見陳述の機会が与えられることになります。
次に行われるのが、刑事裁判のメインとも言える「証拠調べ」手続です。
ここでは、検察官側と弁護人側の証拠調べ請求に基づき、物証や人証の取調べ等が行われることになります。
裁判と聞いて、まず想起しがちな証人尋問もこの手続内で行われるものです。
そして、論告・弁論(論告求刑・最終弁論などとも呼ばれます)を経て、判決に至ることになります。
このように、(正式)裁判を受けるとなると、一定の時間がかかり裁判を受ける被告人の精神的負担も少なくありません。
したがって、このような裁判を回避するため、不起訴を獲得するための(起訴前)弁護活動も重要になってくるといえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は、電子計算機損壊等業務妨害罪などのいわゆるサイバー犯罪も含む刑事事件を専門的に取り扱っている法律事務所です。
刑事事件に関する専門知識を有する弁護士が、ご相談をうけたまわります。
電子計算機損壊等業務妨害事件で逮捕された方のご家族・ご知人は、年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)までまずはお問い合わせください。
晒し行為で名誉毀損に
晒し行為で名誉毀損に
いわゆる晒しと呼ばれる行為で問題となる名誉毀損などの罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都板橋区在住のAは、板橋区内の会社に勤める会社員です。
Aは近隣住民である自営業のVと騒音トラブルを起こして不仲に陥り、AはVを貶めるため、SNS上で誰もが見られる公開のアカウントを開設し、「○○の会社を運営しているVは性犯罪での前科があり、服役した経験がある」と投稿しました。
数ヶ月後、Aの自宅に板橋区内を管轄する高島平警察署の警察官が来て、SNS上の投稿について聞きたいことがあるとして任意同行を求められました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【いわゆる晒し行為】
インターネット・スマートフォンの普及に伴い、インターネットのブログやSNSなど用いて、一般人であっても全国・全世界に情報を発信することが容易な時代になりました。
そこで、しばし自分が気に入らない人や倫理的・法的に問題のある行為などについて実名や顔写真、何かしらの行為を撮影した動画や画像などを不特定多数の者に発信する「晒し行為」などと呼ばれる私刑が横行しています。
晒し行為は、どのような罪に当たるのでしょうか。
・名誉毀損罪
晒し行為により他人の名誉を傷つける言葉を流布したり画像や動画をアップロードした場合には、名誉毀損罪が適用されます。
条文は以下のとおりです。
刑法230条1項 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
第一に、公然性について、そもそも、明治40年公布の刑法では、インターネットなどの存在は想定しておらず、専ら印刷物で情報を広めることを想定していたと考えられます。
しかし、現代では先述のとおりインターネットを通じて個人が情報を容易に発信することができるようになったため、これらも公然性が認められる場合が当然にあると考えられます。
例えば、誰しもがアクセスできるような形でアップロードしたブログやSNSなどであれば、公然性があると認められます。
他方で、現在我が国に於て広く普及しているブログやSNSの場合、特定の者にしか見られないように設定することもできるため、アップロードの方法次第で公然性が認められる事案なのかどうか、区別されます。
第二に、事実を摘示するという点について、これは条文に記載のとおり「事実の有無」を問うていません。
前科があるということを積極的に発信することは、被害者の名誉を毀損する内容の「事実」を公然と摘示したと言えますので、Aが発信した情報が「真実」であってもなくても、名誉毀損罪が成立します。
・偽計業務妨害罪
名誉毀損罪はAがV個人の名誉を害することについて適用されますが、それに加え、AはVが個人事業主として仕事をしている会社の屋号を公表しています。
これにより、Vの事業が妨害をされる恐れがあることから、偽計業務妨害罪の適用が検討されます。
条文は以下のとおりです。
刑法233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
「前科があるが更生に向けて取り組んでいる」等の事情であればともかく、単に「前科がある」という内容が世間に出回った場合、消費者はその会社から商品を購入したくないという心情に陥ったり、取引先等がその会社を敬遠する恐れがあります。
このように、嘘の情報を用いて業務を妨害する行為は、偽計業務妨害罪として処罰されます。
これは、結果的に売り上げが落ちた、などの具体的な妨害の事実は必要とせず、ケースのような表現それだけで偽計業務妨害罪は成立します。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
当事務所は、名誉毀損罪や偽計業務妨害罪といったSNSなどの情報がもととなって生じた刑事事件に対応しています。
東京都板橋区にて、いわゆる晒し行為により名誉毀損罪や偽計業務妨害罪で捜査を受けている方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御相談ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料で相談を受けることができます。
食い逃げで刑事事件?民事事件?
食い逃げで刑事事件?民事事件?
食い逃げをした場合に問題となる罪と、刑事事件・民事事件の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都江東区在住のAは、江東区内の会社に勤める会社員です。
ある日、Aは酒を飲んで酔っ払った状態で飲食店に行き、食事をしました。
しかし、Aには支払う金がなかったため、店員がホールに居なくなったところを見計らって席を離れました。
しかし、店員はすぐに気が付き店の近くでAを発見して料金を支払うよう告げたところ、Aが「金を持っていない」と言ったため、江東区を管轄する城東警察署に通報しました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【食い逃げで問題となる罪】
食い逃げというと、まず窃盗罪を思い浮かべる方がいるかもしれません。
しかし、窃盗罪は所有者の意に反して物を持ち去る行為を意味します。
食い逃げの場合は店員が食事を提供しているため、窃盗罪には当たりません。
食い逃げで成立する可能性がある罪としては、詐欺罪が挙げられます。
詐欺罪は、
⑴Aが店員を欺罔し(騙し)
⑵店員が錯誤に陥り(騙され)
⑶店員がAに料理を提供/店員がAに代金請求を行わない
⑷一連の行為に因果関係が認められる
場合に、成立します。
問題は、⑴が認められるかどうか、という点です。
先ず、料理の注文をする時点でAが自分に所持金がないことを把握していた場合を想定します。
Aに所持金がない場合、店員は当然、料理を提供しません。
よってAが食事を注文した場合、店員はAに所持金があるから注文をしていると誤認して、料理を提供します。
この場合、Aの注文という欺罔行為により⑴、店員は錯誤に陥り⑵食事を提供していて⑶、⑴~⑶に因果関係が認められるため⑷、詐欺罪が成立します。
次に、所持金がないことに気付かずに注文した場合について検討します。
Aは酒に酔っていたという状況から、その前に別の店で飲食をして所持金を使い果たしたところ、酒に酔っていてそれを忘れていたという可能性が考えられます。
所持金がないことに気付かず食事を注文した場合、Aの店員に対する欺罔行為⑴が存在しないため、たとえ店員が食事を提供したとしても詐欺罪は成立しません。
但し、逃走する際に「電話に出てきます。」「タバコを吸ってきます。」などと店員に嘘をついて店を出た場合、それ自体が欺罔行為になり⑴、店員がそれを信じてしまい⑵、代金の支払い請求を行わなかった⑶、ということになり、2項詐欺と呼ばれる財産上の利益を得るかたちでの詐欺罪が成立します。
【刑事事件と民事事件】
上記では、食い逃げが刑事事件に当たるかどうかについて解説致しました。
刑事事件は、刑法などの各種法律に規定されている条文に違反した場合に、捜査機関(警察官、検察官など)による捜査を受けたうえで、刑事裁判を受けて刑事罰を科せられる等の手続きが進められていきます。
裁判になった場合、被告人は死刑・懲役刑・禁錮刑・罰金刑・拘留・科料及びそれに付随する没取といった刑事罰が言い渡されます。
刑事罰のひとつである罰金刑や科料は財産刑ですが、そのお金は被害者等に渡るわけではなく、国庫に帰属します。
前述のとおり、食い逃げは必ず刑事事件(詐欺罪)になるわけではありません。
また、仮にAが刑事事件に発展して刑事罰を受けたとしても、飲食店側には何らメリットがなく、飲食代金が支払われないだけでなく捜査協力により時間を要するなどの負担が増すばかりです。
飲食店側がAに代金や時間・精神的な負担について賠償を求める場合、飲食店側が代金支払請求や損害賠償請求といったかたちで、当事者間(ケースの場合は飲食店とA)の紛争・解決に発展させる必要があります。
これが民事事件です。
刑事事件と民事事件は要件や手続きが異なるため、刑事事件には発展しないが民事事件に発展する、あるいはその逆ということもあり得ます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部は刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
東京都江東区にて、食い逃げ事件を起こしてしまい、刑事事件に発展する可能性があるという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御相談ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料で相談を受けることができます。
壁への落書きで少年が逮捕される?
壁への落書きで少年が逮捕される?
壁に落書きした場合に問題となる罪と、少年が逮捕される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都板橋区在住のAは、板橋区内の会社に勤める19歳の会社員です。
Aは友人と一緒に夜遊びをしていた際、友人から落書きをしないかと言われました。
最初Aは躊躇していましたが、友人から「他の人もやっていて周りには落書きだらけじゃないか」「スプレーは、専用の溶剤で落とせば綺麗に消えるし、壊すわけじゃないんだから」と言われて納得してしまい、閉店後の商店のシャッターや他人の家の塀、公衆トイレの壁、道路のガードレール、他人の車にスプレーで落書きをしました。
ある日、Aやその友人が落書きをしていたところ、板橋区を管轄する志村警察署の警察官がパトロールをしていて落書き行為を現認し、Aらは逮捕されました。
≪ケースは全てフィクションです。≫
【スプレーでの落書きは刑事事件に】
高架下やガードレール、商店などのシャッターなど、街中の様々な場所で文字やイラストを見かけることがあるでしょう。
そのほとんどが、所有者や管理者の許可なくスプレーなどで行われた落書きであり、刑事事件や民事事件に発展する行為です。
スプレーで行う落書きの刑事事件の側面について、落書きの対象が建物や壁なのか、それ以外の物なのかによって該当する罪が異なります。
まず、建造物を損壊した場合に成立する建造物損壊罪について、罰条は「5年以下の懲役」のみ定められていて、後述する器物損壊罪と比較すると極めて重い刑罰と言えます。
建造物損壊罪は、建造物を損壊した場合にのみ成立します。
他人の家の壁や公衆トイレなどの壁などは建造物に当たりますが、商店のシャッターや住居の塀については、「当該物と建造物との接合の程度のほか,当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮」して判断されます。
該当するシャッターや壁が、簡単に取り外しできないようなものであり、建造物にとって重要な機能を果たしていると評価された場合には、建造物に当たると評価されます。
次に、ガードレールや他人の車など、建造物(及び文書等毀損罪を除く)に行った落書きの場合には、器物損壊罪が適用されます。
器物損壊罪は、刑法261条に違反し、「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」に処されます。
Aは友人から「スプレーは、専用の溶剤で落とせば綺麗に消えるし、壊すわけじゃないんだから」と言われています。
これについて、損壊とは単純に物を破壊したり形を変えたりする場合だけでなく、物の「効用を害する」場合に成立します。
商店のシャッターや自宅の塀に落書きをされた被害者は、恥ずかしい思いをしてすぐに消したいと思うことでしょう。
例えば、水をかければすぐに落ちるような成分のスプレーであれば、損壊にはあたらないと評価される余地があります。
しかし、「専用の溶剤で落とせば綺麗に消える」スプレーで行った落書きであれば、すぐに消すことができないという性質を踏まえ、「損壊」したと評価されます。
なお、我が国でも数年前に海外の有名な画家によるストリートアートと呼ばれるものが話題となりました。
これについては、その建物や物の所有者の捉え方次第と言えます。
所有者が「損壊」を受けたと感じた場合、建造物損壊罪は非親告罪ですので被害届を、器物損壊罪は親告罪ですので刑事告訴をすることで捜査機関による捜査が開始され、被疑者が特定された場合には刑事罰が科せられることがある、という流れになります。
※落書きの内容によって特定の相手を侮辱した場合や名誉を棄損した場合については、建造物損壊罪や器物損壊罪だけでなく、侮辱罪や名誉棄損罪などの罪にもあたります。
(建造物等損壊罪)
刑法260条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
(器物損壊罪)
刑法261条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
【少年も逮捕される?】
≪次回のブログに続きます。≫
東京都板橋区にて、お子さんが商店のシャッターや公衆トイレの壁、他人の家の塀、道路のガードレール、他人の車などに落書きをして逮捕されてしまった場合、刑事事件・少年事件のみを取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部に御相談ください。
学割適用のために学生証を偽造
学割適用のために学生証を偽造
学生証を紛失してしまい、学生証を偽造してしまった場合の罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都千代田区神田在住のAは、都内の私立大学に通う大学生(20歳)です。
ある日、Aは千代田区内にある飲食店の前を通りかかったところ、学生割引があることに気づきました。
そのコースを適用するためには学生証の提示が必要になるのですが、Aは学生証を携帯していませんでした。
そこで、一緒に歩いていた友人Xから学生証を借りてカラーコピーし、それを飲食店の会員カードに貼りつけし、学生証を持っているかのように見せて学割を適用しようとしました。
しかし、店員が偽造に気づいて警察署に連絡し、臨場した千代田区神田を管轄する神田警察署の警察官によって任意同行を求められました。
≪ケースはすべてフィクションです。≫
【文書偽造はどのような罪に?】
紙の書類はもちろんのこと、免許証やパスポートなどのカードの形態をしたものについても、文書偽造の罪の対象になります。
具体的にどのような罪に当たるのかについては、偽造した書類が公的なものかそれ以外か、印を押されているかいないかが問題となります。
①有印公文書偽造罪
身分証明書のうち、運転免許証やパスポート、健康保険証などの公的機関が作成するものなかで公務員が署名や押印をする必要があるものを偽造した場合、有印公文書偽造罪にあたります。
有印公文書偽造罪の客体(対象)となる書類や身分証明書は、その性質上保護すべき度合いが極めて高いことからも、法定刑は文書偽造の罪の中で最も厳しいものとなっています。
この罪で起訴された場合、罰金刑が用意されていないことから略式手続をとることはできず、正式な裁判になります。
刑法155条1項 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
②(無印)公文書偽造罪
公文書のうち押印がないものについては、この罪にあたります。
物品税表示証紙がこれにあたるとされています(最決昭35・3・10)。
刑法155条3項 …公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造…した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
③有印私文書偽造罪
公的機関以外が作成する身分証明書などの書類のうち、署名や捺印を必要とするものを偽造した場合、有印私文書偽造罪が適用される可能性があります。
例えば、Aが大学や会社の在籍を証明する身分証明書を作成した場合には、この罪に当たる可能性があります。
刑法159条1項 行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
④(無印)私文書偽造罪
公的機関以外が作成する身分証明書などの書類のうち、署名や捺印を必要としていない物についてはこの罪が成立します。
刑法159条3項 前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
ケースについて検討すると、Aは私立大学の学生証を偽造しています。
私立大学の作成した学生証は私文書にあたり、多くは学校長の印を押されていることから、Aは有印私文書偽造の罪に当たる可能性が高いです。
なお、国立大学の場合、公文書管理法の適用対象となる機関にあたるため、国立大学の学生証を偽造した場合には有印公文書偽造罪が適用されます。
Aのように、実際には証明証を持っているにもかかわらず忘れてしまったため偽造した、という場合でも、文書偽造罪は適用されます。
【行使によりさらに厳しい罪が成立することも】
仮に自分で偽造していないとしても、偽造した文書を譲り受ける等して利用した場合には偽造私文書行使等の罪が適用されます。
また、学生ではないにもかかわらず学割を適用させるために偽造した学生証を使った場合には、詐欺罪(いわゆる2項詐欺)にあたることもあります。
東京都千代田区にて、学生証などの偽造により有印私文書偽造などの罪で捜査対象になっている方がおられましたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部にご相談ください。
在宅事件の場合、事務所にて無料でご相談を受けることができます。
偽計業務妨害罪~被害を受けた会社との示談交渉
偽計業務妨害罪~被害を受けた会社との示談交渉
いたずら・嫌がらせ目的で予約をして無断キャンセルする場合に成立する偽計業務妨害罪などの罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部が解説致します。
【ケース】
東京都大田区蒲田在住のAは、大田区内の会社に勤める会社員です。
ある日、Aは大田区内の飲食店で酒を飲んで酔っ払ってしまい、大田区内の路上で泥酔していました。
Aの友人は、Aの家まで帰るには時間がかかることから、大田区内にあるホテルを探してそこに一泊させようと考えました。
しかし、ホテルの従業員Xは、Aの様子を見て泥酔していることを確認したうえで、トラブルになると考え、Aの宿泊を拒否しました。
怒りを覚えたAは、翌日以降、毎日のように電話とホテルのホームページにある予約フォームから架空の名前で予約を入れ、宿泊することを装い実際には宿泊しないという行為を繰り返していました。
被害店舗の責任者は大田区を管轄する大田警察署の警察官に相談をしたうえで被害届を提出し、捜査官は捜査の結果Aによる犯行であるとしてAを偽計業務妨害罪で逮捕しました。
≪ケースはすべてフィクションです。≫
【予約の無断キャンセルについて】
ケースのAが行ったいたずら、嫌がらせ目的で予約を取ったうえ、無断でキャンセルするという行為は、偽計業務妨害罪にあたります。
偽計業務妨害罪の条文は以下のとおりです。
刑法233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
まず、偽計業務妨害罪に当たる行為には「偽計」が用いられるという要件があります。
偽計業務妨害罪のいう「偽計」とは、「人を欺き、あるいは、人の錯誤・淵を利用したり、人を誘惑したりするほか、計略や策略を講じる等、威力以外の不正な手段を用いる」こととされています。
偽計を用いる方法について、過去の判例を見ると、(昭和の事件ではありますが)弁当屋の商品が不衛生だなどと鉄道事業課長に郵送したり、バスの乗客に対して「このバスの運転手は癇癪を起すから用心するように」と叫ぶような事件のほか、電話料金の支払いを免れるための装置を設置したり、電力メーターの機械を弄って使用量を少なく見せるなどした物理的な犯行もあります。
また、今日ではインターネットの普及に伴い、ブログやSNSなどに偽りの情報を記載・掲載した場合にも、この罪が成立します。
ケースのような場合には、宿泊する目的がないにもかかわらず予約のための電話やホームページの予約フォームからの予約を行っているため、偽計があったと考えられます。
次に、偽計業務妨害罪では「業務を妨害した」ことが必要です。
これは、実際に業務遂行が妨害されることは必要ではありません。
今回想定しているケースについて考えると、Aが宿泊の意図がないにも関わらず予約を申し出たとこで、被害に遭ったホテル側は応対に時間を要しただけでなく、その後に本当に宿泊したいと考えている方が予約を取ろうと思い連絡した場合にはAが入れた噓の予約があるために断らざるを得なかった、という事態が想定されます。
実際にそのような客がいたか否かは問わず、Aが予約をした時点で業務を妨害したと評価され、偽計業務妨害罪が成立すると考えられます。
【会社相手の示談交渉】
ケースの事件についてはホテルという会社が相手の事件になります。
被害者がいる事件である以上、示談交渉は重要な弁護活動のひとつになりますが、通常、ホテルなどの会社は弁護士と顧問契約を結んでいて、弁護士を介しての示談交渉ということになると考えられます。
しかし、Aのように逮捕・勾留されている場合にはそもそも本人が示談交渉することができないうえ、示談交渉ができたとしても、会社側は実際の事件より多い回数、あるいは高額な損害を主張してくる場合が考えられるため、一般の方の交渉は容易ではありません。
特に会社のように顧問弁護士が間に入る可能性が高い事件での示談交渉の場合、弁護士を通じて示談交渉を行い、事実や被害金額などについてしっかりと確認をとったうえで、示談金額などの交渉を行うことが望ましいでしょう。
東京都大田区にて、ご家族がホテルに対していたずら・嫌がらせ目的で予約を繰り返し行ったために偽計業務妨害罪で逮捕されてしまい、示談交渉などの弁護活動をお求めの方がおられましたら、刑事事件・少年事件のみを行う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所東京支部・八王子支部にご連絡ください。
則竹弁護士が取材を受けコメントが東京新聞に掲載されました
則竹弁護士が取材を受けコメントが東京新聞に掲載されました
密漁について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の代表弁護士則竹理宇が取材を受け、コメントが7月15日発行の東京新聞に掲載されました。
潮干狩り感覚の密漁で摘発されるケースが多発
これからの季節、海でのレジャーに出かける方も多いかと思いますが、海に生息する魚介類をむやみに採って持ち帰ると「密漁」となり、漁業法や、各都道府県が定める漁業調整規則に違反する可能性があるので注意が必要です。
中には、潮干狩り感覚で罪の意識がないままに禁止場所で貝類を採ってしまい、密漁として摘発を受けている方もいるようなので十分にお気をつけください。
また実際に各地でこういった事件の摘発が多発しており、海上保安庁等に検挙されると、管轄の検察庁に書類送検されて、刑事罰が科せられる可能性もあります
新聞記事には、こういった「密漁」に関して、漁業協同組合への取材内容や、専門家の意見を掲載し注意を呼び掛けています。
則竹弁護士のコメント
こういった密漁事件に巻き込まれないためにどうすればいいのかについて、則竹弁護士は「管轄の漁協に確認を取ってもらうのが確実だが、それが難しければ、人がいない場所では特に採取や立ち入りを禁止した看板などがないかチェックする。潮干狩り場以外では採ることを避けるのが賢明だ。」とコメントしています。
東京新聞(7月15日発行)の記事
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